特選おはしが影響を受けた楽曲の解説
22/7/19更新
「他人に興味がある」なんて人は基本いないです。
のわりに、
「自分をわかってほしい」という人は結構います。
僕も「わかってほしい」側の人間ですが、
「僕ってこういう人間なんだよ!!」って
猛烈に自己紹介してしまうと聞き手も興ざめです。
そこで、音楽を含む芸術作品を投下することにより
エンタメを提供するに付随して、同時に自己紹介を兼ねさせる
っていうのは結構あるあるなんじゃないかなと
思ってたりします。
創作をするモチベーションは様々ですが、
イラストレーターの水野しずさんはInstagramのストーリーでこういうことを
おっしゃってました。
この文章に非常に共感したどころか、創作の定義でもよろしいんではないかと思っちまったレベルです。
つまり、"創作"の定義が「既に同じものが世にないか自分が作る意味があるのか全部考えて命を割くこと」だとすると、
僕がやってるのはまさにそれであります。
昔から好きだった音楽が、みんなに共感されなくて、
めちゃくちゃ悲しい。こんなに良いのに、なんでみんなわかってくれないんだろう。
まあ、想像はつくけど。
多分、メディアに洗脳されているせいだ。
イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、これが二回と、間奏とラスサビ。
音楽というのはこれでしかない。それ以外は「変化球」扱い。「変」。「変人」「変態」「変則」・・・。
なんだ、どれも同じ音楽なのに。君たち、自分たちが定義したもの以外は「変な音楽」なのかい?
基本的には多神教で、万物に神は宿る系の考えなのに
音楽の定義はひとつなのかい?
皆が思う定義上にはない、しかし聴きやすい音楽を作る。
これが私がやっている「創作」であります。
といっても、「洗脳」というものは恐ろしいもので、何かしらに洗脳されてない人種なんていやしないのです。
大なり小なり、特定のコミュニティで洗脳、もとい教育、もとい常識をすりこまれ成長し今の自分があるわけで。
しかし、こと音楽に関しては、もうすこし柔軟的に、受容的になれば
もっとたくさんの在り方ができて、自由な環境になるだろう。
「ポップスはこうあるべきだ」という洗脳を打開する、
これが私の野望です。
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ちょっと前置きが長くなったのですが、
リスナーの方から「影響受けた楽曲プレイリストほちい」的な要望があったので
ガチで作りました(そしたら前置きのようなことをつらつら考えてしまった)。
んで、その楽曲と私の関係をこの記事で解説する、という企画です。
一曲あたり140文字くらいに収める予定です。よろしくお願いします。
~中学生卒業まで
0.全部抱きしめて / KinKi Kids
キンキがサブスク解禁してなかったので吉田拓郎のセルフカバーにて補完。
「自分が音楽に目覚めたキッカケとなったアーティスト」のことを造語で「ソウル(魂)アーティスト」と呼んでるのだが、KinKi Kidsは幼稚園~小学生までよくカーステレオで流れてたのでずっと歌ってた。JPOPの洗礼となったアーティストです。
「葛飾ラプソディー」でおなじみの堂島孝平さんもとうじKinKi Kidsの楽曲によく参加しており、堂本剛曰く「キャッチー工場」だそう。「キャッチー」というもののお手本だよねアイドル曲って。
1.Hedwig's Theme / John Wiliams
名作:ハリーポッターシリーズ(映画)のメインテーマ。
4,5作目くらいで作曲者がジョン・ウィリアムスじゃなくなってた気がしますが、それでも小さめに息をしていたヘドウィグのテーマであります。
買ってもらったソニーのウォークマン(400MBくらいしか入らない)にアルバムごと入れて、死ぬほど聴いたシリーズ。。。
