『ざつ』  お気楽TRPG日記。

概要:還暦間際のTRPGデザイナー、朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)が適当なことを『ざつ』に書くエッセイ。だいたい、TRPG関連の思い出とか雑談とか、シナリオ作成やGMの裏話。内容は『ざつ』。


『ざつ旅』(石坂ケンタ)というマンガがある。

 少女マンガの新人賞を受賞したものの、なかなか企画が通らない新人漫画家で女子大生の鈴ヶ森ちかは、思いつきで、Twitterでアンケートを取る雑な旅を始める。行きあたりばったりの旅が、彼女の世界を広げていく。

 物書きというか、ライター業界的には、「やらずに後悔するより、やって後悔しろ」という教訓がある。私も、長年、フリーランスのライターをやって、なんとか生きてこられたのも、だいたい、とりあえず、面白そうなことをやって記事にしたら、仕事になったという流れがある。好きで始めた読書、ネット、TRPG、アナログゲームなどなどがまあ、結果的に仕事になった、という訳だ。

 超『ざつ』な生き方であるが、まあ、そのぐらいの方が気楽である。

 とりあえず、『ざつ』に始めよう

 仕事柄、「どうやってTRPGを始めたらいいですか?」とか「ゲームマスター(GM)って難しい。どうすればいいのですか?」とか聞かれますが、正直言えば、あくまでも趣味なので、あまり重く考えず、『ざつ』に始めませんか?

 もう40年近く前のこと。私がTRPGを始めたのは、知人のSF翻訳家・小川隆さんが「どうもアメリカで流行っているらしいんだ」と言って、元祖TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を持ってきたのがきっかけだった。当時の私はシミュレーションゲームもかじっていたし、SFマガジンの安田先生のコラムで名前だけは知っていたので、飛びついた。

 とりあえず、手探りでサイコロを振ってキャラを作る。これでいいのかな?と全員がよくわからなかった。私は盗賊を作った。HPは2点ぐらいだった。アイテム表にあったので、ロバを連れてダンジョンに入り、2つ目の部屋で天井が落ちて死んだ。

「面白いんですかね?」

「面白いんじゃないかな?」

 とはいえ、自分がルールブックを持っていなかったので、次にTRPGが出来たのは、翌年の春ぐらいだった。後にGURPSの翻訳者になる佐脇洋平さんがSFセミナーの合宿に、『ルーンクエスト』を持ってきてくれたので、そこに参加した。キャラバンに参加し、バブーンに襲われ、投石器の石が当たって死んだ。そこでプレイヤーの意識も途絶えた。

「面白かったな」

 それで『ルーンクエスト』もどきを作成し、大学やSFファンの仲間と遊んだ。とりあえず、酒場を襲う、というプレイヤーもいたが、まあ、それで楽しかった。『ざつ』だな。

出来ることからすればいい。

 時は流れ、いくつもTRPGをデザインし、翻訳すらするようになった。毎月、シナリオを書いて記事にしている。

『シナリオのアイデアはどうするんですか?』

 そういう質問が受けることが多いが、実は色々な裏技があって、かなり『ざつ』に作ることが出来る。

その1:ルールの枠を読む。

 たいていのTRPGには「想定されたシナリオ・ライン」というものがある。たいてい、GM関係の章とか、冒頭解説のどこかに書いてある。

 例えば、「シャドウラン」の場合、「フリーランスの非合法要員であるランナーが、依頼を受けて、企業秘密を盗みに行く。計画を立てて実行するが、予想外のトラブルでドンパチが発生する」というのが基本だ。もっと色々なことが出来るが、最初はこの線で遊べばいい。

 「シャドウラン5th Edition」のGMの章にあるランダム・シナリオ作成装置だと「依頼人」「仕事内容」「障害」「思わぬトラブル」を選ぶか、ダイスで決めればいい。

 ルールが難しいと思ったら、出来るネタだけやればいい。

 「シャドウラン」の場合、サイバーパンクとファンタジーが合体したユニークな作品なので、物理空間、電脳空間(マトリックス)、魔法の世界(アストラル)と3つのレイヤーが存在する。このクロスオーバーが面白いのだが、そこはいきなり3つ全部のルールを使おうとすると、慣れないGMにはシンドい。だったら、出来ることだけやればいい。

 Role & Rollに毎月掲載しているシナリオでは、マトリックス担当のデッカーをNPCにすることで、主に、物理空間で展開するようにしている。まずはそれでいいんです。

その2:ネタを1個出せばいい。

 『シナリオを考えるのが大変』という声もある。最近は、TRPGのプレイ動画から入る方も多く、プレイ動画のような、ちゃんとしたシナリオを書かなきゃ!と思われる方もいるそうですが、そこもあまり気にしないでいいんですよ。『ざつ』に行きましょう。

 参考までに、私が書いた『シャドウラン』のシナリオ一覧がブログにあります。(

 例えば、昨年12月のRole & Roll195に載った『 ロブスター! ロブスター! 続・ヴァージニア・ダンビルのゆるゆる覚醒BBQキャンプ凸凹』なんて、図書館で『ロブスターの歴史』という本を見つけたら、中にロブスターの人権問題に関する章があったので、そのままネタにしました。同じように『キャベツと白菜の歴史』という本があったので、『キャベツ農場襲撃』(R&R178掲載)を書きました。覚醒キャベツを収穫に行くんですが、キャベツの精霊に襲われるんですよね。この話をFEARの中島社長にしたら、「それは弊社の案件(『このすばRPG』)ですね」と突っ込まれました。

 ありがたいことに、「シャドウラン」というのは、「魔法とサイバーパンクの融合で、世間の時事ネタを加工してシナリオにしやすい」というものなので、ニュースを見ているだけでネタが出来ます。問題はトランプ大統領以来、現実の方がギャグ・シナリオめいているので、困るんですがね。

 オリジナリティも重要ですが、好きな作品の要素を取り込んで楽しむのも、TRPGの遊び方なので、アニメや映画を見て思いついたら、『ざつ』にそれで遊んでみましょう。

 Role & Roll176の『ラディエーション・オーバードライブ』は、『キャロル&チューズデイ』に、177の『理力の騎士』は『スターウォーズ』にインスパイアされたものです。

 最初は、それでいいんですよ。

 と、今回は『ざつ』に〆てみましょう。


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