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あひるの競走という文化

現在、別府ラクテンチで行われている名物「あひるの競走」は野田さんが三代目で昭和25年から69年続いている。僕が野田さんを撮影することになったのは別府のとある居酒屋での話がきっかけだった。

野田さんの二人の息子さんは僕と同じ別府の中学(山の手中学校)の一個上と一個下にいて、先輩と後輩ということになる。中学の時に一番お世話になった一個上の先輩と久々に飲みに出た時「別府温泉ルートハチハチ」の話になった。僕は「別府に縁のある人を撮影したい、つまりそれは別府の文化や歴史を撮ることなんです」と熱く語っていた。

その時、その先輩が「文化を撮るならあひるの競走を撮ってくれよ。あれ、俺の同級生がやっちょんのや。色々大変みたいや。俺には別府のあひるを広める力はないけど、お前にはあるやろ」そう言われた。そんな力が僕にあるかはさておき、すぐに野田さんの息子さんの連絡先を聞き、連絡を取った。最初は息子さんの方を撮影する気でいた。

野田君に趣旨を説明すると「現在父が代表をしていて、あひるの競走の現場にも父が常駐しているので、父を撮影するというのはどうでしょう。父の出身が亀川で四の湯温泉に毎日入っていたので、温泉は四の湯はどうでしょうか?」と返信が来た。

僕はつい何日か前に四の湯に入って来たばかりだった。天井が高くお湯も綺麗で、何より別府の公衆浴場のいい意味での古さが残る温泉だったから、ルートハチハチの撮影候補に入れたばかりだった。結果、あひるの競走と温泉の両方で撮影をさせてもらうことになり、今回の撮影が実現した。

是非、別府の文化と野田さんの想いを覗いてみて欲しい。

2018.1.8 東京神父
四の湯温泉「四の湯で語る、8羽のアヒルと69な日々。」

東京神父 写真家。1978年4月20日生まれ。 別府出身、自由が丘在住。