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東京アートポイント計画の現在地(2022)

2009年にスタートした東京アートポイント計画は2022年で14年目。都内各地でアートプロジェクトを展開し、活動を持続可能なものにしていく取り組みです。社会背景や共催する東京都の政策に応答し、扱うテーマや手法を更新、開発しながら進めています。

さて、どのような道を歩んできて現在はどこにいるのか。東京がオリンピック・パラリンピック2020大会を経た、2022年の上半期のタイミングで振り返ってみました。「これまでとこれから」を3期に分けて整理しています。
※以下のサイトの沿革もご参照ください。

【1期】2009-2014

2009年、オリンピック・パラリンピック2016大会招致に向けて、市民が主体的に参加する文化プログラムとして「東京アートポイント計画」をスタート。地域に根ざしたNPOが主体となり、教育や防災といった多分野とも連携しながら市民の主体的な活動を促すアートプロジェクトを展開。それらを持続可能なものにするためのスキームを作り出しました。

※立候補ファイルに当時のコードネーム「thousands knots」が掲載

《プロジェクトの一例》

イザ!カエルキャラバン in 東京
NPO法人プラス・アーツとともに、誰もが当事者となる地域防災プログラムを町会等と連携して都内各所で展開。プロジェクトをきっかけに墨田区一寺言問地区の一言会では現在も継続中。

【プロジェクトに内包されたテーマ】
・子供〜子育て層向け防災意識の向上
・アートプログラムを通じた地域自治意識の醸成
・多世代交流
・若年層ボランティアによる地域活動参加
・防災プログラムの開発

一言会のカエルキャラバンページ

川俣正・東京インプログレス-隅田川からの眺め
世界的に活躍する美術家・川俣正を招聘し、隅田川沿いに3つの物見台を立てるアートプロジェクトを実施。都立汐入公園に建設した「汐入タワー」は荒川区との協働により設置を4年間延長した。

【プロジェクトに内包されたテーマ】
・オリンピック・パラリンピックに向けた機運醸成/発信
・基礎自治体との連携(各首長とのセレモニーの実施)
・地域住民(町会)や教育機関との協働
・子供向けワークショップの実施
・家屋廃材の再利用
・河川およびテラスの利活用

隅田川沿いの3つの物見台をパフォーマーと共にめぐるツアープログラム

【2期】2015-2020

オリパラ東京大会を見据えた東京文化ビジョンに基づき事業を展開。より地域の細部に出会っていくことで、徐々に社会課題に応答するプロジェクトが増えていきました。2016年度より公募による事業採択を開始。参画の門戸を広げました。

《プロジェクトの一例》

アートアクセスあだち 音まち千住の縁
足立区、NPO法人音まち計画、東京藝術大学との共催で実施。足立区内の地域資源を活用しながらさまざまな人々が関わり、縁を生み出す企画を多数展開。アーツカウンシル東京との共催終了後も継続中。

【プロジェクトに内包されたテーマ】
・オリンピック・パラリンピックに向けた機運醸成/発信
・基礎自治体との連携
・地域住民(町会)、PTA、や教育機関との協働
・子供向けワークショップの実施
・地域交流拠点の形成
・多文化共生の推進

表現を介して海外にルーツを持つ人々との出会いをつくるプロジェクト

HAPPY TURN/神津島
2017年度公募採択事業。島民に加えて、島を離れて暮らす人、島外から移り住む人、一時的に滞在する人など、様々な立場の人々を対象に、島の歴史や生活文化などの地域資源について学び合う機会を生み出すことで、島内外の幅広い世代が島と関わるための場づくりを行う。

【プロジェクトに内包されたテーマ】
・島嶼部の生活圏における文化的振興
・こども/子育て世代の居場所づくり
・地域交流拠点の形成
・人口減少社会/空き家問題への応答
・Iターン/Uターンの環境づくり

空き店舗を回収した交流拠点でのアーティストプログラム

【3期】2021-

未来の東京戦略(2021-)、東京文化戦略2030(2022-)に基づき、社会的な分断が進むポストコロナ社会において、居場所づくりや関係性をつなぎなおすアートプロジェクトを展開。社会課題を設定した公募テーマを導入し、より都民の暮らしに密着した事業展開をめざします。文化戦略に基づき、基礎自治体との連携も重視しています。

《プロジェクトの一例》

●ACKT(アクト/アートセンタークニタチ)
「国立市文化芸術推進基本計画」に基づき、アートやデザインの手法を使って、地域に新たな交流や活動を生み出す拠点づくりを行う。市民と行政、市内外の文化芸術の担い手とが連携し、地域の潜在的な社会課題に向き合い、新たな文化をつくる多様な活動のプラットフォームの構築を目指す。

【プロジェクトに内包されたテーマ】
・基礎自治体との連携、行政課題への応答
・地域交流拠点の形成
・遊休施設の活用

カロクリサイクル
被災を経験した土地に蓄積されてきた記録物(禍録)や、防災やレジリエンスに関わる知識や表現の技術(立ち上がりの技術)、課題等を広く共有し、活用することで、災間期をともに生き、次なる災禍に備え、災後も活用できるネットワークを形成する。

【プロジェクトに内包されたテーマ】
・公募テーマ「災間・減災・レジリエンス」
・地域交流拠点の形成
・有休施設の活用

オリンピック・パラリンピックの招致からはじまった「東京アートポイント計画」。2020大会が終了し、コロナ禍を経験する現在、社会は一層分断が進み、生きづらい時代に入っているように思います。2022年に入り、東京アートポイント計画ではアートプロジェクトの持つ機能を3つの視点から整理しました。

・あたりまえを問いなおす
・課題を見つける
・分野をつなぐ

今こそ、地域や人に寄り添い、生きやすさへとつなぎ直す活動が求められています。次の1歩への選択肢を増やすために。現代社会の課題に応答するアートプロジェクトを進めていきます。