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悪魔的スーパー「サンディ」について語りたい7のこと

 先日、ツイッターでこんな表を見つけた。

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 これは、「関西スーパー格付け」という名で拡散されていた画像である。2年ほど関西に住んでいた私としては、興味がわく内容だった。

 ああ、「FRESCO」なつかしい。京都市に住んでいたときの常連だったなあ。お、「新鮮激安市場!」がある。宇治の家から徒歩5分だった。えー、「LAMU」が載ってるじゃん。三重県へ遊びに行った際に立ち寄り、陳列されている商品すべてが激安だった記憶…などなど、各地のスーパーを思い出しながら楽しんで眺めていた。

 おそらくこの表には、全国展開のスーパーも入っているのだろう。「成城石井」や「ライフ」など、東京でもよく見かけるスーパーがいくつも掲載されていた。

ん、これなんだっけ?

 そんな中、ひとつのスーパーが私の目に留まった。「サンディ」である。この表のなかで唯一「LAMU」よりも下に位置する、おそらく最安と思われるスーパー。その価格帯は「デフレの原因」以下。「異常」というカテゴリーに分類されていた。

 私はこの看板を、どこかで見た記憶があった。あれ、どこで見たんだっけ…。頭の中を整理する。そして思い出した。サンディは、我が家のすぐ近くに店舗があるのだ。

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うちの近所のサンディ☝

 あー、あそこか! ひとり気分が高揚する。実は私、なんだか怪しいスーパーがあるなあ…とは思っていたものの、足を踏み入れたことがなかった。いつもはライフやダイエーなど、名の知れた安心感のあるスーパーで買い物をしていた。しかし例の表によれば、このスーパーの価格帯は「異常」なのである。どうせ買うなら安いほうがいい。早速、サンディについて調査してみる。

 で、調べたところによると、サンディは関西圏を主戦場としており、東京にはわずかに2店舗しか存在しないとのことだった。そのほか関東圏は、埼玉に4店舗のみ。あとは岡山に2店舗。これはラッキーである。激安スーパーが近所にあるのはいいことだ。はやる気持ちを抑え、エコバックを肩に担ぐ。モリモリ買い物をする心構えで家を飛び出した。

訪ねてわかった7つのこと

 そして先ほど、私はサンディから帰宅した。圧倒的な買い物だった。自分は今後、サンディ以外で買い物をすることなどできるのだろうか。地獄の釜を開けてしまった気分だ。なぜならサンディは、価格帯はもちろんのこと、客を楽しませる創意工夫に満ちたスーパーだったからである。

 以下、サンディにまつわる7つのトピックを紹介したいと思う。もし近所にサンディを発見した場合、訪れてみることをおすすめする。もっとも、もう二度とほかのスーパーに行けなくなる覚悟があれば、の話ではあるが…。

全国各地の店舗情報を共有しておく☝

1 NBAファンがアガる色づかい

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 すでにお気づきの方がいるかもしれないが、まずなにより、サンディは看板のカラーリングがいい。白をベースに青文字、そして差し色のオレンジライン。なんだかNBAのニューヨーク・ニックスっぽい色合いである。

 そしてNBAっぽいということは当然、それにマッチするスニーカーも販売されている。サンディを訪れる際はぜひ、リンクコーデを楽しんでもらいたい。以下にサンディカラーのスニーカーをいくつか紹介しておく。だぶだぶのユニフォームにイカすバッシュで、爆買いという名のスリーポイントシュートを決めてもらいたいと思う。

2 滝のような消毒液の放出量

 こんなご時世なので、店頭にアルコールが設置されているのは当然だとして、その量が気になることってないだろうか。「あれ、ちょっと量少なくない?」と思い、数プッシュしてしまうことが私にはよくある。せっかく消毒するのだから、菌という菌を滅したい気分になるのだ。

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 しかしサンディは顧客第一なので、そんな心配には及ばない。上の画像を見てほしい。

