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The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション@トビカン(9/22まで)に行ってきました。

浮世絵の特別展と言えば、だいたいボストン美術館とか海外コレクターのコレクション展が多いと思うのですが、今回は国内の太田記念美術館(東京・原宿)、日本浮世絵博物館(長野・松本)、平木浮世絵財団から450点余り(前後期含む)が出展されてました。師宣から春信、清長、歌麿、写楽、広重、北斎、国芳と、浮世絵の流れが余すところなく俯瞰できる内容となっているかなと思います。

作品リスト

そんな中気に入った作品を8点ほどご紹介しようかと思います。

鳥居清倍《かみすき十郎」 二代目藤村半太夫の虎 勝山又五郎の十郎》

鳥居清倍(きよます)は初代清信の息子。見どころはこの着物のダイナミックな輪郭線で、この強弱をつけた輪郭線は鳥居派の特徴。浮世絵全般としてこれ以降は輪郭線は割と大人しくなってしまいます。ちなみに、現代の芝居の看板絵などを任されているのも鳥居派で、今は9代目だそうです。

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鈴木春信《鷺娘》

後期で展示してあったこの絵の構図も、それまでは中央に配置していた人物をやや右側に、左に空間が出ています。川を見ているからなのでしょうが、構図といい、芸術性が高くなった感じがします。着物の柄を空摺りときめだしを使った雪の表現。技巧的にも見どころの多い傑作です。

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鈴木春信《雪中相合傘》

幅を広く定型な作品が多い中、柱絵と呼ばれる縦長のサイズ。《鷺娘》の構図をうまく作ったものもいいですが、見どころを凝縮したこういう絵もいいです。この絵はもともと定型サイズバージョンもあったようなのですが、トリミングのおかげで絵が何割増しかで絵がよく見えます。トリミングすることでひそひそ話をしているのが強調されてます。

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鈴木春重《高野の玉川》

春信に影響を受けているので、目元がそっくりです。細いながらも表情が出ているこの絵を選んでみました。正直の破れたところから覗いてるとこもお茶目です。ちなみに、この作者、鈴木春重は別名司馬江漢とも呼ばれてます。むしろ洋画家としての司馬江漢の方が有名です。狩野派を学んだ後、このような錦絵を描いて、油絵に進んでいく経歴が面白いです。

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鳥橋斎栄里《郭中美人競 越前屋唐土》

喜多川歌麿と人気を二分していた鳥文斎栄之の門人。実は前期展示だったので、見られていないのですが、見たかったです。個人的には、歌麿ってそんなに刺さらなくて、鳥文斎栄之の方が好きで、門下の栄里の身元が優しいこの絵の方が好きかもです。歌麿より顔のパーツのバランスもいいです。

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歌舞妓堂艶鏡(かぶきどう えんきょう)《初代市川男女蔵》

キャプション見た時に、ん?どっちが名前?って名前っぽくない名前です。系譜的には写楽の後に位置し、画風的にも継いでます。写楽と比べると輪郭を簡略させ、今っぽいのかなって気がして、これはこれで好きです。写楽より残存点数がさらに少なく、一説によると写楽と同一人物という見方もあるそうで。

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歌川国芳《高祖御一代略図 佐州塚原雪中》

広重の風景画のようですが、描いたのは国芳。ぽくないですね。日蓮聖人の行いを描いた10枚組の中の1枚。他の絵は日蓮聖人がクローズアップされているのに、この絵のみ風景がメインになってます。国芳の画風の幅の広さに驚かされる趣きがある一枚です。

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歌川国芳《里すゞめねぐらの仮宿》

すずめを擬人化しています。場所は吉原遊廓の軒先き。その年、吉原は火災にあったそうで、復活したのですが、風紀的に吉原を宣伝することができず、すずめの擬人化して、国芳はお上の目をごまかしたようです。いろんなすずめがいて、じっくりと見ると飽きないです。たくさんのすずめの解説は追記した太田記念美術館の記事に書かれていますので、よろしかったら読んでみてください。

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まとめ

なんだ前期展示かよ。と入れ替えで見られなかった絵が多数ありましたが、全体的には、大御所以外の絵師のいい作品が見られて、今後の浮世絵の展覧会巡りがまた楽しみになりました。あと、松本にある日本浮世絵博物館(9月22日現在:臨時休館中)にも、色々落ち着いたら行ってみたいと思います。

皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。