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冷え性(脚の冷え、手足の冷え、基礎体温が低い)の鍼灸治療

疫学:これまでは女性に多いとされたが、男性患者も増加傾向にある。体の特定の部位、特に腰部、腹部、四肢末梢などに常時冷えを感じる状態。外気温の低い日や、寒冷期に多く発生する。根本的な治療が少なく、現在も冷え性に悩む患者は多い。

原因:自律神経失調、血管運動神経障害、血行障害、心身症、添加物や化学物質の過剰摂取、ワクチンなど薬害?。

一般的な治療法:原疾患があれば、それに応じた治療。ホルモン療法、薬物療法、心理療法などが主流で、根本的な治療は多くない。

当院の治療法:基本的に冷えは血液の循環不全であり、全身にくまなく血液を回すことで冷えは解消します。冷え性の要因となるのは主に自律神経の異常と筋肉のコリ、運動不足です。心臓から出た血液は本来、温かいですから、血流が滞っていなければ、通常、冷えを感じることはありません。何らかの原因で血管が圧迫されたり、血管が収縮したり、毛細血管が減少することによって、臓器に不具合が出たり、慢性的な冷えを感じるようになるのです。しかしながら、手足の局所的な冷えを治せる病院や鍼灸院は多くないらしく、有名な専門外来や「神の手(ゴッドハンド)」を持つと自称する鍼灸師の施術を受けても、手足の冷えが一向に治らないと訴える患者が多数当院へ訪れます。日本の鍼灸院では足が冷える場合、腰から下、特に腓腹筋付近へ刺鍼することが多いですが、やはり一定数の患者は冷えが改善せず、これまで放置されてきたような現状がありました。当院でも、手の冷えは前腕筋群、足の冷えは腰から下肢への刺鍼によって改善を試みてきたわけですが、やはり一部の患者は冷えが改善せず、途方に暮れていました。しかし、ある時、某病院での顎関節症患者へのサーモグラフィーを用いた実験で、食いしばりがある時は手足の体温が低下することがわかった、ということを某患者さんから教えてもらいました。この某患者さんは、「なぜに歯ぎしりや食いしばりで四肢の血流低下が起こるのでしょう?」と私に問うてきたわけですが、答えは簡単で、「食いしばりや歯ぎしりで交感神経が優位となり、末梢血管が収縮した結果、手足への血流量が低下したのでしょう」と答えました。人間や動物は戦闘状態、つまりは交感神経が優位になった状況下では、受傷時の出血を最小限に抑えるため、四肢の血管が収縮するようにプログラミングされています。そこで私は、食いしばりや歯ぎしりが常態化していれば、末梢の慢性的な血液循環不全が起こり、手足が冷えるだけでなく、手荒れや爪の異常、汗疱(主婦性湿疹、異汗性湿疹)、過剰な手汗、蜂窩織炎などが発生しやすくなるのではないかという仮説を立てました。この仮説をもとに、手足の冷えや荒れが酷い患者の顎へ刺鍼すると、短期間で明らかな改善を見せるようになりました。おそらく、食いしばりによる不眠が改善された影響も大きいのではないかと思います。したがって、当院では冷えを感じる部位周辺へ刺鍼して効果が見られない場合や、顎関節に異常がある場合は、まずは顎周囲へ刺鍼します。最近は男性の冷え性も増えてきているようですが、これまでは筋肉量の違いが冷えの原因であるという説があり、この説では筋肉量の多い男性の冷え性を説明することができませんでしたが、冷え性が食いしばりによるものであると考えれば、筋肉量の差異に関係なく起こる冷え性の説明が可能です。食いしばりが常態化していると、斜角筋や胸鎖乳突筋、僧帽筋、三角筋付近の筋肉が硬くなっていることが多いので、伏臥位にて首と上背部へ刺鍼する必要があります。また、同時に週3~5日程度、15~30分程度のウォーキングなどの軽い有酸素運動をすることで、全身の血流を改善し、冷え性の再発予防に努めることも重要です。ちなみに、中殿筋のコリや腰痛も、冷え性や基礎体温の低下の原因になりやすいようです。実際に、殿筋の筋肉がゆるむと、基礎体温が上がるケースがよく見られます。また、基本的に薬物治療とは異なり、鍼灸治療には副作用がありません。鍼灸治療を定期的に行うことで、全身の血流を改善し、自律神経やホルモンのバランスを整え、免疫機能を向上させ、ストレスや外的環境の変化に強い体を維持することが可能です。婦人科疾患対策としては、ウォーキングや腹巻の装着以外にも、腹部を毎日ゆたぽんのようなホットパックで温めるのも良いでしょう。さらに、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べて腸内環境を整え、免疫機能の向上とホルモンバランスの改善を図りましょう。

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