連続殺人

当時刑事だった俺は

ある男を殺人容疑で逮捕した

猟奇殺人と言う言葉が

新聞の一面を飾った

その男が犯人だと俺は確信していた

だが男は証拠不十分で釈放された

強引な逮捕だったと批判を受け

俺は刑事を辞めた

それから数ヵ月の間に三件

その男の家の近くで

同様の事件が起きた

俺は刑事を辞めた後も

時間が許す限りその男を見張り続けた

だが男は用心深く

なかなか尻尾を出さなかった

三つの事件のすべてで

男は重要参考人として取り調べを受けた

だが最初の事件と同様

決定的な証拠がなく男は釈放された

世捨て人となった俺は

酒に溺れ荒んだ暮らしを続けた

その間にも連続殺人は続いていた

状況証拠ははっきり

男を犯人と告げていた

だが男を起訴する有力な証拠はなかった

これ以上犠牲者を出してはならない

そして

八件目の殺人が起きた

だがこの事件だけは

今までと違っていた

用心深い男が

いくつもの遺留品を残していた

そしてついに男は有罪になった

これでもう犠牲者が出る事はない

町に平和が戻ったのだ

あれだけ用心深かった男が

なぜたくさんの証拠を残したのか

それは

俺が仕組んだ事件だったから

俺は男のアパートに忍び込み

男の毛髪や所持品を手に入れた

俺は生まれて初めて犯罪を犯した

家宅侵入と窃盗

そして殺人

俺は最後の犠牲者となる女性を選んだ

凶器も男の部屋から持ち出した

男の指紋が付着した包丁を使った

男の犯行を止めるためには

この方法しかなかった

そして

連続殺人は終わった・・・

かに思われた

数ヶ月後

同様の事件は起きた

しかも立て続けに

男は犯人ではなかった?

いや

七件目までは間違いなく男が犯人

そして

八件目が俺

では

九件目以降の犯人は

やはり俺

あの男の気持ちを理解してしまった

すまない

誰か俺を止めてくれ











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?