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子供の「問題行動」や「転機」を見逃さないためにも、「記録」

弊社に相談された方で、これまでにどこへも相談歴のない方には、まずは保健所はじめ行政機関への相談を勧めております。しかし最近は、気の進まない反応を示す方も増えました。行政機関には相談が殺到しており、即座の問題解決に至ることは稀です。行政職員に動いてもらうためには、相談者側にも、これまでの経緯をまとめた資料の作成やエビデンスの収集といった労力が必要ですが、それを惜しむ傾向にあります。

同様に、「何度も相談に行っているが、家族の窮状を理解してもらえない」と訴える相談者のお話を聞いていると、対象者に関する有益な情報を家族も持ちあわせておらず、先方に伝えられていないことが分かります。このことはすなわち、対象者にとって節目となる出来事を、家族が見逃してきてしまったとも言えるのではないでしょうか。

とくに多いのは、いじめなど人間関係のトラブル、万引きや援助交際など違法行為といった問題行動、また、進学や就職の失敗等、人生の転機となる出来事について、親が異変に気づいていながらスルーしてしまうことです。

なぜそのときに、子供ととことん向き合わなかったのか。親御さんに尋ねると、「本人に聞いても答えないから」「その話を嫌がるから」「本人の決めたことだから」といった答えが返ってくることが多いです。しかし、そういった子供の「問題行動」「転機」「節目」の時期を曖昧に過ごしてしまうと、親も子供の言動について「これ!」といった根拠や確信がもてなくなり、その後もずるずると曖昧な対応を続けてしまうことがほとんどです。

結果として、本人に関するエピソードも記憶に残っておらず、第三者に相談しようにも、親ですら経緯や現状が説明できない、という状況に陥っています。これではどこに相談に行っても、適切な介入をしてもらうことは難しくなります。

「愛の反対は憎しみではなく、無関心」という有名な言葉がありますが、これは、親子関係にも通じるものがあります。干渉が過ぎれば子供に悪影響を与えますが、それでも、無関心よりははるかにマシであるというのが、たくさんの親子を見てきた弊社の率直な思いです。

とくに子供が未成年のうちは、親に対して「うざい」「うるさい」と言いつつも、親が自分に関心を持っているのか、本当の意味で愛してくれているのかを、確かめているものです。親が子供に本気で向き合ったという事実は、子供がどのような人生を歩むことになろうとも、子供の心には残ります。

弊社では日頃より、「マイノート」等を活用して日々の記録をつけることをお勧めしています。これは、家族に万が一の事態が起きた時、行政機関など専門機関に提出するための物ですが、日々を記録することが、親子関係を振り返るきっかけにもなります。

なお、記録(資料作成)やエビデンス収集に関する具体的なノウハウは、テキスト♯001【家族が精神疾患かもしれない……まずはどこに相談に行けばいいの?】♯002【行政機関や医療機関に相談する際、必要不可欠な「エビデンス」とは?】でも解説しています。

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