ハリーポッターと賢者の石(第一章)が公開されたのは僕が小学校低学年とかなので、そりゃ、子供心に刺さるわけで、そら、サントラも欲しくなるわけです。
サントラに合わせて覚えたセリフを言ってたものです。。。
2.Fate of the Unknown / 下村陽子
キングダムハーツシリーズ(ゲーム)の、二作目のファイナルミックス版の裏エンディングで流れるヤツです。
作曲の下村陽子さんはゲーソン界ではかなり有名な方で、
スーパーマリオRPG(スーファミ)の作曲とかも担当されてます。
キングダムハーツシリーズは僕が中二のときに中二病発症しまくったゲームで、こちらもソニーのウォークマンで死ぬほど聴いたサントラ。
ゲームのテーマが「人の心の光と闇」的なところなので、
感情ってものの哲学は当時からわりと持ってました。
ちなみに僕は闇の支配下でした。ククク。
3.Swingin' Bach / 葉加瀬太郎 & 古澤巌
「二つのヴァイオリンのための協奏曲」というバッハの曲を
ジプシージャズ風にスウィングさせたヤツです。
「ヴァイオリンサミット2006」というコンサートDVDが当時の実家内のみで大流行しており、ひっきりなしに見ておりました。
葉加瀬太郎を始め、古澤巌、NAOTO、高嶋ちさ子、奥村愛、柏木広樹(チェロ)
と、それを支えるオーケストラが出演するコンサートDVD。
それぞれのソロあり、コラボあり、みんなで演奏あり、
なんでもアリの楽しいサミットです。
で、Swingin' Bachは自分の中の推し曲で何回も見てたなあ。
オレンジ・ブロッサム・スペシャルもオススメ。
4.Olympia / JAM Project
アニソンシンガー五人組グループ。松本梨香(サトシ)在籍時なのでこの曲は六人組。"ドラムがしたい"と思うキッカケとなったアーティスト。
ニコニコ動画が台頭してきた中学2,3年生のとき、人気のあったアニソングループであった。その他、東方アレンジとかボカロも流行り始めていたが少年おはしはここにたどり着いたわけであった。
4枚目のアルバムの表題曲"Olympia"は、明るくて、ハードで、展開的で、メロディアスで。JAMの中で有名ではないが自分が一番好きな曲をピックアップした。
ちなみに、この映像のドラマー(村石雅之さん)がかっこよすぎて、「ドラムしてえ」と思ったわけですね。
5.ETERNAL BLAZE / 遠藤正明
上記「JAM Project」のメンバー、遠藤正明によるソロカヴァーアルバム「ENSON」シリーズより。原曲は水樹奈々御大。
魔法少女リリカルなのはシリーズの主題歌を男が男的に歌っちまうという「あ、原曲ってここまで壊して自分のものにしていいんだ?」と当時の僕の常識を覆してくれた。
今や音楽は「昔のヤツの焼きまし祭り」なので、如何に過去のものを自分式に変換してアウトプットするかが求められる時代である。そういう意味ではかなり今でもヒントとなる作品。
高校生
この辺からバンド始める。
6.Hopelessly Human / Kansas
アメリカのプログレハードバンド、カンサス。州名を言うときは「カンザス」で、バンド名は「カンサス」と表記するのが未だに謎である。カンザス州トピカあたり出身。
バンドメンバーがちょっと変わっていて、ツインボーカルの片方が鍵盤、もう片方がヴァイオリンを兼任しているのが熱い。特にヴァイオリンのロビー・スタインハートはハリーポッターシリーズのルビウス・ハグリッドそっくりなので、YouTubeのコメ欄にも「へーカンサスってハグリッドいたんだぁ」と書かれるほどである。
Hopelessly Human(直訳で希望なき男)はそのタイトルの厨二感をしっかり裏切ることなく展開する。絶望を匂わせるコード進行と美しくも儚いメロディそれに乗るロビーとスティーブの繊細な歌声。
それらを支える水の流れのようなオルガンとピアノ、リードパートのオルガンソロ、ギターソロ、シンセソロ、どれをとっても最高傑作。
