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音霧カナタの小説

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基本無料の作品ばかりです。「こいつが小説書いたらどんなものが出来るのだろうか」と興味本位で読んで、あわよくば感想やいいねを貰えると溌剌とします。
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自作小説の目録

あ~か行アカイトクエスト 運命の子  運命はどこにあるのかを探し求めるお話。 あと百回死んだら人間になれる?  死んでリセットして、また人間になれるかは分からない。 異世界教の轢殺人  トラック係。 君のことなど知りたくもない  私のPCは無事です。 さ行自治少年VS奔放絵師  勝手な代理はご迷惑。 死に方10連ガチャ!  俺たちはまだ回し始めたばかりだぜ、この長いガチャ道を! 未完 衆目と難癖  需要と供給と主張の食い違い。 ショーウィンドウのケーキ  指を咥

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第1話『引退と決起』

退[重要なお話があります。詳しくは今夜19:00の放送にて、よろしく] Twitterのタイムラインに上がった1文を見て、1人の男が眩暈を起こし、倒れ込んだ。近くにいた彼の秘書が慌てて駆け寄り介抱する。 秘書「社長、大丈夫ですか!!? お気を確かに!!」 社長「……だいじょうぶ……じゃないが、ああ、体は大丈夫だ。睡眠も食事も平気だ……ありがとう、本当にもう大丈夫だ」 そう言って青ざめた顔のまま、30台半ばの社長はヨロヨロと歩み始める。行先は彼にもわかっていない、心ここに

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第2話『対面と都合』

内面こそが人間の根幹だ。 しかし人間はいつだって外側しか見ることが出来ない。 外見で易々食いついたその後で、 内面への審美眼を養うことが大事なのだ。 対赤さんは社長業が終わると、すぐさま帰宅した。あらゆる予定や用事を社員総出で一掃し、作った時間を晴美に割くために。 (なお、この激務期間は給料が上乗せされたので、社員のやる気は上がった) 赤さんの広々とした自宅内には、晴美に影響されて作った防音室がある。いつか配信とかやってみたいな、と思い、時折歌唱力を磨いてたが、社長業をし

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第3話『意見と見積』

夢を追うのは良いことだけども、 夢だけ見ては浮足立つ。 地に足つけて、夢を見て。 対決前夜『私引退するんだわ』 俺の推しの一言が、胃の中に重い重い何かを落としていった。正直、放心状態とはこのことなんだと思った。就活に失敗し続け、2年も無職のまま親の脛かじって生きている今までだって、深い絶望を感じたことはない。 Vtuber。正直俺はこの文化が嫌いだ。 こんなの人形劇と何が違うんだよってずっと思っていたし、ニヤニヤ動画に常駐している俺からしたら、あいつらランキングだって席

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第4話『孤独と解毒』

蟲毒Vtuberになる手段は様々ある。 流行になる前の主流は、企業が強いPCとモーションキャプチャー機材を揃え、用意された器にそのまま魂を宿す方法。 流行ってからは、個人がFaceRigを使って、自作他作のアバターで魂を宿す方法。簡単な3Dを作成するVroid、Vカツ等も最近は増えてきた。 オーディションなども存在し、声優オーディションのようなノリで可愛い体が生み出されている。 だが稀に。このオーディションそのものをイベントとして扱うこともある。Vtuber界隈でも珍し

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第5話『別離と北十字』

浄化退廃的な一夜が明けた。 頭が鎮まらない痛苦を味わいつつ、アリアは目を覚ます。薄ぼやけた視界には見知らぬ部屋と、自分の隣で半裸で眠る晴美の姿があった。 「……??」アリアはなぜ今こういう状況に陥っているのかを逡巡する。まず自分は、自分の中にある人気者の甘言を受け入れようとしていたこと。 「……」次に、晴美とのオフでの交流で、色々詰まっていたものが堰を切ったように解放されたこと。 「……!!!!」そして、アリアではなく自分をフルスロットルで出し切った配信をしたこと。その

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第6話『ママと運営』

特別な人生を歩んだわけではない。 特別な人に出会ったわけでもない。 そんな小学校、中学校、高校と、何不自由なく育っていた。 ところが、彼女には何か、ハマり込んで、熱中する物が何一つなかった。 Vtuber綾瀬川晴美になる前の彼女は、どこにでもいる普通の少女だった。 普通の少女のお話少女は体を動かす事が大好きだった。毎回体育の成績は高水準で、運動会や体育祭ではエース的存在であった。 勉強は少々苦手だった。本を前にすると5分程度で椅子から立ち上がり、そのまま遊びに行ってし

