マガジンのカバー画像

ショート・ショートの小太郎

100
お話の館が満杯になったので新しくマガジンを追加しました。
運営しているクリエイター

記事一覧

大好きなおかあさん 物語です

大好きなおかあさん 物語です

僕のおかあさんはとってもやさしい

だから僕はおかあさんが大好きだ

おとうさんは嫌い

いつもお酒を飲んで

おかあさんをいじめるから

おかあさんはよそのおじさんと

仲良くしただけなのに

おとうさんは怒って

おかあさんをいじめる

おとうさんがあんまりいじめるから

おかあさんは出て行っちゃった

僕は行かないでって言ったけど

おかあさんは聞いてくれなかった

いつもは僕の言うことを

もっとみる

憑く 物語です

わたしはどこへでも行ける

あなたがどこへ逃げても

わたしはあなたの目の前にいる

一人歩く夜道、あなたのすぐ後ろに

誰もいないエレベーターの鏡に

足音から逃れ、駆け込んだ部屋の奥に

高層階の窓の闇に

突然の停電の暗闇に

恐怖に震え、かぶった布団の中にも

わたしはどこへでも行ける

閉じていた目を開けば

わたしはあなたの目の前にいる

日課 ある殺人者の独り言

指紋は拭いた

アリバイは完璧

目撃者はいない

凶器は始末した

監視カメラのテープは抜いた

完全犯罪のための

確認作業

それが俺の日課

いけない!

殺すの忘れてた

採点 ある採点マニアの独り言

採点する事は大事な事だ

僕はいつも採点する

どんな些細な事でも

その出来事に点数を付ける

今日は課長が仕事のミスを

僕のせいにした

課長は自分のミスを僕にかぶせたんだ

これは点数がかなり高い

50点

それから意地悪な先輩が

仕事の出来ない僕を馬鹿にした

1点

すでに百点を越えた人もいるよ

いつも僕をいじめていた小学校の同級生

そんな僕をかばう事もせず

黙認していた先生

もっとみる

目玉 罪びとの独り言

一度その味をおぼえたら

逃れる事は出来ない

それを口に含んだ時の喜びは

何ものにもかえがたい

あふれ出す液体は

乾いた私の喉を潤し

芳醇なその味が

私の心を深く満たす

私はいつもその事ばかりを考え

夜を待ち続ける

そして夜が訪れると

私は風のように闇を駆け

獲物に忍び寄る

私の大好物

にわとり小屋から盗んだ卵で作る

半熟の目玉焼き

ああ、おまわりさんごめんなさい

陶芸家の恋 ある陶芸家の独り言

私は陶芸家

たくさんの愛好家に認められ

数多くの作品を生み出してきた

そんな私は戯れに

少女の姿をした焼き物を創った

一千度もの炎の中から

美をまとい産まれてきた彼女は

透き通るほど白い肌をしていた

そして私はその美しさに惹かれた

彼女に恋をしたのだ

それからの私は一日の大半を

彼女のそばで過ごした

そして私の彼女への想いは

日に日に強くなっていった

だが私は人間

もっとみる

スナイパーの恋 物語です

視界の隅に一瞬の光をみとめ

俺は引き金から指を離した

スコープを左に向け光源を捉える

そこに見たのは

俺と同じ組織のスナイパー

そして俺の嫌いな男

奴の銃口は確実に彼女を狙っている

俺がしくじった時のためか

それとも俺が彼女を殺せないと

組織は考えたのか

指定された時間を過ぎても

俺が引き金を引かなければ

奴が代わりに目的を果たすのだろう

俺も急いで銃を構える

スコープ

もっとみる

あるスナイパーの独り言

今日のミッションは簡単な仕事

よく狙って引き金を引くだけ

ターゲットは女

踊っている女の眉間に

鉛玉を撃ち込むだけ

組織を抜けた者には

死が与えられる

俺たちは子供の時に誘拐され

殺人者として育てられた

お前への想いを

知られる事は許されなかった

組織の掟が俺たちを隔てた

お前が組織を抜けた時

俺は動揺を禁じえなかった

心の奥を見透かされそうで

俺はより冷徹に仕事をこ

もっとみる

名もなき女の独り言

暫くぶりにここへ戻って来た

ここは私がほんの少しの間だけ

少女時代を過ごした場所

私はこの街で

ある組織に誘拐され

殺人マシーンとして育てられた

組織にとって邪魔な人間を

消してゆくのが私の仕事だった

そんな暮らしに嫌気がさし

私は姿を隠した

小さい頃から踊るのが好きだった

私は流れ着いた街で

踊り子として働き始めた

友だちもでき

その街にも慣れたのに

あの出来事が私

もっとみる

盗む ある時間泥棒の独り言

俺は泥棒

この世界から

時間を盗む

少しずつ少しずつ

誰にも気付かれないように

みんな時間が足りなくなって

あわただしく働いている

記憶を操作したから

みんな1日は24時間だと

思い込んでいる

昔は48時間だったの

覚えてないでしょ?

もっともっと盗むよ

最終的には1日を1時間に

してやろうと思っている

何をする気も無くなって

本当にやらなきゃいけない事だけ

やる

もっとみる

磁石人間  磁石人間の独り言

僕は磁石人間

触れたら最後、離れない

左手にお茶碗

右手にはお箸

最初にくっついたのはその2つ

どうしても取れなくなって

さらに色んなものがくついた

どうやっても取れないんだ

それから何も触れないように

僕は気をつけた

でも触れないと

生きては行けない

物を買うことすら出来ない

そして僕は考えた

人間が磁石になるわけないから

これは僕の心の問題

考え方を変えたら

もっとみる

踊り子2 友人の独り言

そりゃあ驚いたね

あんなに大人しい娘が

あんな事するなんて

いつものように

ダンスを踊ってたんだ

ダンスは上手だったよ

この街じゃ一番さ

最後のダンスを踊り終えて

楽屋に戻ったんだ

そしてあの男が楽屋に現れた

銃声は一度きりだったね

男は銃さえ抜いてなかった

油断してたんだろうね

それからさ凄かったのは

あの娘は一人で奴らの所へ乗り込んで

結局、奴らを皆殺し

胸がス

もっとみる

人狼 物語です

人と狼の心を併せ持つ

それが人狼

人間の心は弱さの証

涙を流す事も

後ろを振り返る事も

そして人を愛する事も

すべては弱い人間の証



狼の心は強さの証

悲しみを忘れ去る事も

前を向き歩き続ける事も

そして冷たい

別れの言葉も

すべては強い狼の証



とうてい忘れ去る事の出来ない

悲しみに打ちのめされ

傷だらけの脚を

前に踏み出すことも出来ず

愛する者の名を

もっとみる

来客 物語です

お帰りなさい

お邪魔してます

あなたの奥さん?

どこかへ出掛けたわ

かわりにお留守番してたの

お仕事お疲れ様

お腹がすいたでしょ?

私がご馳走してあげるね

さあ食べて

おいしいから

毒なんて入ってないから



おいしいでしょ?

どんどん食べて

たくさんあるから

美味しかった?

あっ、

言い忘れてたけど

あなたの奥さん

もう帰ってこないわ

えっ?

このお肉

もっとみる