老人になった後のライブでこの曲をやってくれないのがなかなかキツいところである。つか、今のカンサスメンバー総入れ替えみたいになって実質解散状態である。スティーブとロビーまだ生きてるけど辞めたから、上皇陛下みたいな感じになっている(わかりやすい喩え)。
実は、特選おはしはスティーブ顕在のカンサスの来日ライブに行ったことがある。高3の夏休み、初1人夜行バス、初東京。ゲリラ豪雨。
終演後、客が出口で溜まってたのでなんとなくいると、なんと歩いてくるカンサスメンバー。そうこれは出待ちだったのだ。
やはりVoのスティーブが人気だったが、当時の私は根っからのドラマーだったためバスの助手席で暇そうにしているDrのフィル・イハートに「I respect you!!」と叫んだ。フィルは手を振って「Yeah.!」と答えてくれた。
嬉しかったけど、正しくはrespectの後に"for"という前置詞が入る。
7.Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band / The Beatles
ビートルズでポール派か?ジョン派か?と聞かれると、ポール派と答えざるを得ない私だ。
ジョンは素晴らしいし、私は大学の企画ライブでオールジョン曲のビートルズコピーバンドのボーカルをやったことがあるほどだ。ドキュメント映画「イマジン」のDVDまで持ってるし。
それでもポール派と言わざるを得ないのは、Sgt.Pepper信者というところにあろう。プログレがここから始まったというのはよくわかんないけど、とにかく好きで、9割ポール曲なのである。
8.Band On The Run / Paul McCartney & Wings
てなわけでビートルズ以降のポールのバンド「ウィングス」からも一曲。ビートルズとウィングスは、やむを得ないが比較して語られることが多い。でもでも、全く違う。ベツモノとして、ビートルズの人がやってるバンド、ではなく、ウィングスはウィングスなのだ。塔矢名人の息子、ではなく塔矢アキラなのだ。
Band On The Runは、70年代プログレブームに乗っかって作られたと言われていて、その乗っかり方がポール式で非常に絶妙。プロ。さすが。雲の上。
ジョー・イングリッシュのタイトなドラムがたまらん映像
9.Jam / Michael Jackson
2009年は色んなミュージシャンが死んだ年で、マイケルもその1人だった。当時はふーんって感じだったけど、没後に発売されたツアーリハーサルドキュメンタリー「THIS IS IT」を友達の家でみて衝撃を受けたことを覚えている。
映画中、「Wanna Be Startin' Somethin'」のベースをマイケルが指導をするシーンがあるが、自分に言われているようで、自分のドラムを見直した記憶がある。リズムとは、16ビートとは。的な。
10.羅生門 / 人間椅子
人間椅子に入門する方法は様々であるが、私は、キングクリムゾンの「二十一世紀の精神異常者」のカヴァーをクラスメイトに見せられた時だった。
原曲はこんなにねっとりしてないし、ていうかサックスがリードだし、原曲を知っていたらツッコミどころ満載なのだが、しっかり自分のものにしているところがたまんねえ。むしろ、こっちが原曲でも良いくらいだ。とか言ったら怒られそうだけど。
ちなみに、これは人間椅子が司会の青森ローカル音楽トーク番組「人間椅子倶楽部」のカヴァーコーナーにて披露したものである。余興にしてはガチすぎる。
他にも、アニソン特集で「ど根性ガエル」、フォーク特集で「全部だきしめて」、などなどいろんな曲をカバーしているので漁ってみるとおもしろいです。
当時のドラマーは「後藤マスヒロ」という天才で、現在は金属恵比須というジャパグレバンドに所属している。金属恵比須のリーダー・高木大地さんは人間椅子の大ファンで、後藤マスヒロを見事口説き落とた伊藤園の社員さんである。
