合鍵

夜遅くに帰宅した

家の者は寝静まっている

合鍵を取りだし鍵穴へ

うん?

鍵が開かない

閑静な住宅街

似たような一戸建てが並んでいる

家を間違えたのか

俺は自宅を確認した

確かに俺の家だ

暫く留守にしていた間に

妻が鍵を変えたと言うのか

いやそんな筈はない

俺に断りもなしに

妻がそんな事をするわけがない

俺はもう一度鍵を確認しようと

ポケットに手を入れた

無い

今確かに入れたはずの鍵が無い

慌てて街灯の光を頼りに足元を探すが

玄関ポーチに鍵は見当たらない

妻に電話して

ドアを開けてもらうしかない

俺は仕方なく携帯電話を探した

だが携帯が入っているはずの

カバンを持っていない事に気付く

こうなったら

ドアを叩いて妻を起こすしかない

俺はドアに向かい右手を振り上げた

スコッ

なんと俺の手は

ドアをすり抜けていた

そして勢い余って

俺の体も家の中へ

そうだった

鍵なんか開ける必要はなかった

俺って三年前に死んでたんだ

だから鍵もカバンも持ってないんだ

カバン落としたかと思って

ドキッとしたぜ

あー良かった

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