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南北相法(前編/巻ノ三)

水野南北居士 著
門人 平山南嶽・水野八氣 校

《身体の三停の事》

一 頭は円く天に応ずる。よって、目上の官を司り、総運を司る。また、初年運(20歳まで)を司る。

一 胴体は人(じん)に応ずる。よって、己(おのれ)を司り、貧福を司る。また、中年運(21~40歳まで)を司る。

一 腰から下は地に応ずる。よって、家(家庭)を司り、目下(部下)の官を司る。また、老年(晩年、41歳~)運を司る。

一 頭が大きい者は初年が良くない。また、目上(上司)と意見が合わない。また、頭が小さい者も初年が悪く、親に縁が薄い。

一 胴体が大きく、豊かな者は身内の上に立ち、発展がある。逆に、胴体が小さい者は我徳が無く、病弱で、根気が薄い。

一 腰から下が細い者は家庭の事で苦労が多く、病弱である。逆に、腰から下が正しく、豊かに観える者は家庭のおさまりが良く、心が豊かである。また、腰から下が太くても、正しく(整って)無く、格好が悪いように観える者は人の上に立つ事が出来ない。他の事は深く考えなさい。

杉本四郎兵衛が問う
胴体が大きく、頭が小さい者は目上に背く(反抗する)、と言うのは何故でしょうか。
答える
胴体は己(自分)である。頭は目上の官である。ゆえに、頭が小さいというのは、己の身体が目上の官に勝(まさ)るに等しい。よく考えなさい。また、天地(頭部と腰部以下)が大きく、胴体(人)が小さい者は天と地が低く迫っているようなもので、抜きんでる事は出来ない。ゆえに、己に徳が無い、と言う。道徳がある者はその胴体が健やかで豊かである。また、身体が豊かであれば、その身も堅固である。胴体が大きく、豊かに観える時は自分の身体が天地に普(あまね)く秀でているに等しい。ゆえに、発展があると言う。

辻太郎兵衛が問う
腰から下が細い者は家庭の事で苦労が多い、と言うのは何故でしょうか。
答える
腰から下が細い者は地の道理が薄いようなものである。ゆえに、住居に苦労が多い。逆に、腰から下が太く、豊かである者は、地が豊かであるに等しく、家の治まりが良い。よく考えなさい。

《骨肉の事》

一 骨は一身の柱である。ゆえに、その身体の強弱を観る。また、命の長短を知る。

一 骨が太い者は身体が強く、長命である。

一 骨が細い者は一身の柱が細いようなもので、身体が弱く、短命である。

一 また、骨が細くても、俗に言う「堅肥(かたぶと)り」のように、肉に締まりがある者は身体が強い。また、身を楽に暮らす事が出来るが、苦労が多い。

一 骨が太くても、その身体が力士のようにゴツゴツしている者は、身を楽に暮らすことが出来ない。また、人の上に立つ事も出来ない。

一 肉(皮下脂肪及び筋肉)は、生涯の福分について恵まれるか否か、を観る。また、子供の有無を知る。

一 身体が痩せていて肉が薄い者は、大地が痩せているようなもので、万物を生じ難い。よって、福分に恵まれる事も少ない。さらに、自分から生ずる子孫にも縁が薄い。

一 身体が肥(こ)えていて、肉が多い者は、身分相応に福分が巡る事がある、と観る。

一 身体が肥えていて、肉が多くあっても、俗に言う「豚(ぶた)肥(ご)え」のように、肉に締まりが無い者は、その当時は職業が安定し難い。また、物事が調い難く、子供に縁が薄い。もし、子供があったとしても、頼りにならない。

一 肉が相応にあり、がっしりとして身に潤いがある者は、身分相応の福分に恵まれるなど、非常に良い。だが、人の世話をする事が多い。

一 肉が少なく、身に潤いが無く、枯れたような感じの者は、非常に悪い。万事において、滞りが多い。また、その当時の望みは叶(かな)わない。

一 身体が痩せていて、肉が少なくても、身に潤いがある時は、その当時は順調である。また、自分の心に自然と気力が湧(わ)いてくる。

赤穂太助が問う
骨が細くても、堅肥りの者はその身体が強い、と言うのは何故でしょうか。
答える
堅肥りとは、皮膚と骨が豊かに融合している状態を言う。皮膚は外側にあるので臣(部下)とする。骨は内にあるので君(上司)とする。ゆえに、堅肥りは一身の君臣が豊かで、よく調っているに等しく、その身体が強い、と言う。骨が太く、ゴツゴツしている者は身体の君(骨)が賤しいに等しく、身を楽に暮らす事が出来ない。

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