「羅生門」は後藤マスヒロ在籍時の人間椅子曲(このころはまだサポートかな?)。和・洋が融合したバンドを代表する曲ということでプレイリスト入り。
11.Tarkus / Emerson, Lake & Palmer
この曲のリフをきいたとき、安い言葉だが「頭に電撃が走った」。
10/8拍子のスピード感あふれるオルガンリフは、タルカスのバックグラウンドを知らずともその生物(架空)の存在を想起させた。続くリバーブの効いたMoogシンセサイザー。好き勝手なカール・パーマーのドラム。
おまけにグレッグ・レイクの歌。
20分と現代の音楽からしたら長尺だが、それでもELPのすごさはポップに魅せているところだ。
一度、神戸のプログレフェスに行ったことがあるが、プログレファンのおぢさんというのはアホばっかりで「プログレは重厚で変拍子で長ければ良い」と勘違いしているようだった。
違う、ELPには飽きさせない、練られた構成がある。お前らのやってることは真似事にも及ばねえんだよバーカ。ていうかベースうるせえわ。
そういうイベントでした。
12.Close To The Edge / Yes
大学生
13.Chaos / Gerard
プレイリストにはなぜか「ムニエ」というアーティスト名になっているが正確には「Gerard」(ジェラルド)だ。
日本のキーボード・トリオバンドで、ドラマーが先述の後藤マスヒロ。ベースの長谷川淳とマスヒロのリズムコンビは、ELPを凌駕してしまうほど攻撃的で、鬼気迫るものがある。
私はドラマー時代、この後藤マスヒロさんのあらゆる映像を穴が開くほど見ていたが、Gerardのライブ映像は今でも家宝である。
ToccataというELPのカヴァー。国宝レベル。
俺これ持ってるもんねー。
この「Chaos」はライブバージョンはフランス(マルセイユ)で行われたものだ。件の人間椅子倶楽部で「ヨーロッパの人はプログレでも喜んで踊ってましたよ」みたいなことをマスヒロ氏がゆっていたのが結構おもしろかった。
14.絶対彼女 / 大森靖子
これまで、音楽と言えば本当にサウンドにしか耳がいってなかったのだが、リリックとして受け止める感受性がどこでついたのか、
大森靖子にたどり着いた。
学生時代まっっったくモテなかった私は、その童貞を拗らせてか、
「女性とはどのような心理で生きているのか」
ということに興味があって仕方なかった。ていうか今でもそう。
(フレディ・マーキュリーの名言で「音楽は女性と似ている。理解しようとしたら楽しめない」というのがあるが超共感。ゲイの君が言うかというきもちだが)
人類は一見男性の方が性欲が強い生き物であるという童貞時代の見解だったが、ふたを開けてみると、その執着性、競争性、依存性などに関して、そうでもないんじゃないか、と思わざるを得ない局面に当たることが多い。
だから、全く違う生き物だなと思う。しかし、社会的には同居していかなくてはならない。そんな微妙な立ち位置な生き物に対して私の興味は底を尽きないし、未だ答えはない。ゆえに数学より何倍もおもしろい。
大森靖子の楽曲は、言葉は、しっかりと心に響く。しかし、ポップシンガーのようで、ポップではない。
例えば「絶対彼女」なんかは、「これ、意味わかる?」とでもいうような、リリックを冒頭に持ってくる。
わかんなかったら即退場。
それが正解でも不正解でもない。
あーわかんないのね。それだけ。
大人の都合でプレイリスト入りできなかったが中島みゆきもほぼ同様の立ち位置。
15.KARMA CITY / 米津玄師
米津玄師のイメージが世間的に完全に「Lemon化」してしまったようなのでことわっておくと、彼は「歴史的Lemonの人」とかそういうレベルではないのでこの機会を以て解説しておく。
もっと根本的なところで新時代を築いているんだよ。
ちょっと脱線するけど、「その時代のヒーロー」っていう言葉の意味を、君たちは考えたことがあるかな。