 これは実際にサンディの店頭に設置されているアルコールなのだが、おわかりだろうか。スプレーのノズル部分がないのである。通常は、ノズルを通すことでアルコールが霧状になり、てのひらにまんべんなく振りかけられるという仕組みだが、サンディはそんなヌルいことはしない。滝である。プッシュした瞬間に、ズボンのひざから下をビショビショにする勢いでアルコールを噴射し、客の安全を守ってくれる。とても頼りがいのあるスーパーなのだ。

3 チラシのデザイン性にほれぼれ

 世の中の様々なデザインに対して、「スーパーのチラシみたい!」という悪口をよく聞く。あれは要するに、無茶苦茶な色使いで、画像の配置をテキトーに行い、とにかくたくさん商品が見えればいい、というマインドに対しての嫌悪感から来るものだと思う。

 私自身は、スーパーのチラシは、とにかく多くの割引商品を客に知ってもらうことが目的だから別にいいんじゃないか、と思うのだが、まあ、言わんとしていることは理解できる。つまり一般的なスーパーのチラシは、視認性に配慮がなく、「読みにくい」のだ。それが反感を買う理由であると思う。

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 だがサンディは違う。上の画像を見てほしい。いかがだろうか。特に1枚目表面のトップ見出しの部分。赤地に黄色を採用することで、商品価格がグッと全面に押し出されている。見事なマクドナルドカラーである。客のことを第一に考えたチラシ作りだと思う。

 また、2枚目裏面もいかがだろうか。まず上段で超お買い得商品を見せ、次に中段で週ごとのお買い得目玉商品、最後に下段でそれに付随する各種お買い得商品を提示している。これならば、目の悪いお年寄りなどが、「ねえ、結局この商品はいつがお買い得なの!?」と迷ってしまう可能性も低い。しかも、逆マクドナルドカラーで視認性もばっちり。著名なアートディレクターを雇っているのかと疑うほどの完成度である。

4 トップ営業マンばりの提案力

 商品自体の魅力は大前提で、その付加価値が意味を持つ現代ビジネスにおいて、やはり商品の活用方法を提案してくれるスーパーはありがたい。

 客のライフスタイルを予測し、「こうしたらうちの商品をもっと楽しんでもらえるんじゃないだろうか…」という心づかいは、客のハートを掴んで離さないだろう。

 そういった意味で、サンディはデキる営業マンのような魅力的な提案をしてくれるのだ。以下の画像を見てほしい。

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 たとえばすき焼きの調理法について。これなんかはサンディのいいところが存分に出ているポップだと思う。前述の通りサンディは関西系のスーパーなので、別に関西の調理法のみを前面に押し出し、でんがなまんがなの精神を押し付けてきてもいいはずだ。それにもかかわらず敵地・関東の調理法をきちんと紹介し、客目線に立って商品を楽しむ提案をしてくれるのである。エゴからは程遠い企業であることは言うまでもない。

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 また、人気のキムチ鍋紹介に関しても優しさがあふれ出ている。グッドチョイス→ベターチョイス→ベストアンサーという見事な三段論法を駆使することで、客の腹に落ちる説明がなされている。さらに、鍋の中身や辛さの追加、シメのやり方に至るまで、こちらが質問したくなる内容をあらかじめ提示してくれているのだ。なんと信頼できるスーパーだろうか。

5 チャレンジ精神を忘れない

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 スーパーに求めるものとして、「あって当たり前のもの」と「あったら気になるもの」が存在すると思う。前者はいわゆる生活必需品で、各種調味料や毎日食べるような食材など、どこのスーパーにも売っていて然るべきもののことだ。

 一方、後者といえば、「このスーパーでしかこの商品って見かけないよね」というもの。そういった商品があることでそのスーパーに足を運ぶ理由が生まれ、客はワクワクしながら買い物を楽しめるのだと思う。 

 私はそれを菓子に求める。高級でもジャンクでもなんでもいいのだが、今まで見たことないような謎の菓子に心を奪われてしまう。サンディはそれもカバーしているのだ。ザッと見ただけでも、数種類の謎菓子が棚に陳列されていた。

