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階下に住んでる女の子

私の部屋はマンション最上階の3階。
2階(たぶんうちの真下の部屋)には、男女の双子が住んでいる。たぶん、中学生くらい。

この子たちは、こちらが挨拶をしても全く目を合わさず、挨拶は当然かえってこない。まさに、青春真っ盛りな雰囲気を全身から漂わせている2人だ。

                  ***

ある朝、双子の女の子の方が、制服を着た姿で、階段を登って3階にやってきて、ちょうどドアから出てきた私と鉢合わせした。

3階には、うちを含めて2世帯しか住居がなく、もう1室には中年のおじさんが一人で住んでいるだけだし、普通に考えて、3階に用事があるはずがなかった。

違和感と、ちょっとした不安を感じ、とっさに、
「どうしたの?」
と声をかけてしまった。

すると女の子は、
「なんでもありません!」
と、ちょっと慌てた様子で、これ以上干渉するなと言わんばかりの表情。

なんでもないと言われても・・・3階で一体何をするんだろう・・・?

そういえば、時々、この2階から3階の階段の踊り場に、ペットボトルや缶ジュースの残骸が転がっていたり、子供っぽいヘアゴムが落ちていたことがあった。

もしかして、あの子の隠れ家?なのかな。ここ。

ここからは私の妄想でしかないのだが、
女の子は、朝学校に出かけたふりをして、この階段の踊り場で時間をつぶし、親が出勤し、誰もいなくなるタイミングを見計らって、こっそり部屋に戻っているのではないのだろうか。

きっと学校に行きたくない何か理由があって。

                ***

ふと自分の中学生時代を思い出す。
受験して入った、念願の中学校だった。しかし、生まれ育った地域での人間関係では到底考えもつかない、ショックと憤りを感じる出来事がたくさん学校では起きて、びっくりしたし、たくさん傷ついた。

学校に行きたくない、と感じていた時期もたぶんあっただろうと思う。

しかし、私の場合、嫌なことへの対処法は、一に我慢や忍耐。
行きたくないとかやりたくないというのは、我が儘だという考えがすでにしみついていて、病気でもないのに学校を休む、サボる、というのは初めから選択肢になかった。
その結果、自分の“嫌だ“という感情に向き合うことをせず、常に“見ないふり“、“無い“ことにして生きる努力をしていた。

こうして、自分の気持ちに向き合うことなく大人になってしまった私は、
ちょっと困ったことになっている。
もちろん、人それぞれの人生、コレが間違い、アレが正解、ということは無いから、これも私的には予定通りのシナリオなのだと理解しているが。

自分の内側から湧き上がってきた感情には、“本心”、“叫び”、“欲求”、“願望”、“希望”が内包されていると思う。

自分の感情ときちんと向き合っている人は、どんどん自分自身とのつながりが濃く深くなっていくから、大人になってから『自分探し』なんてこと、しないで済むんだろうと思う。

いつでも自分自身で居ることは、難しいけど、すごく大切なこと。

学校に行きたくなければ、3階に上がってエスケープしても良いんだ。

               ***

昨日、久しぶりに、あの女の子を見かけた。
制服を着て、どうやら学校から帰ってきたところのようだが、何か雰囲気が違った。

目だ。

どうやら、アイプチデビューをしたらしい。

一重だった目元が、パッチリ二重になっている。
でも、相変わらず目つきが悪くて、ガン飛ばしている・・・

可愛くなりたいのか、いきがりたいのかどっちだ。笑

でも、
アイプチをして、学校に通い始めたんだな。と思ったら、
ちょっと嬉しくなった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また。



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