例えば、戦後の日本の時代をちょっと遡ってみようか。太平洋戦争が終わったね。復興。一生懸命。東京オリンピック。団塊世代。高度経済成長。半導体(東芝)の繁栄。
時代ってのは回るだけじゃなく、必ず背景がある。時代が変われば価値観、常識は変わる。だから、その時々のヒーローも変わる。
話を戻すね。
米津はかつて「ハチ」というハンドルネームで「ボカロP」をしていた。
ボカロPがわからないおじさん諸君にそれが何かを説明してあげよう。
「ボーカロイドプロデューサー」の略で、ボーカロイドというのは、ヤマハが2000年代中盤に開発したボーカルロボットだ。パソコンさえあれば歌わせることができる。
(「コンピューターが歌う!? 納得できん」と思ったアナタ、ここで脱落ね。そのまま老害として若者に煙たがられて死んでください)
んで、2000年代中盤といえばインターネット黎明期、も過ぎて、ニコニコ動画の時代が到来していた。
インターネットというのはそもそも引きこもりにはうってつけのツールだった。屋内で様々な情報・コンテンツを受信、発信できる。そこから十数年後の繁栄具合はご存知の通りだ。
で、時代のところでも説明したように、そんな世の中では
「インターネットヒーロー」っていうのも出てきて当然なのである。
その代表例がいわゆる「ボカロP」たちだ。動画共有サービスで繁栄したボーカロイド文化は伝説となり、常識化した。
そして、JPOP界に米津玄師が爆誕し、伝説となった。
これはインターネットという技術が発展した必然的な結果である。
もし、米津さんちのお父さんの精子がアレじゃなかったとしても、またどこかの街で似たようなのが現れて、似たような繁栄を起こしていただろう。
米津玄師は「クソクソのクソ」だった2010年代のJPOP界に火の手を放った。これもインターネット社会の必然といえる。
なぜなら、米津玄師は超陰キャで、超陰キャってのはこだわりの強い難しい人たちで、インターネットで活躍するには超陰キャが向いてるからだ。
絶対そうとは言い切れないが、2000年代の陽キャは家に引きこもってパソコンポチポチして音楽を作るとは思えない。どちらかというと友達とバンド組んで文化祭ではっちゃける派だろう。
まとめると、
①インターネット文化が流行る
②インターネットヒーローがメジャーシーンを席巻する
③そのヒーローはだいたい陰キャ
④陰キャは凝り性
ということだ。
凝り性がメジャーシーンを席巻すると、クソ音楽は淘汰される(ある程度は)。
そしてリスナーの耳は良くなり、King Gnuの時代が訪れる(後述)。
16.ヲマヂナイ / 日比谷カタン
高1からドラムを始めて、ピアノとかもかじってコード理論はそれなりに理解したけどやっぱドラム最高だよな!とずっと思ってきた。
で、大学2年生のときインディーズバンドを始めた。
インディーズバンドってのは、どのバンドを見ても
どうも同じような音楽を提供しているようでつまらない。
なので私は楽曲に、ライブに、もっと客が惹かれるような個性を求めることを提案した。
しかし、それがやすやすと受け入れられることは難しかった。
自分の表現をドラムだけでするには限界があるということを知った。
そんな中、日比谷カタンに出会った。
彼の表現は僕が求める全てを満たしていた。
文字通り唯一無二の表現方法、
一人で全ての役割を担う脳内回路、
飽きさせないエンターテインメントの追求、
社会に対する疑問への対峙、、
人との対話の可能性に対する対峙―
これだ、これが、エンターテインメントの本質だ。
エンターテインメントの本質が具現化している。
そう感じた。
カタンさんは「マカフェリ」というジプシージャズ用のアコースティックギターを用いる弾き語りシンガーソングライター。
魔改造されたSAGA社のマカフェリ(通称「サガフェリ」)はまず弦がぶっとく、六弦にベースの三弦をはっつけている。どういうことやねん
ピックはステンレス製のものを使用し、これでもかというほどにアタック音を出す。
