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Tokyo OSS Party!!で体感する官民共創の世界

オープンソースソフトウェア(OSS)の活用を通じた行政とシビックテックとの共創推進や官民共創デジタルプラットフォームの普及啓発を図るオンラインイベント「Tokyo OSS Party!!」を、昨年に引き続き開催しました。
また、今年は40名もの方に参加いただき、7チームが、5自治体から提示された地域課題の解決や解決策のオープンソース化を目指してプロダクト開発にトライしました。
この記事では、シビックテックとの官民共創事業の背景や今年度イベントでの新たな取り組み、そしてイベントの模様をお伝えします。

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1.イベント背景と官民共創デジタルプラットフォーム

2021年度:官民共創事業の開始・Tokyo OSS Party!!初回開催
2021年度、都は、都が持つソフトウェア(ソースコード)をオープンソース化することで他の自治体でも活用できるよう「オープンソースソフトウェア(OSS)ガイドライン」を策定しました。併せて、 OSSガイドラインの普及啓発と、自治体とシビックテックとの共創機運の盛り上げのため、昨年度、初回の「Tokyo OSS Party!!2021」を開催しました。

2022年度:官民共創デジタルプラットフォーム
本年度は、都や区市町村が抱える幅広い地域課題の解決アプローチとして、シビックテックが持つデジタル技術やノウハウを活用して地域課題を解決していく「官民共創」を実現するために、両者をマッチングさせる仕組み「官民共創デジタルプラットフォーム」を構築しました。

今年のイベントで新しくチャレンジしたこと
官民共創デジタルプラットフォームで実装を目指す機能の一つであるマッチング機能に生かすため、このイベントでは、地域課題とシビックテックとのマッチング基準を検証しました。検証は個人参加のシビックテックを対象として、参加自治体から提示された5つの地域課題に対してマッチング基準を適用し、課題ごとにチームを作りました。

この記事では、本イベントで生まれたプロダクトや参加シビックテックの声、今後の展開についてご紹介します。

2.チーム構成

シビックテックが関心のある地域や行政分野、得意分野などから成るマッチング基準によって、5つの地域課題解決にむけて7チームを作りました。

地域課題とチームごとの開発サービス

3.入賞作品および入賞チームのご紹介

最優秀賞:奥多摩町害獣被害ネットワーク・奥多摩町獣害確認アプリ 
チーム名:農作物を守れ!モンキーハンター

〇概要
①   奥多摩町害獣被害ネットワーク(獣害注意報アプリ)[住民用]
・害獣を見かけた時に、その場で害獣の種類・位置情報・写真を6タップで簡単に報告でき、即座に町の データベースに反映、さらに登録住民へ LINE で自動周知して注意喚起も可能

②   奥多摩町獣害確認アプリ[町職員用 公開も可]
・Webアプリ上(スマホ・ PC )の マップ・カレンダー・一覧表で被害状況を確認できる。被害記録の集計の負担がゼロ(町職員の負担軽減)
https://www.youtube.com/watch?v=5nZW4lGoQg0&t=2426s

〇講評
・画面が見やすく、ユーザー視点に立って作られていると感じました。
・自治体の方が参加していたので、身近な課題として捉えられていたと感じました。
・写真を使って鳥獣被害の分析をしていきたいというところが素晴らしかった。日本中で困っていることなので、時間、場所のデータがビッグデータとしても使えるとよいと思います。
・今後、他のシビックテックやハンターの方との連携も含めて広がりができたら面白いです。

〇受賞者の声
・私自身、ChatGPTを使って初のJavaスクリプトにトライし、作成できたのが良かったです。良い形のアプリができたので、自分の自治体に持ち帰って使えたら嬉しいです。
・エンジニア参加で実現に不安もありましたが、自治体の方にも技術分野にトライいただき、全員で完成できた。ユーザの使いやすさを大切に作成しました。

コメンテーター賞(公共領域):ハンター便利マップ 
チーム名:ハンター便利マップチーム

〇概要
被害報告情報を地図アプリと連携し可視化するサービス。
害獣被害者が、ハンターが必要な情報を4タップで簡単・スピーディーに報告できるLINE botと、被害位置情報が地形の起伏とともに分かる、ハンターが活用しやすいデジタルマップを実現

〇講評
・ハンターのリアルなニーズを踏まえて、平面ではなく立体で表示したり、普段行政ではできないリアルタイムデータを反映されるようになっていた部分が実際のニーズを踏まえていて素晴らしかった。
・まずはサービスが立ち上がり、関わりたい自治体がそこに乗っかっていく仕組みは望ましいと感じました。取り組みが広がっていくことを期待します。

