コロナ勝ち組の外食は誰か?

主要外食企業の月次が概ね出そろった。そこで本エントリではこの緊急事態宣言の中での外食の勝ち組・負け組について分析をしてみたい。(外食は本業ではノータッチだが、この業界は個人的には好きである。)

なお外食と言っても様々な業態が存在するが、今回は概ね客単価2,000円未満のカジュアルレストランに絞り高級レストランや居酒屋などは分析の対象外とした。(なお本日は鳥貴族の4月の既存店昨対が衝撃の3.8%(マイナス3.8%ではなくマイナス96.2%)が発表されるなど、居酒屋業態は全滅といえる。)

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まずはそもそもどれだけ外出が減少したのかを見てみる。図は都道府県別の主要駅における2020年のゴールデンウィークと前年の15時台のNTTドコモユーザーの数の比較である。傾向としては地方はあまり出控えが生じなかったが、東京や大阪などの都心部は外出が10-20%近くまで減っており、人口の加重平均では外出は30%程度にまで減少している。たまにインターネットでは都心部を望遠レンズを用いた圧縮効果を用いて「緊急事態宣言後も人が自粛していない」といった写真を見かけるが、現実としてはやはり法的拘束力がないにもかかわらず日本では70%の人は出控えたと言えるのである。これは個人的には立派だと思っている。

このように外出数は30%になったが、一方でカジュアルレストランの売上高はどのようになったのかを見てみる。図は売上高100億円以上の主要カジュアルレストラン(判明分のみ)の4月の既存店昨対を示している。これを見るとかなり面白い傾向が読み取れる。

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まずはマクドナルド、モスバーガー、KFCは売上高を伸ばしたのである。特にKFCは驚異的といってもいい業績である。これらはいずれも客数は落ちたものの(KFCは客数も100%を超えている)、客単価が大幅に向上し、既存店が100を上回っている。これは言うまでもなくテイクアウトが伸びたためである。かつや、餃子の王将、CoCo壱番屋もかなり良い水準といえるが、これらもやはりテイクアウトができる業態であるためであることは大きい。

一方で同じテイクアウトができる牛丼チェーンは100%を割っている。しかしそれでも客足が30%になっている中で96%, 88%, 77%の水準を維持できているのは上出来といえる水準だろう。この中では松屋の既存店昨対が悪いのは出控えが多かった都心部に店舗が多いためである。ここまでが「コロナ勝ち組外食」といえるだろう。

寿司、麺類、ファミレスはかなりの痛手を喰らっている。面白いのはこれらはいずれも50%前後の水準であり、ここから外食に関しては概ね客足が半分になったと解釈するのが妥当だろう。先ほどのNTTドコモのデータはあくまでも各都道府県の主要駅の人数のデータなので、恐らくはあまり出歩かずにピンポイントで飲食店だけ訪問するという行動を消費者は取ったのではないかと推測される。

見方を変えると、カジュアルレストランは「成り行き」では50%の客足になるが、テイクアウト(デリバリー対応)の有無、立地、商材が望ましいと売上を引き上げることができる、と解釈できるだろう。この中でもやはり牛丼は100%は届かなかったのに対して、マクドナルド、モスバーガー、KFCが100%を超えていたのは面白い。恐らくは牛丼はどちらかというと一人で食べるものであるのに対して、ハンバーガーやケンタッキーなどは複数人(家族)で食べるものであると考えられる。後者は客単価が100%を大幅に上回っていたのは、複数人の分を購入しているためからもそのことが傍証される。

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「コロナ勝ち組外食」の売上変化は概念的には「成り行き」では-50%になるが、そこからテイクアウトで+30%程度引き上げられ仕上がりとしては80%になったと考えられるだろう。重要なのはテイクアウトなどで一定の需要をつかんだという点である。これら「コロナ勝ち組外食」にとっては「平時に戻ったときにどのようにしてこのテイクアウト需要を維持するべきか」、というのが次の論点だろう。コンサルティング業界的な言い方をすれば「Million dollar question」と表現できる。

実は過去には似た成功例がある。それは餃子の王将である。2008年の金融危機の後の2009年には既存店昨対が118であったが、その翌年の2010年は101、その翌々年の2011年は95であったのである。つまり不況で他の店から客単価が1,000円を切っており相対的に安い餃子の王将に顧客が流入し、それが習慣化したと言えるのである。

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餃子の王将のように飲食店から飲食店の需要を捉えたのと異なり今回は「コロナ勝ち組外食」は飲食店からテイクアウトの流れを捉えたと考えられるため、平時に戻ればまたテイクアウトの需要は減少すると考えられるが、それでも一定の割合でテイクアウトをするという習慣が身に付く可能性はあるし、それを「コロナ勝ち組外食」を狙うための活動をするべきであると考えられる。100億円の外食企業で20%がテイクアウトであれば20億円分の売上と捉えることができ、このうちの半分を平時においても習慣化できれば10億円の売上高であり、原価率を30%とすると粗利で7億円アップとなる。まさに"Million dollar question"であるといえるだろう。

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