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トキワレポート(コラム)

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メンタルヘルスにまつわるあれこれや、家族・子育て、コミュニケーションについて、弊社の経験をもとにつづるコラムです。有料noteでは、より踏み込んだノウハウについてお伝えします。
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2018年7月の記事一覧

社会で生きるということ

弊社では現在、ご家族からのご依頼により、数多くの患者さんと携わっています。当たり前ですが、皆さん性格も趣味・思考もそれぞれに異なります。ただ、病名や発症時期、年齢という点で似通っているケースも、中にはあります。 病気の軽重や病状は各々ですから一概には言えませんが、ある方は着々と社会復帰(退院など)に向かって前進し、ある方は一向に退院の目処が立たない……など、入院以降の経過に大きな開きがでることもあります。この開きは、いったいどこから生まれるのでしょうか。 あくまでも弊社の

自分さえ良ければ…

弊社の携わるある患者さんは、入院治療により病気の症状はだいぶ落ち着き、退院の話が出るようになりました。ここまで来る間には、主治医の先生はもちろん、看護師さんやワーカーさんに根気よく支えていただきました。 退院後はグループホームに入居する予定ですが、本人の「あれは嫌、これは嫌」があまりにも多いため、先方からも「お断り」されるなど、なかなかうまくいきません。いわゆるパーソナリティの問題になりますが、病院側は「治療の範疇ではない」と言いますし、一方で施設側からも受け入れを拒否され

受療中断しないために

少し前のことになりますが、クライアントの家族相談に同行し、精神科医とお話をしたときのことです。親御さんが本人の病歴を説明すると、先生はこうおっしゃいました。 「受療中断しないことが一番、大切なんです」 当事者はともかく、ご家族の中には(そんなことは、言われなくても分かっている!)とお怒りになる方が出てきそうです。精神科未受診の方を医療につなげる難しさはもちろん、四苦八苦の末に本人が受診したとしても、その後、すぐに通院や服薬が途絶えてしまうことは、非常によくあることです。

「病気」を除いたところで子供のことを見なおしてみる

精神疾患は、病識(自分が病気であるという認識)をもちにくい病気と言われています。とくに重篤なケースにおいては、「病態失認(anosognosia)」と呼ばれる症状があり、これはアルツハイマーや脳卒中でも見られるように、脳の特定箇所が解剖学的ダメージを受けたときに起こることだと指摘する神経学者もいます。 幻覚や妄想の付随する精神疾患(統合失調症など)をもつ方は、この傾向が強いのではないかと思います。また、アルコール依存や薬物依存のように、依存症であることを認めたがらないことも

第三者の介入時期を見極める

精神疾患の特徴として、身体疾患とは異なり、本人が病識をもちにくいという点が挙げられます。となると、家族や周囲にいる方々が早めに変化に気づき、治療につなげられるかが重要であることは間違いありません。 厚労省によると、日本の精神疾患患者数は392万人にのぼるそうです。生涯を通じて5人に一人が「心の病気」になるとも言われていますが、いざ自分や家族のこととなると、「精神科医療」に敷居の高さを感じることも事実です。 幻覚や妄想といった明らかな症状を除いては、「何かおかしいな?」と思

相談のコツ~問題点を整理し、優先順位をつける~

家族の問題は、なかなか他人に話しにくいこともあり、家庭内で溜めに溜めたあげく、いよいよになって第三者に相談にいかれるケースが少なくありません。 その時点では、問題は深刻かつ複雑になっていることが多く、家族は追いつめられた心理状態で専門機関に赴くことになります。そのような家族が陥りやすいこととして、「問題点が整理できていないまま相談に行く」ことが挙げられます。 子供の問題で悩んでいる親が、最終的に望むことと言えば「親を頼ることなく生きていってほしい」ということに尽きますが、