僕は、ここまでアスリート性の高い現代のミュージシャンを他に知らない。世界で見ても、だ。
僕はそんな日比谷カタンになろうとした。
まあ、今思えば無謀だったんだけど・・
カタンさんと同じサガのマカフェリを梅田のイシバシ楽器で購入、弦もスチールのに変えた。六弦がベースの三弦なのはさすがに無理だと思ったから、七弦ギターの七弦を貼った。
ピックは合っていたからチタン製にした。
そもそもギターをろくにしたことがなかったから、とりあえず簡単な曲からコピーした。
本人曰く「さだまさし風」のこの曲は、京都大学出身の連合赤軍である極右疑似カップルが中東のテロ集団を追い詰めるため、最期の誓いを立てんと地元を観光する。とかそんなんだった。
とりあえずこの曲を聴きまくってコピーした。
チキンピッキングとギターソロは無理だったけど、コードと歌詞を完璧にした思い出深い曲である。
そのほか、ヘテロのワルツ、ヲマヂナイ、恋のギヨテヱヌ、畸形認メ申ス、シンゴジラメドレー、とかカタンさん式MC、いろいろコピーしてはツイキャスやライブハウスでみせびらかし、客を唖然とさせて何がしかの欲求を満たしていた。
ある日、カタンさんのギタークリニックに行ったときに「千葉さん(僕の本名)はオリジナルはやんないんですか?」となんとなしに言われた。かなりギクッとしたが「作りません」と答えた。
作らないのではなく、正しくは作れなかったのだ。Gerardや日比谷カタンのような、強大なものを目の前にしたとき、これを超えたものを作るなど音楽への冒涜だとすら感じる。別に超える必要はないんだけど、知ってしまった以上、個性のレベルとして、超えることはまず無理なのだ。
作りたい欲求は存分にあったが、当時の僕に納得いくものなど、到底作れそうになかった。今でもそうだ。
大学卒業後
17.Sound Of Drums / Kula Shaker
Kula Shakerは90年代のブリティッシュロックバンド。Voのクリスピアン・ミルズは熱心なヒンドゥー教信者で、楽曲にもインド感が多く見られる。どころの騒ぎではなく、楽曲のタイトルがもうサンスクリット語だったりする。
Tattvaという曲は英語でTruth、つまり真実。ヒンドゥー哲学の用語らしい。ちんだべいだべいだ、たっとぅば。ってずっとゆってる。
「君と僕は違う生き物なのかもしれないけど、太陽の下で生まれたという意味では一緒だよ」という意味の「真実」だ。そうだ。ふーん。
・・・
クーラシェイカーの良さは、正統派なロックにある。ドラム、ベース、ギター&ボーカル、キーボード。正統派とは、言い換えれば既出ということだ。
既出というのはミュージシャンとして、多くは致命的な要素であるが、彼らはそれをうまいこと我がものに仕立て上げ、件のインドとも共生させた。
んで、Sound Of Drums。
クーラシェイカーはジャンルとして、Wikipedia的には「サイケデリックロック」とかも書かれたりする。
Sound Of Drumsは、正統派ギターロックをベースに、心地の良い不協和音を混ぜながら展開する。個人的推し曲。
18.Two Steps, Twice / Foals
識者の方々は勘づいていると思うが、私は平成以降の洋楽に疎い。ていうかあんまり興味がない。
どころか、20歳くらいまでその辺の音楽が全部一緒に聴こえて仕方なかった(この時期を私は「坊ちゃん老害」と呼んでいる)。
Foalsも同じようにきこえていたバンドの一つで、なぜかというとダンス的なリズムをベースにしているからだ。
そういう、ダンス的な、ハイハットが裏で鳴っているような音楽ってのはポップではまあまああって、当時ドラマー真っ盛りの僕としては「うわ~またダンスリズムかおもしろくない」くらいに思っていたが、
Foalsは、ただのダンスポップに収まらない、つか、ロックでダンスのリズムを刻んでいることにびっくりした。し、全然ダンスじゃない。
