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ワクチン接種に特典は必要?-都民アンケート結果から(3)

こんにちは。東京iCDCリスコミチームです。

3回にわたり、都民アンケート調査の結果をお届けしています。第1回では、都民の新型コロナのワクチンに対する接種意向および接種しない理由について、第2回では、接種が済んだ後の行動について述べました。
最終回の今回は、都民の新型コロナワクチンへの考え方(自己決定権、インセンティブ等)についての調査結果を見ていきます。

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このグラフは、新型コロナワクチンへの考え方に対する意見への賛否をお聞きした結果を示しています。自分、また周りや社会にとっての感染症のリスクを下げるため、ワクチンを接種すべきだという意見に「強く/やや同意する」人が70 %程度いることがわかります。それとともに、「接種は個人の判断に基づくべきだ」、「接種できない/しない人を差別してはならない」と考える人は約80 %と、多くの人がワクチン接種に関する自己決定権を尊重している傾向もうかがえます。

諸外国では、ワクチン接種を促すために様々な報奨や特典を提示する「インセンティブ」を政策に取り入れています。都民はどう考えているのでしょうか。上のグラフのなかの、下から3本の帯のところをご覧下さい。
私たちは、3つのインセンティブを想定しましたが、都民の意見は割れているようです。「ワクチンを接種した人には、お見舞いや面会の制限をなくすべきだ」との項目については、同意する(「強く同意する」・「やや同意する」)人は39.8 %、同意しない(「あまり同意しない」・「まったく同意しない」)人は41.6 %でした。また、「接種を促進するため、ポイント付与や商品割引などの特典を用意すべきだ」に対する意見としては、同意する人が37.9 %、同意しない人が45.2 %です。「ワクチンを接種した人だけが参加できる飲み会やイベントを用意すべきだ」に対しては、賛成(29.4 %)を反対(53.4 %)がかなり上回っています。

これらの項目について、さらに詳しく見てみましょう。

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上のグラフは、ワクチン接種のインセンティブに対する考え方について、年代・性別に見たものです。
「ワクチンを接種した人には、お見舞いや面会の制限をなくすべき」については、20代、40代と70代で賛成が反対をやや上回っている等の違いはありますが、年代による大きな差はみられず、賛成と反対が拮抗しています。
これに対して、「ワクチンを接種した人だけが参加できる飲み会やイベントを用意すべき」については、20-40代で賛成がやや多いものの、若い世代も含めたすべての世代で、賛成よりも反対する割合のほうが顕著に大きくなっています。

では、接種意向によって、インセンティブへの考え方に何か違いはあるのでしょうか。次の図でこれを見てみましょう。

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上のグラフからは、「絶対に/おそらく接種しない」グループでは、「接種した、必ず/おそらく接種する」グループにくらべて、おおむねインセンティブに賛成する人が少ないことがわかります。とくに、「ワクチンを接種した人だけが参加できる飲み会やイベントを用意すべき」でこの傾向が顕著です。しかし、「飲み会やイベントを用意」の項目についてては、「すでに接種した」(つまりその特典を受けられる)グループでも反対が賛成を大きく上回っています。
これに対して、「ワクチンを接種した人には、お見舞いや面会の制限をなくすべき」については、接種済みグループで賛成の割合が約40~50%と高く、反対の割合を上回っています。さらに、接種忌避グループにおける賛成割合と反対割合の差も、「飲み会やイベントを用意」項目におけるそれに比べると小さくなっています。

これらのことから、都民が受け入れるインセンティブとそうでないインセンティブがあることがわかります。少なくとも今回の調査で示した項目について言えば、「飲み会やイベントの用意」のような、排除されたり社会参加できないといった不利益をワクチン未接種者にもたらすインセンティブに対しては、都民は反対の姿勢を示すものと考えられます。逆に、「ポイント付与や商品割引の特典」のように、誰かを排除することなく接種した人が利益を楽しめるものや、「お見舞いや面会制限をなくす」のように、利益を他のひとと分かち合えるものについては、比較的、人々は受け入れやすいと言えましょう。

今後、ワクチン接種を促進するため、また個人の生活及び社会経済活動の制限を緩和するため、接種のインセンティブについての検討および導入がなされることと思われます。それに際しては、このような人々の意識もふまえ、社会的な排除や分断を生じさせないような慎重さが求められます。

ここまで、今回の都民アンケート調査の結果からは、

〇 多くの人がワクチン接種に関する自己決定権を尊重していること
〇 「接種者にはお見舞や面会の制限をなくす」については賛成と反対が拮抗し、「接種者のみが参加できる会やイベントの用意」については反対が顕著に多いなど、インセンティブの内容によって、賛成・反対の意見は変わってくること

が分かりました。

以上、3回にわたり、都民アンケートの結果をお示ししました。
都民のみなさんのワクチンに対する意識や現在の感染対策の実際についての理解を深めることができました。この結果は、今後の情報発信や体制整備に生かしていきたいと思います。
ご協力くださった回答者のみなさまに感謝いたします。






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