一葉の命

冬枯れの木立に

一枚の枯れ葉が

北風に飛ばされまいと

頑張っている

病室の窓から

僕はそれを眺めている

あの枯れ葉が飛ばされれば

僕の命も終わる

そんな事を考えながら

入院生活を送っていた

朝起きて

看護師のお姉さんに

カーテンを開けてもらう時

飛ばされずに残っている枯れ葉を見て

僕は小さく息をつく

もしかしたら

今日も一日生きられるかも知れない

そんなある日

まだ頑張っている枯れ葉の

すぐそばの枝に

見覚えのあるミサンガが

引っかかっているのを見つけた

数日前にお見舞いにやって来た

お父さんのおでこに

貼られていた絆創膏の事を思い出して

あの枯れ葉が

北風に飛ばされない訳を理解した

枯れ葉ばかり見ている僕を見て

お父さんも

僕の想いに気付いたのだろう

よく見ると枯れ葉の根本に

細い針金が少しだけ見えている

運動オンチのお父さんが

木登りをしている姿を想像して

僕は微笑んだ

そして

頑なに拒み続けてきた手術を

受けてみようと思った

その事を告げたら

お母さんは涙を流して喜んでくれた

手術が成功すれば

お父さんとお母さんと

妹のまゆと

そして犬のマックとも

もっと長い時間

一緒にいられるかも知れない

僕も北風に耐えている

あの枯れ葉のように

頑張ってみよう

あの針金が僕にとっての手術なら

それを受け入れてみよう

元気になって

クラスのみんなにも

千羽鶴のお礼を伝えたいから

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