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ある晴れた日のスナップ考察 - ピントについて

主題となるものにピントを合わせるのが写真の基本と言われる。

主題とは、あなたが見たいものであり、相手に見せたいものでる。

最近のカメラはピントが合いすぎる

例えば、iPhone。

自動的に全ての領域にピントが合うよう設計されている。

これには主に2つの理由がある。

まずひとつは広角のため被写界深度が深くなり、パンフォーカスになるということ。数字で言うと、どのような光の条件でもシャッタースピード1/30以上、絞りはF1.8固定(XSなど)、ISOを状況により変動させ明るさをコントロールする仕組みになっている。絞りF1.8とは普通のカメラのレンズで考えると浅く思えるが、スマホのセンサーは小さいのでF1.8でもF5.6~8くらいの被写界深度感を得れているように思う。

もう一つは、顔認識等オートフォーカス技術の進歩があげられる。ピントをサポートするテクノロジーが、バックグラウンドで強く動いている。

これらの理由のせいで、iPhoneではなかなかピントのボケた写真をとりにくい。

あまりに多くの人がこのことに慣れているので、逆にピントの精度が低いスマホやカメラには苛立ちを覚えるだろう。

カメラメーカーもオートフォーカスの精度を上げるべく、日々努力している。

iPhoneでピントのずれた写真をあえてとってみた

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うん、見事な日の丸構図。そしてピントはきていない。

iPhone純正のアプリでは、タップして別の場所を指定してぼかすというようなことはできるが、やってみるとなかなか難しい。

実はライトルームアプリのカメラであればマニュアルフォーカスを使うことができる

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シャッターボタン横をプロモードにして、下の赤丸部分でフォーカスレバーが出てくる。ピントがあっている部分は緑色にピーキングまでされる。

今回はこちらの方法で撮影した。

さて、改めてピントのずれた他の写真を見てみる。

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こちらはマニュアルフォーカスレンズをつけたミラーレスカメラで撮影したもの。

マニュアルフォーカスレンズは、当たり前だが自らピントを合わせに行かなければならないので、オートフォーカスの”合いすぎる”とは逆の状況が生じる。

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ピンぼけ写真は、全て失敗写真で、ダメな写真であり、セレクトからまず外さなければならない写真だろうか?

僕はピントのきていない写真にも美しさは宿ると思う。

そしてその美しさは、実は、写真的な美しさではないかと思うのだ。

写真という光学機器だからこそ生み出せる現象、と言い換えてもいい。(人間の目でピントを外してモノを見続けることは難しい)

歴代の著名な写真家たちが残した作品にも、ピントが来ていなかったり、手ブレしていたりする写真が多くある。これにはもちろん、手ブレ補正等がなかった時代のテクノロジー的な問題もあるかもしれないが、彼らは写真的な美しさを感じていたのではないだろうか。

ピンぼけ写真を積極的に撮れとは言いづらいし、写真学校の先生や土門拳から怒られてしまうかもしれない。

しかし、ピントの完璧な写真がSNSにずらりと並ぶこの時代、ピンぼけ写真は目を引く存在になるし、たまには不完全な写真があったって良いのではないか。たとえピント来てないじゃんと、誰かに笑われたとしても。

フィルムカメラにはマニュアル機が多いので、自然とピンぼけ写真をつくりやすい状況になる。初心者だけでなく、プロでもとっさの状況にマニュアルフォーカスが間に合わないこともある。

カメラの機構やフィルムという物質の偶然性に委ねることができるのは、フィルムカメラが未だ根強い人気である理由のひとつだろう。

みな、被写体や写っているものばかりに気を取られて、きっと心の底では写真的な美しさに飢えているのかもしれない。


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