それに気づいたのはFoalsのライブ映像を見漁っていたときだ。
音源とライブが聞こえ方として全然違うのはあるあるだけど、
Foalsは意図して、同じ曲を全く違うものとして捉えているくらいに
雰囲気がちがくてびっくりした。ていうかそうだと思う。
音源というのは「作品」であって、作品としてサウンドを描くことが重要だ。なので、ぶっちゃけいくら音を重ねてもいい。
YesのRoundabout(1971)ですら、ベースの音はエレベとアコベを全く同じことを二回弾いている。
で、ライブはライブであって。それを享受していいね、っていう単純なものではなく、演奏者と客が同空間で対峙しているので、
リアルタイムに対話を試みる必要がある。
Foalsは両シチュエーションのコントラストをしっかり分けることに成功したバンドだと思う。
Two Steps, Twiceはそういう意味で代表となる曲。
19.Nothing That Has Happened So Far Has Been Anything We Could Control / Tame Impala
ヒップホップがロックを越す勢いで世界的に超流行りだして数年が経ち、音楽的に遅れているという日本でもさすがにクラブ文化が普通になっていて、
要するにDJっていうのがいっぱいでてきたよね。前からいたけど。敷居が低くなったよね。
昔はレコードを流していたDJも、今やデジタルで曲選び放題なのですね。
で、DJやってる友達によると、
こんな時代でも、いや、こんな時代だからこそ、レコードでDJしたがる人っていうのが一定数いるらしい(アナログDJ?かなにか)。
その友達曰く、アナログDJてのは沼だと。
金はクソかかるし、プレイ時の荷物(レコード)の量が膨大だ。
でも、デジタルにはないサウンドの温かみ、的なところが捨てられないのだろうか、彼らは断固としてアナログ道を歩み続けるのだ。
まあ確かに、レコードから流れる音は帯域(低音高音)がちょっと広めらしい。
的なことはギタリスト界隈でももう起き始めていて、どういうことかというと、「アンプのデジタル化」である。
通常、ギターの音を歪ませたりなんや音を作るとき、アンプというのを通すことによって、エレキギターがエレキギターたる音と化す。
アンプなしに、そのギターの個性は発揮しない。
しかし、その常識が破られる事態がこの令和では起こっている。アンプ(エフェクター)のデジタル化だ。なに言ってるかわからねーと思うが、おれも何をされたかわからない。
少し説明すると、「アンプシミュレーター」という箱がこの世にはあって、その箱にギターを繋ぐと、アンプに繋いだ音とソックリな音が出る、しかもいろんな音が出せる、しかも安い、という代物だ。アンプシミュレーター
アンプシミュレーターが出た当初は、本物のアンプの音になんか敵わないし、貧乏人か素人が買うっていう立ち位置であった。
ちょっと前のアンプシミュレーター
だが、もうそんな時代は終わった。
技術の進歩により最近のアンプシミュレーターは本物のアンプとほぼ同様の音が出せるようになってしまった。しかもサイズ小さい、どころの話ではなく、スマホアプリで動作するという始末だ。一万円も出せば良いのが買える。
先人たちがあんなに苦労して、重い思いをして戦ってきた、多くのお金をかけてきたアンプの音作りが、読者諸君が手にしているこんな小さな板の中で、行うことができるのだ。一万円ちょいで。
とまあ、力説してきたが実際にアンプやエフェクターを完全放棄してライブ活動を行うミュージシャンはまだまだ少ない。楽器界はデジタル文化が全然浸透してない。原因としては、70,80年代くらいのロックヒーローの皆さんは足元にエフェクターを死ぬほど並べ、でっかいマーシャルが後ろにある。そういう図に現代のギタリストは憧れを持つものだからだ。予想だけど
しかし、大多数のミュージシャンはデジタルに移行したとて、音の面で言えば問題ないはずだ。
