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裁判員経験者10万人を越える

こんにちは。弁護士の大城聡です。
 最高裁判所から来年の裁判員候補者通知が送られました。冒頭の写真は最高裁判所から裁判員候補者通知が送られてくるときの封筒です。裁判員候補者の中から裁判員はどのように選ばれるか?裁判員裁判はどのように行われているのか?今回は一般社団法人裁判員ネットの「裁判員制度調査報告 第22次」をもとに、裁判員制度の最新の状況をお伝えします。


1 10万人を越えた裁判員経験者

 裁判所の取りまとめによると、制度施行から2020年8月末までの間、全国60の地方裁判所(10支部を含む)において74,975人が裁判員を経験し、25,463人が補充裁判員を経験しています。裁判員と補充裁判員を合わせた裁判員経験者の人数が10万人を越えました。
 裁判員制度が始まったのは2009年5月21日です。制度開始から11年間で裁判員候補者は313万人を超え、そのうち10万人以上が裁判員又は補充裁判員として実際に刑事裁判に参加したことになります。


2 裁判員裁判で取り扱われる事件

 裁判員裁判の対象事件は重大な刑事事件です。具体的にみると、裁判員裁判で扱われた事件の罪名別人数は、殺人が3,044人で最も多く、次いで強盗致傷が2,814人、以下、現住建造物等放火が1,264人、傷害致死が1,263人、覚せい剤取締法違反が1,181人と続いています。
 裁判員裁判で判決が言い渡された被告人(終局人員)は13,305人で、その内訳は、12,905人が有罪、122人が無罪、12人が家庭裁判所への移送(少年法55条による家裁移送決定)となっています(2020年8月末まで)。

(参考)最高裁判所「裁判員制度の実施状況について(制度施行~令和2年8月末・速報)【PDF】」

(参考)一般社団法人裁判員ネット「【動画】裁判員制度の基礎知識」


3 裁判員の選ばれ方

 裁判員候補者通知が届いてもすぐに裁判員になるわけではありません。裁判員は次の3つのステップで選ばれます。

ステップ①-裁判員候補者通知と調査票
この裁判員候補者通知の際に辞退事由や就職禁止事由がないか等を確認するための調査票も送付されます。この調査票の段階で辞退が認められる人もいます。
ステップ②-裁判の6週間前まで
事件ごとに、裁判員候補者名簿の中から、くじによって裁判員候補者が選ばれます。選ばれた裁判員候補者には呼出状が送られます。この時にも辞退事由がないかなどの確認のため質問票が送られます。辞退事由がない人は、呼出状で指定された日時に裁判所に行って選任手続期日に出席する必要があります。
ステップ③-選任手続期日
裁判所から事件の概要について説明を受けた後、裁判長から辞退事由や不適格事由、不公平な裁判をするおそれがないかなどの質問を受けます。裁判所は、不選任となった裁判員候補者を除いた人の中から、くじで裁判員を選びます。また、必要があれば補充裁判員を選びます。選ばれた裁判員と補充裁判員は、裁判長から必要な説明を受け、宣誓をします。早ければ当日の午後から裁判に参加することもありますが、選任手続期日の数日後から裁判が始まるケースも多くあります。裁判の日程は呼出状の段階で伝えられています。


4 裁判員になるかもしれないあなたへ

 裁判員制度が始まって10年以上経ちますが、まだまだ多くの人にとって裁判所は近寄りがたく、縁遠いものでしょう。しかし、20歳以上の国民であればだれもが裁判員になる可能性があります。裁判員になるために詳細な法律知識は必要ありませんが、事前に裁判員制度がどのようなものかイメージが湧けば、慌てることなく裁判員としての役割を果たせると思います。だれでもわかりやすく裁判員制度のことを知ってもらいたいと考えて、裁判員ネットでは動画も始めています。裁判員について考えるきっかけとしてぜひご覧ください。




                             以上

(本稿は2020年12月3日時点の情報に基づく記事です。)

                       文責 弁護士 大城聡