思考方法を矯正する

以前に「要素分解の罠」というエントリを書いた。
https://note.com/tokyo_harbor/n/n2f3371d26b0b

詳細は本文を参照して貰いたいが要するに「要素還元的な(MECE的な)アナリティカル思考は大事ではあるものの、これだけで物事の本質を捉えることは難しく、問題解決のある時点でコンセプチュアル思考を用いることが求められる。どちらも重要な思考法ではあるが、人には思考の癖が存在し、アナリティカル思考・コンセプチュアル思考どちらかに偏りやすいため、場面によって意識的に使いこなす必要がある」といった内容である。

特にコンサルティングファームのジュニアはどちらかというとアナリティカル思考が求められる場面が多いが、ある程度の職位(概ねシニアマネージャー/プリンシパルくらい)になるとコンセプチュアル思考も求められることが多いため思考の習慣を意識的にギアチェンジする必要があると思っている。

私自身はアナリティカル思考の人間であり、それはかなり極端である。(以前に述べたMBTI(科学的な性格診断のようなもの)でも4つの評価軸のうち3つでは一つの軸の最大値になっている。)しかしアナリティカル思考が強いとどうしても細かい事象に捉われてしまい、対極的な視点で物事を捉えたり、課題や解を一段上位の次元で把握することが難しくなる。このような人間にとってはコンセプチュアル思考がより求められる職位になるにつれて苦労することが目に見えていたために、20代後半で意識的に思考の癖を「矯正」した。

まずは大前提として自分は極端にアナリティカル思考が強い人間であることを自覚し、また自分としてはコンセプチュアルに「振り切った」つもりであっても根本にあるアナリティカル思考が不十分になるような状況には陥らないだろうと思うようにしたのである。ある種、自分のアナリティカル思考は信頼したといってもいい。これによって要素還元的な視点に過度に囚われず、比較的安心してコンセプチュアル思考に向かい合えるようになったと思っている。

その上で物事を考える時に「直感的にはどう思うか?」「細かい例外には眼を瞑り、一言で表すと何か?」「コンセプトは何か?」「乱暴に考えると何か?」といったことを意識的に自問するようにし、また会話においてもそのような単語を明示的に使用するようにした。特にコンセプチュアル思考においては正確性よりも納得性の方が大事であり、もちろんそれらが両立できることが理想的だが、それらは相入れないことが多いため後者を重視した、より性格には前者をあまり重視しないようにしたのである。スライドも厳密さよりもキャッチーなキーワードや言い回し(例:「中小企業のオヤジモデル」)を意識的に考えるようにした。

このようなことを数年すると流石に自分の思考パターンも広がり、コンセプチュアル思考とアナリティカル思考の両面が使えるようになり、思考の幅が広がったと思っている。結局のところ大事なのは意識と実践であるというのがやってみての感想である。ここまではアナリティカル思考の人間がコンセプチュアル思考を獲得するための方法であったが、おそらくその逆も同じであると思っている。アナリティカル思考を習得しようと思ったら、やはり意識
的に構造化や厳密性にこだわり、それを実践することである程度で慣れると思われる。

いうまでもなくアナリティカル思考、コンセプチュアル思考はどちらも大事であり、場面や職位によって多少、重視されるものが異なりはするものの、結局のところはどちらも使いこなせる必要がある。大抵の場合は、どちらかが自然な思考パターンであることが多いため、もう一方は意識的に一定のレベルまでは引き上げることはするといいと思っている。

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