〇受賞者の声
・ハンター目線で欲しいなと思いながら得られなかった情報を形にさせていただいた。将来的にはコストはかかってくるので、どこの自治体からどういう形で進めていくかは最終的な課題だと考えています。先ずは、作ったものを動かしてみたいと思っています。
・技術面で参加しました。今後、より多くの方に使っていただけるようにしていただけたらと思っています。

コメンテーター賞(IT領域):Sports Barrier-free Hub 
チーム名:スポーツバリアフリー

〇概要
各団体が持つ貸出可能なスポーツ備品を一元管理でき、スポーツ活動を行うコミュニティが簡単にイベント募集を行うことができるなど、西東京市民(障がい者含む)のスポーツ実施率が向上するシステム
 ・備品登録と検索、貸出窓口との連携が可能で、備品貸出の運用が効率化
 ・イベント募集に加え、参加者の役割分担をテンプレート化する等、コミ
  ュニティ形成と持続のための仕組みを導入

〇講評
シンプルなUIとユーザーが使いやすい動線が良かった。
課題からアイデアを起こしていく過程で、シンプルに作りこんでいくことを意識し、障害のある方/ない方関わらず沢山の方に利用いただけること、実際のユーザーの動線も評価させていただいた。

〇受賞者の声
・限られた時間の中で画面設計を行いました。賞をいただけて良かったです。
・画面設計の方には、爆速でプロトタイピングを行っていただきました。自治体、福祉団体他打ち合わせを行わせていただいたおかげで、課題の深堀ができて、全体の構想に繋げられたと思います。

4.参加したシビックテックの声

終了後のアンケートで、参加者の皆さんに本イベントへの率直な声をいただきました。一部抜粋してご紹介します。

○開発について
・作りたいものが出来たし、仲間も出来た。
・自治体の課題をデザイン思考で考え、プロトタイプではあるがソリューションを提案できた。
・腕試しできて良かったです。
・短期間で、(我ながら)思っていた以上のものができたと思いました。

行政課題に取り組むことについて
・自治体職員と一緒に課題にとりくんでいくためのきっかけになった。
・行政課題に対して、解決の糸口となりそうな回答ができた。

○Tokyo OSS Party‼の今後に期待すること
開発の途中経過を他グループとシェアできると、刺激にもなり、かつ新たなアプローチに活かせるかもしれない。
・もっと多くの人が参加する大きなイベントで、オフライン開催を期待したいなと思います。
・Day2に参加してみて、発表の場と表彰の機会が得られるのは大きなモチベーションになると感じた。
・定期的に開催することがコミュニティの裾野を広げることにつながると思う。

5.おわりに ~今後の展開~

イベントを終えて
互いに面識のないシビックテックが集まり、かつオンラインでのコミュニケーションでしたので、チームワークへの心配がありましたが、終わってみると、全てのプロダクトの完成度や実用度が高く、心配は無用でした。
イベント終了後、すぐに実用化したいという声もいただいた自治体もありました。これまで様々なハッカソンに参加してきましたが、イベントで出来たものをすぐに実装に向け動き出す事例は珍しく、自治体とシビックテックの共創の未来を見た気がします。

Tokyo OSS Party!! で共創を体現
これまでの協働の世界観では、行政がイニシアティブを握りながら仕様を作成し、市民は仕様に従いプロダクト作りに協力をしていました。市民の役割は「技術の提供」という側面が強かったように思えます。しかし、共創は、「ともに考え、ともにつくる」世界観です。行政と市民とで課題の本質を捉え、アイディアを出し合い、アイディアに即した技術を評価しながら進めていくものだと思います。
このような取り組み方は、当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、これまでの協働の世界ではこれが出来ていなかったのも事実です。
「ともに考え、ともにつくる」という共創の世界観を体現するため、今回のイベントでは、自治体とシビックテックとのコミュニケーションを大切にしました。Day1では自治体職員による課題説明や参加チームとの懇談、また、Day2までの開発期間の1ヶ月間は、随時、質問対応や試作品へのテスト等に協力いただきました。
「共創」とは、魔法の言葉ではありません。日頃の業務や生活の中で意識したり正しく理解したりすることで、役割分担が自然とでき、すごい結果をもたらすということが、Tokyo OSS Party!!の1か月間で垣間見られました。そのくらい、行政とシビックテックが濃密に繋がった瞬間だったのかもしれません。「官民共創デジタルプラットフォーム」がこの様な世界を築く一助になると思うとワクワクしてきます。

◾️記事
デジタルサービス局戦略部デジタルシフト推進担当課長
  三崎 隆
  竹中 忍
  元谷 崇

デジタルサービス局戦略部デジタル推進課デジタルシフト推進担当
  堀江 直人

デジタルサービス局戦略部戦略課
  石川 恵夢
  中江 成毅


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