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ロンドンナショナルギャラリー展@西美(10/18まで)にいってきました。

2020年の大本命の展覧会。門外不出だったらしく、イギリス国外に初めてまとめて貸し出されたのが1つ目の奇跡。コロナで開催までが危ぶまれた中、会期を秋まで延長されたのが2つ目の奇跡。3つ目の奇跡は、入場制限してくれたおかげで、長蛇の列、激混み必至だった展覧会が比較的にゆったり見られたこと。まずは、数々の奇跡を起こしていただいた展覧会関係者の方々に感謝を申し上げます。

出展目録

入場まで

会社帰りに行ける金曜日の最終の19時30分(21時閉館)のチケットにしました。入場待ちしている人たちがボチボチいるのを横目に、19時に着いたのもあって、先に常設を見て時間を潰してました。ロンドンナショナルギャラリーがロンドンのヨーロッパ絵画史の教科書的な美術館とするならば、西美は日本における同様の美術館に位置し、エル・グレコ、ヴァン・ダイク、スルバラン、ティントレット、クロード・ロラン、ロイスダールあたり、本番への慣らしには十分なラインナップでした。出口あたりから企画展の列を見つつ、やっと列がなくなってきた19時50分ごろに入場。

今回は、数ある名作から気に入った作品を5つ選びました。

レンブラント・ファン・レイン
《34歳の自画像》

肖像画を数多く残したレンブラント。中でもこの絵は円熟期に描かれた1枚。この時代より古いの服装を装っているのも、右手を木枠に乗せたポーズも、過去の巨匠を意識し、自分は彼らに並ぶ画家なんだということを示しているそうで、自信に満ちた表情が素晴らしいです。また、レンブラントの肖像画かよって、素通りをしないようにしっかり見といてください。

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トマス・ゲインズバラ
《シドンズ夫人》

イングランド出身のゲインズバラは「肖像画は金のために、風景画は楽しみのために描く」と言ったとされますが、注文されたからではなく、注文を見込んで描いた当時の大悲劇女優だったサラ・シモンズのこの作品は、ブルー系の服装と背景の赤系のカーテンのコントラストが際立ったゲインズバラの傑作となってます。この美貌は、本展覧会一の美女でないかなと思ったりしながら見ていました。

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フランチェスコ・グアルディ
《ヴェネツィア:サン・マルコ広場》

サンマルコ広場のシンボルとも言えるサン・マルコ聖堂を遠景に望むこの作品。描いたのは、ヴェネツィアの景観画界で、カナレットに次ぐポシションにいたフランチェスコ・グアルディ。きっちり正確に建物を描くカナレットと比べると柔らかい筆触で正確な構造と言うより、その雰囲気を伝えるアーティスティックな作品に仕上がっています。そんなことを思いながら、カナレットと比較しなら見ると面白いです。

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バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
《窓枠に身を乗り出した農民の少年》

画面右側に愛らしい微笑みを投げかける少年。描いたスペインの画家・ムリーリョは、宗教画家として活躍するかたわら、子どもを描いた風俗画も残し、イギリスで人気を博します。風俗画自体は同時代の巨匠・ベラスケスから、子どもの風俗画のモチーフは同時代のオランダ風俗画の影響を受けているようで、それを独特の柔らかい筆致で仕上げ、子どもの愛らしさが満ちた晩年の名作です。実は、少年の笑顔の先にいる少女の作品と対になるらしいのですが、気になったら調べて見てください。

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ジョン・コンスタブル
《コルオートン・ホールのレノルズ記念碑》

ターナーと並ぶ、19世紀英国を代表する風景画家のコンスタブル。片田舎を描いたオーソドックスな風景画のイメージでしたが、よーく見ると、後の印象派に影響を与えた筆触分割が使われており、地味ながら見どころが多い作品になってます。ちなみに、この牡鹿はシェイクスピアの「お気に召すまま」の一場面に基づいているとされます。他の作品が気になった方は、来年開催されるコンスタブルの回顧展でじっくりと見てください。

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まとめ

冒頭にも書きましたが、ヨーロッパ絵画史を俯瞰するのに最適、かつ、教科書的な展覧会かと思います。また、ロンドンって聞いただけで無条件でワクワクしてしまう英国フリークな筆者的が、レノルズ、ゲインズバラ、ターナー、コンスタブル、ローレンスあたり作品を見られて、非常に楽しめた展覧会でした。また東京で、オリンピックが開催されない限り貸出ししてくれなさそうな非常に貴重な作品群なので、10月に閉幕してしまう前に、是非、足をはこんでみてください。

皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。