音の面で問題があるアーティストが、先程書いた、あえてアナログDJをしたがるような人たちだろう。
その代表的なバンドこそ、Tame Impalaだ。
テームインパラはオーストラリアのサイケデリックロックバンドで、ケヴィンパーカーという人のほぼソロプロジェクトだ。
半導体、デジタルが超浸透した昨今に、超アナログな楽器と真剣に向き合った結果、コーチェラでトリを飾ってしまうという謎のエネルギーを持ったバンドだ。
とはいっても完全アナログというわけではなくて、使用DAWもAbeltonを使ったりと、普通にデジタル要素も用いている。
良いとこどりしちゃうのがテームインパラの良いところだ。
エレハモのフェーザーめっちゃいいよね。Small Stone。
日本だけか知らないけど、デジタルが普通になってきてるからか、
アナログDJとかTame Impalaのようなバンドもそうだし、
写ルンですで撮ったという写真なだけで
「なんかおしゃれ」に見えるという価値観になってきてるよね。
デジタルとアナログをうまく併用できるバンドが今後強いのかもしれない。
20.Vinyl / King Gnu
令和にそれなりに尖った音楽をポップ化するにあたってお手本になるようなバンド。めちゃくちゃ思い入れあるとかじゃないけど、ワンマンライブも行ったしインタビュー記事とかもよく読む。
どこまで行っても「正統派にやってきましたバンド」なのが個人的に好きなのかもしれない。よく比較されるけどヒゲダンみたいなのと違ってちゃんと全員楽器ウマいんだよね。楽器に対してちゃんと向き合ってきてるなっていうのの集団だから、社会的な評価を受けて僕も嬉しいのかも。
21.all the good girls go to hell / Billie Eilish
何回も書いているけど、僕は日本人なので洋モノ音楽のマーケティング基準をよく知らない。ヒットソングはわかるけど、SNSとかYoutubeコメントとかで「何分何秒のココがどう良い」っていうファンの生の声を聞けない(書いてても英語なのでわからない)。
でも日本のポップソングマーケットは単純で、
そのアーティストの特異な、というか、魅力的なプロフィールが大きなキーとなる。音源の良さは二の次な。
例えば、高校生なのにめっちゃイイ感じのヒップホップ調の音楽をやってるだとか、
例えば、東京藝術大学出身のバンドだとか、
例えば、ボーカロイド界隈から出てきたとか、
そういうの。
そういう「特異プロフィール」に惹かれるのもわからなくはない。
音楽ってわざわざイヤホンで聴かないと雰囲気がわからないという欠点がある。(画像モノはスマホで見せれば一瞬)
それだったら「17歳だよこの人」って言われたら「えーまだJKなんだすごーい」ってイメージが湧きやすい。で、対象に興味を持てる。
人間の心理ってのはそういう風にできてある。
要するに、僕は特異プロフィールでガン推しされたり、
若くてかわいいってだけで注目されたFM7 E7 Am 信仰(進行)の薄っぺらいアーティストはあんまり好きじゃないのだ。バニラって・・・
ビリーアイリッシュ(デビュー時17歳)もわりとそういう推され方をされていて、
特異プロフィール信仰って結構世界的な価値観なんだなと思ったりした。
まあ若さって有限だしね。
でもこの流れでビリーアイリッシュを選んだのは、17歳なのになどという裏文脈関係なく素晴らしい音楽だから。17歳だろうが50歳だろうが良いものは良い。
というか、称賛されるべくはビリーの兄:フィアネス・オコネルだろう。彼が全曲のサウンドプロデュースを担当したりして妹の良さを遺憾なく発揮させている。妹もカリスマ性あるし、歌詞も書くし歌えるし、日本のアーティストみたいに完全操り人形だとまでは言いはしないけど。兄の功績は大きい。
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