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#006 寄り道の魯迅

『小説神髄』を読もうと思い、寄り道の果てに、魯迅へと辿り着いてしまいました…。

魯迅(1881-1936)は、言わずと知れた、中国を代表する小説家です。『阿Q正伝』(1922)が有名ですよね!魯迅は、1920年、北京大学の招聘を受けて「中国小説史」の授業を開講しています。元々は、魯迅の弟の周作人(1885-1967)が依頼を受けたらしいのですが、準備不足のため、兄の魯迅が代わりに引き受けたそうです。その講義録を整理して執筆したのが『中国小説史略』です。これこそが、中国小説の発展過程を系統的に論述した中国文学研究史上初の専著なのだそうです。

ところが、この『中国小説史略』ですが、最近の新刊書店では、なかなか手に入れることができません!以前は、ちくま学芸文庫でも岩波文庫でも東洋文庫でも手に入れることができたのですが、ずっと絶版状態なんですよね。

でも、ご安心ください!

Googleが提供する検索サイトのひとつにGoogle Scholarというものがあります。ざっくり言うと、世界中の学術論文を検索できるサイトです。このサイト内で、丸尾常喜氏が執筆した「訳注 魯迅『中国小説の歴史的変遷」という論文を見つけました。
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/33509/1/35(1)_PR59-152.pdf

「中国小説の歴史的変遷」は、1924年に、西北大学と陜西省教育庁が共催した夏期学校にて、魯迅が「中国小説的歴史的変遷」と言うタイトルで2週間に渡って講義した内容を改訂したものです。いうなれば『中国小説史略』のダイジェスト版という感じです。

ダイジェストのほうが、かいつまんで学習できて好都合だと思い、今回は、この論文を読み進めていきたいと思います。

冒頭は、こんなふうに始まります。

私がお話ししますのは、中国の小説の歴史的変遷についてであります。多くの歴史家が、人類の歴史は進化してきたといいます。そうとすれば、中国もむろん例外ではありえません。ただ、中国の進化のありさまを見てみますと、二つのきわだった現象が見られます。一つは、新しいものが現われてながくたちますと、旧いものがまたもどってくる、つまり反復です。もう一つは、新しいものが現われてながくたつのに、旧いものがいっこうにすたれない、つまり混在です。しかし、それでは進化しないのかといいますと、そうではありません。ただ比較的緩慢なために、私たちせっかちな人間から見て、たいへんまどろっこしい感じがするだけであります。文芸、文芸の一種である小説も、当然事情は同じです。たとえば、今日でも、多くの作品の中に、唐代や宋代の人間、はなはだしくは原始時代の人間の思想方法の糟粕がのこっています。今日の話では、ともかく逆行したり、混雑したりしている作品の中から一すじの前進する脈絡を見いだしたいと思うのです。

では、いよいよ、中国の小説の歴史を見ていくことにしましょう。

というところで、また明日、近代でお会いしましょう。




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