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おそらく殺人的カロリーを誇るビスケット☝

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ややお洒落路線のクラッカー☝

6 青空サッカー台がある

 スーパーで買い物をし、ちょっと困る場面がある。商品を袋に詰めるときだ。人気スーパーは、袋詰めの台(=サッカー台)がいつも混雑しており、前の人が終わるのを待っている手持無沙汰な時間が多い。

 しかしサンディは違う。サッカー台を外に設置することで、そうした不要なストレスを軽減してくれるのだ。しかもその場所は、日が当たる気持ちのいい開放的な空間。太陽の光を体いっぱいに浴びながら、シャカシャカと商品を袋詰めしていくのはなんとも快感である。

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 事実、先ほど私が袋詰めをしていたところ、隣に品の良いご老人が並んだ。その方はカゴを台に置くなり空を見上げ、「いい天気ねえ」と言って私に話しかけてきた。気持ちがいい空間づくりは、客同士の交流まで生むのである。もしサンディがオンラインサロンを始めたら、私はいの一番に入会するつもりだ。

7 自慢したくなるショッパー

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 プラダやエルメスなど、ショッパー自体に高級感があり、ちょっとしたお出かけで再利用したくなるブランドがある。その行為は、ブランドに対する忠誠心から来るものだろう。ブランドが好きすぎるゆえに、商品どころかショッパーまでファッションアイテムとして使ってしまうのだ。

 サンディのファンであれば、そうしたラグジュアリーブランドと同様に、ショッパーをお出かけ時のアイテムとして使いたくなる。先に述べたようにこのカラーリングはNBAのユニフォームで採用されている。ということは、色の補色効果やらデザインのルールやらを熟知した人間が制作したものなので、そのファッション性は疑うまでもないだろう。

 また、こうしてカタカナを用いたTシャツなどは海外セレブにも人気だ。きっと近いうちに、ジョニー・デップの娘あたりがサンディのショッパーでお出かけしている姿をパパラッチに撮られるだろう。そうなればメガヒットは間違いない。今なら1枚5円なので、購入の上、メルカリの準備をしておくことをおすすめする。

 さらに、さりげなく書かれた「BOX STORE」の文字にお気づきだろうか。この意味を辞書で引いたところ、

ボックスストア(◇限られた商品をダンボールに入れたまま陳列販売するディスカウント店)

出典:goo辞書

とのことだった。私はサンディの謙虚さに恐れ入った。自分たちはあくまでディスカウントストアであり、決して敷居の高い店ではないんですよ。そんな広報担当者のささやきが聞こえてきた……。

日本の食料品物価1/2を目指す。

 上の見出しは、株式会社サンディの「新卒・中途採用サイト」のコピーである。これ、カッコよすぎないだろうか。

 1960年、内閣総理大臣に就任した池田勇人氏は「所得倍増計画」を打ち出し、日本の高度経済成長をグングン推し進めていった。そのおかげで現在の日本があり、私たちがわりかし豊かな暮らしを送れている側面もあるだろう。それに関しては感謝している。しかし持続可能性を求める現代において、「倍増」というのはいささか現実味がない。

 一方、サンディのコピーはどうだろうか。「人々の生活を豊かにする」という意味では池田氏と同じだが、その手法が真逆である。これは言うならば「食料品半額計画」。日本の食料品物価を1/2まで引き下げ、その浮いたリソースで我々の生活を豊かにしてくれようと目論んでいるのだ。

日本の食料品物価は世界的に非常に高い水準だと知っていますか?もしも物価を今の半分にできれば、食費を減らしたり、ちょっと言い過ぎかもしれないけど、みなさんの暮らし方も変えられるかもしれない。私たちのビジネスが目指すのは、多くの人の豊かな暮らしに貢献することです。

出典:株式会社サンディ公式HP

ありがとう、サンディ

 以上で、「サンディについて語るべき7のこと」を終わりにする。

 企業理念、看板のカラーリング、ポップ、アルコールの量に至るまで、サンディは私たち利用者目線で物事を考えてくれている。私はすっかりとりこになってしまった。もし気になる方がいれば訪れてみてほしい。一度ハマったら抜け出せない悪魔的なスーパーだということは、事前にお伝えしておく……。

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