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凶暴なペットにご注意!

今回のテーマ:ペット
by らうす・こんぶ


東京と比べて多いかどうかはわからないが、ニューヨーク、マンハッタンにはペットを飼っている人が多い。犬を散歩させている人もよく見かけるが、やはり住宅事情を反映してか、猫を飼っている人が多いようだ。そして、日本より多いと思うのが、動物シェルターから引き取ってきた犬や猫を飼っている人たち。私の友人知人にも数人いた。

シェルターに連れて来られる動物は捨てられたり、元の飼い主から虐待されたりしていることが多く、そのために人間を怖がったり、逆に凶暴になることもある。私の知人のひとりはシェルターから雌猫を引き取って飼っているが、その猫は引き取られた当初は人間を怖がって、すぐに狭いところに隠れてしまって餌を与えるのが大変だったそうだ。飼い主が愛情を持って世話したおかげで、次第に飼い主に慣れていき、今では彼女の膝の上で眠るほどまでになった。

ところが、数年前、その猫はガンにかかってしまい、それ以来、その猫は抗がん剤治療を続けている。毎日1回飼い主は猫に薬を与えなければならないのだが、猫が薬を嫌がって暴れるので、薬を飲ませるのがひと仕事だそうだ。でも、その甲斐あって、その猫は多少は痩せて弱々しいものの、今でも普通に生活している。ペットには医療保険がないので、ニューヨークで猫に抗がん剤治療を何年も続けるのは経済的な負担が大きいはずだ。愛情と経済的余裕がないと、ニューヨークでペットを飼うのはなかなか難しいと思った。

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もう30年も前のことになるが、1度目か2度目のニューヨーク旅行でソーホーに住むゲイカップルのアパートに数日泊めてもらった。彼らもシェルターから引き取った猫を1匹飼っていた。その猫は元の飼い主に虐待されていたそうで、時々凶暴になるからと注意を受けていた。

私は猫も犬も飼ったことがなく、猫の習性をよく知らなかった。私が寝ていると胸の上に乗っかって私の顔に自分の顔を向けてしばらく座っていたり、頭の上を何度もひょいひょいと飛び越えたりすることがあって、遊んで欲しいのかと思ったが、猫の構い方を知らないので放っておいた。

あるとき、飼い主のカップルが留守の時に私がアパートに戻ってきて、渡されていた合鍵でアパートに入ると、いきなりその猫が襲いかかってきた。振り払っても、敵意剥き出しで襲ってくるので慌てて部屋を飛び出した。見ると、長ズボンを履いていたのに片足の膝あたりに数カ所かなり深い引っ掻き傷ができて、血が出ていた。

あとで気づいたのだが、その猫が私の胸元にのっかってきたり、頭の上をジャンプしたりしていたのは、私に遊んでもらいたかったからなんかじゃなくて、私の威嚇していたのだ。引っ掻かれたのは足だったけれど、今思えばそれは不幸中の幸いだった。もしかしたら、私は顔をめちゃくちゃに引っ掻かれていたかもしれないと思うと、今でもゾッとする。




らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

らうす・こんぶのnote:

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