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えろをシェアするフランス人

ここは私の新しい住処、外国人対応女性専用シェアハウス。もちろん日本人が多いシェアハウスではあったが、私の知っている以前のような、グラスを片手にアラサーが集いああだこうだと盛り上がるシェアハウスではない。様々な文化が行き交い、個性の強さが際立つシェアハウス。私にとって、人生第二のシェアハウスだ。

今日は私がこのシェアハウスで出会った、とあるフランス人のお話。

こちらをチラッと見てニコッと微笑むのは、キッチンで花瓶の水替えをしている一人の白人女性。私も思わずニコッ。笑顔は世界共通であることを再認識し、じわっと温かい気持ちになった。同じ家に外国人が住んでいることは私にとってとても新鮮で、笑顔でアイコンタクトをとってくれた彼女とは出会って3秒で友達になりたいと思った。名前を伝えると彼女もすぐに名乗り返してくれたが、早口過ぎて、正直何を言っているのか全くわからなかった。とりあえず第一印象はかわいい。

タイトルにもある通り、彼女の出身はフランス。もちろん私の人生において、フランス人との出会いは過去いつどの記憶を辿ってもない。私が持つフランスのイメージは、ちょっと長めのフランスパンと、ファッションブランドCHANEL、そしてパリコレ。彼女はフランス語と英語、そしてたまに日本語を話すトリリンガルだ。
彼女が日本語を話しているときは野原しんのすけの声とそっくりで、時に元気を失った私を、自然と笑顔にしてくれた。「オラ、しんのすけだゾォ」と、少なくともせいぜい3回は言わせただろう。
ちなみに、私が彼女に出会って最初に覚えたフランス語は“bon appétit”。
私がキッチンで晩ご飯を作っているときに、彼女は決まってよくこのセリフを口にしていた。気になるその意味はというと、“良いご飯を!”“召し上がれ”という意味合いらしい。これから食事をする私に、彼女はいつも“bon appétit”と笑顔で声をかけてくれたのだ。一人で食べる寂しいはずだったご飯でも、彼女の一言で、晩ご飯の時間が少しだけ楽しみになっていた。恥ずかしい話で、私は半年近く、この“bon appétit”を“フラペチーノ”と勘違いしていた。発音がなんとなく似ているように感じていたが、改めて声にしてみると“ペチ”しか重なっていない・・・。

彼女と会話をするときは決まっていつも英語。まぁ英語と言っても、私と彼女の言語レベルが、天と地の差であったことは言うまでも無い。日本語では話しにくい内容でも、英語というフィルターを通して話せば、何も恥じらわずに思いや感情を伝えることができるのだから、英語という言語は便利である。
私たちの会話は狭く深く、その大半はエロについて。エロと言っても色々あるが、私たちのエロは清く美しいエロなのだ。
メッセージのやりとりも概ねエロに関するトークが多く、それも英語でのやりとり。彼女から届く文面には、私の知らない英単語がずらり。次から次へと出てくる出てくる。カフェや通勤電車で、翻訳アプリを使いながらその意味を調べていた当時、私はある大きな失態をおかすこととなる。翻訳機能の音声ボタンを誤って押してしまい、静まり返った電車内に、エロ単語を響き渡らせてしまったことだ。しかもそんな時に限り音量莫大・・・。もちろんその電車には、日本人以外にも外国人も乗車しており、穴があったら入りたいくらいだった。が、しかし、私はこんな状況さえ面白さを感じていた。周りから見ればただの変態、一歩間違えれば危ない人。もし私が電車の中でこのような人に遭遇してしまったら、間違いなく車両を変えるだろう。

こうして私がシェアハウスで出会ったフランス人は、エロの文化を通じて仲良くなったのだが、私が彼女から学んだ中で最も印象的だったことは、フランスと日本の避妊法の違いについて。またそれは、国によって大きく異なるということ。日本での代表的な避妊法といえば、誰もがまずはじめにコンドームを想像するだろう。いまではどこでも手に入れることのできる避妊具。一方、フランスでは女性主導の避妊法の形態が一般的なようだ。コンドームよりピルが主流であったり、避妊注射、避妊インプラントなど、ホルモン剤を事前に体内へ埋め込む避妊法があるようだ。初めは衝撃を受けたが、これも自分自身を守る避妊法、そして行為そのものを安全に楽しむためにある避妊法だということを彼女から学んだ。女性は受け身の立場が全てではないということ。

私にとってヨーロッパの文化はとても興味深い。
彼女と一緒にいた頃は、小さな面から文化の違いを感じていたが、それは私にとって自然と心地いいものになっていた。
現在彼女はフランスに帰国している。次に彼女と再会するときは、また浜辺で寝そべりながら、清く美しいエロ話ができることを心から楽しみにしている。

彼女から託された観葉植物の手入れをしながら、今日も彼女のあんなことやこんなことを思い出している。

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