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第七話【復活と配信】(前編)

季節は変わっていく。  綾瀬川晴美の絵は、赤さんの依頼でたくさんの絵師が断続的に上げている。3日に一度は上がる様を見て、「流石に多すぎじゃないか?」と思うファンも出始めたところを、赤さんはツイートで「私が頼んだ」とネタ晴らしした。復活の布石とは言わず、寂しさからそうしていると付け加えて。  赤さんは社長業の傍ら、晴美復活への活動も忙しなく行っている。投資も惜しまない。青さんと交渉を済ませた数日後、晴美のママ(絵師)とも交渉し、転生する体のママになってほしいという主張を快諾

Vtuber綾瀬川晴美の復活 第七話最終回【復活と配信】(後編)

 綾瀬川晴美の引退から半年以上が経過しようとしていた。彼女のファンの大半は、別のVtuberたちを推して過ごしていた。興味関心の薄れ、時の過ぎるごとに少しずつファンは離れていく。それを薄情だと思う者もいるが、「去る者は日々に疎し」という言葉がある以上、やむを得ないことだ。  ましてや綾瀬川晴美は、いまなんじ内での評価が割れる問題児だった。復活を願う者は一様に「復活するとしたら個人でやった方がいい」と思っている。新人Vtuberはまだまだ増え、そのまま時間が経てば「そんなVt

綾瀬川晴美の復活 解説&感想記事

 無事に書き切ることが出来た。終わり方はいろいろ考えたけど、タイトルを回収した以上はあれでいいと思っています。  さて。この記事は続編でも番外編でもありません。物語を書き切った記念の記事です。【綾瀬川晴美の復活】という物語はあれでおしまいです。 ・各キャラクターの解説 ・物語を書こうとした切欠 ・各話の解説及びメッセージ性 ・選曲理由 ・転生などに思う事 (上記を順不同にやっていきます) 「そういう裏話興味ある」という方向けです。  文字数はそんなに多くありません。

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【短編小説】Vtuberがしたのか、Vtuberの魂がしたのか

「夢を見ている奴には悪いけどな。実は私は非処女なんだわ」  Vtuber綾瀬川晴美。かつて大手Vtuber企業に所属していたが、自身に課した期日をもって引退する。その後熱烈なファンの支援により、新たなる体を得てVtuberを続けるに至り、魂の姿でのYouTuber活動も開始した。姿を変えると同時に本名なども変えたが、ファンの間では一切定着せず晴美だ。  その晴美が定期的に行う飲酒雑談配信。旅行した場所の写真やそこでの珍事などを話していくもので、赤い髪の美少女Vtuberと

[短編小説]目には雷を、歯には鉄槌を

※この物語はフィクションです。実在する団体、個人名とは一切関係ありません。本編は無料で最後まで読めます。 お呼び出しの時間 悪魔を呼び出す五芒星の描き方が、動画配信サイトでも手軽に学べるようになった時代。頬が赤く腫れている少年が、5時間かけて作り上げた五芒星には、とにかく強い悪魔が来るように様々な供物が捧げられていた。 「地に這い、闇に溶け、月光を糧とする悪魔に捧げる。煮干、佃煮、牛乳、牛肉(特売)、梅干し、ヨーグルト、プリン、シジミ汁、納豆、卵、ホウレン草……我が願いを

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フォロワー300人記念小説、遂に完成しました!

 長きにわたる難産は、僅か一週間の閃きからの執筆で終わってしまった。あの日々は何だったのだろうか……。  気分スッキリしたので今後はブログと小説家になろうで連載されていた小説のリブート版を書いていこうと思います。たーのしー!!

【短編小説】「先生!!Vtuberになったら1億円稼げるって本当ですか!?」

 そろそろクリスマスとお正月が待ち構える寒波到来師走の手前。木造アパートの一室に合鍵で乗り込んだ学生服の少女が、「進士先生……1億円欲しいです」と肩を上下させながら膝をついた。快活で元気いっぱいな面持ち、背も胸も尻も体重も平均的、瞳が爛々と輝く活発そうな女子。好奇心と興味本位が原動力の自称美少女その名を「会座波子(えざなみこ)」。アパートの管理人の娘である。 「俺も欲しいし誰でも欲しいけど言わないのがマナーだぞ」  デスクワークばかりで自律神経が狂っているため、最近流行り