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ショートの小部屋

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2017年5月の記事一覧

幽体離脱

人類は自由に

幽体離脱出来るようになった

そして

金持ちは若く健康な

体を手に入れ

貧乏人は自分の体を手放し

年老いた体で

生きることを強いられた

俺なんかもう最悪

俺の体の中に

俺以外に二人も入ってる

うるさくて仕方ないから

いいかげん出てけよって言ってるけど

こいつら帰る体が無いから

どうしようもない

仕方がないから俺が出て行くか

そうだ!

あの人の体にお邪魔

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新政府

誰がこの国を治めても

国民の暮らしは少しも良くならない

それで新しい政府が出来た

動物たちの

動物たちによる

動物たちのための政治

総理大臣

いぬ

決して嘘をつかない

官房長官

ねこ

みんなの心を癒す

外務大臣

くま

近隣諸国からなめられない

文部大臣

いるか

頭良さそう

そして

人間も動物の仲間だと認めよう

そんな

動物たちの寛大な計らいで新設された

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生き返りの薬

生き返りの薬が発売された

値段も安く

効き目は抜群

しかもこの薬

病気で死ぬ直前にこれを飲めば

生き返った時には

その病気も直っている

こんないい薬はない

飛ぶように売れた

だがしばらくして

新しい薬が発売された

そしてそれもまた飛ぶように売れた

それは

この薬が効かなくなる薬

慎重派

私はとても慎重派

結論を出すのにとても時間がかかる

でも頭の回転が鈍いわけではない

様々な角度から物事を見極め

結論を導きだす

だから

私が出した結論はどんな時も正しい

そして今、私はついに

一つの結論を出した

実に30年の熟慮の末の結論だ

やっぱり私立の小学校に入ろう

お化け屋敷

ここは田舎町の遊園地

これといって最新のアトラクションなどは無いが

そこそこ賑わっている

その中で一番人気なのがお化け屋敷

特殊メイクを施したリアルなお化けたちが

様々な演出で客たちを驚かす

私もお墓のセットの陰で客がやって来るのを待っている

きゃあきゃあ言いながら女の子のグループがやって来た

そして女の子たちは私を見て言った

「このお化け怖くなーい」

これはいつものこと

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取り引き

悪魔は僕に言った

死後に魂を渡すなら

どんな望みでも叶えよう

僕は考えた

ずっと好きだった彼女と

結婚する事が出来れば

そして生きている間

ずっと一緒にいられれば

魂を売り渡したって構わない

悪魔は言った

死後の永遠に比べれば

生きている時間なんてほんの一瞬

僕は言った

一瞬でも輝くことが出来れば

悔いなどない

悪魔は言った

本当にいいのだな

ああ

僕は答えた

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妖怪ハンター

俺は足音をしのばせ

ゆっくりと奴の後ろへ回り込む

ここは人気のない真夜中の墓地

奴は俺に気付いていない

俺は息がかかるほど

奴の背中に近づいた

それでも奴は気付かない

振り向いた時が

奴の命の終わる時

奴の首筋に手を伸ばそうとしたその時

金属の冷たい感触が俺を捉えた

しまった!

奴は囮か

俺は両手を上げゆっくりと振り向いた

そこに立っていたのは

妖怪撃退銃を構えた

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道案内

どうぞ

こちらでございます

暗うございますので

お足元にご注意下さいませ

今宵は山奥の別荘へとご案内せよとの

領主さまの仰せでございます

弥平はお暇を頂いて

里へ帰っております

へい

あっしは又八と申します

以後お見知りおきを

こちらでございます

ご案内はここまでとなっております

こちらの提灯をどうぞ

そのまま真っ直ぐお進み下さい

すぐそこでございます

さあ

もっ

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見守る

君が飼っている子犬

とっても可愛いね

なんて名前なの?

晩御飯はそれだけ?

もっとたくさん食べなきゃ

元気出ないぞ

あっ

そのCD買ったの?

僕も欲しかったんだよ

君も好きだったんだ

電話が鳴ってる

誰から?

もしかして恋人?

その本は?

へー

小説、読むんだ

僕はあんまり読まない

シャンプー変えたの?

少し痩せた?

ゆっくりあったまって

最近物騒だから

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引きこもり

私は引きこもり

しかも引きこもり歴30年の大ベテラン

それは色んな所に引きこもったわ

最初は自分の部屋

これはしごく当たり前

次に引きこもったのがトイレ

これもまあ、有りがち

でも家族みんなが困ってたから止めたの

そして次に引きこもったのが冷蔵庫の中

私暑いのきらいだから涼しくて快適

それに食べ物や飲み物には困らない

でも急にドアを開けられるのがいやだった

洗濯機にも引きこ

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曲芸

私は曲芸士

演目はナイフ投げ

と言っても

私は的の役

投げるのは私の師匠

いつまでたっても

私には投げさせてくれなかった

最近は

師匠も年をとって

目は悪くなるし

狙いも定まらない

今日も練習中、師匠の投げたナイフが

私の頭に命中した

これじゃあ、やってられない

私が死んでるから良いようなものの

そろそろ引退しなさいと

言ってやりたい

私?

10年前に

そう

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無表情

私は感情を顔に出さない

人に何を言われても

うれしい事

いやな事

悲しい事

どんな時も

眉ひとつ動かさない

あなたは私の事を

冷酷な人間だと思うだろうか

だが、それは違う

私は生まれつき

顔がおしりに付いている

だから人前に顔は出せない

仕方がないので

本来、顔のあるべき部分に

マジックで

目と鼻と口を書いてもらった

だから

うれしい事を言われると

おしりの顔

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お化粧

私はお化粧に目覚めた女の子

お父さんとお母さんに内緒で

私は薄く紅を引く

どう?

私綺麗になった?

この前はお母さんに見つかって

「そんな人間みたいなことお止めなさい」って

叱られちゃった

私はイボイノシシだけど

女の子よ

お化粧に目覚めちゃ悪いかしら

俺って

自分で言うのもなんだけど

そうとうなイケメン

身長は190

スポーツ万能

しかも頭脳明晰



プロ野球とJリーグからオファーきてる

どちらにしようか

それともT大に入るか

でも

こんな俺にも心配事はある

俺、もしかしたら

切り取られるかも知れない

どゆこと?って

体の持ち主からね

切り取られるの

俺?

俺は人面瘤

だから

プロ野球かJリーグかT大か

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