猫のハル

大阪在住会社員です。 本と猫、ときどき旅で人生は花まる。

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最近の記事

『紫色のキラキラ星』

向いの座席の下に、小さな白い運動靴が揃えて置いてある。足の甲の部分がマジックテープになっているデザインで、そのマジックテープの上に紫色の小さな星が光っていた。 ーー「痛くないか」 父がつま先をぎゅっと押した。 「ちょっと、痛いんちゃうか」 わたしは首を振った。 「別のやつにしといたらどうや」 ずっと前から欲しかった運動靴は、その日に限って20.0のサイズは売り切れで、19.5しか残っていなかった。 「ちょっと歩いてみ」 父にうながされてわたしは店の中を歩く。ほ

    • 14分後。

      アパートの階段を駆け下りて、公園を横切り200mほど走ったところでハタと立ち止まった。 あれっ? 鍵、かけたっけ? 部屋を出るとき、右手に通勤鞄、左手には今日こそは絶対出さねばと決めていた巨大化したプラゴミの袋を掴んでいた。 いやいや、かけた。それでも、鍵はかけた。 かけ忘れるとかある? だってあんなに存在感のある鍵で。 鍵には3年前に姪がくれたウサギの人形型キーホルダーがついている。手のひらサイズの、言ってみればかさばるものだし、白ウサギが今やグレーに変色するほど年

    『紫色のキラキラ星』