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スノードームの「永遠ではないからこその美」を楽しむはなし

19日から中野ブロードウェイ4階のGalleryリトルハイにて、個展を開催しています。おかげさまで盛況なスタートを切り(ありがとうございます!28日最終日、水曜定休です)、お持ちした60個のスノードームもかなりの数がお客様の元へ旅立ってゆきました。

そんな個展初日、2日目に在廊してお客様とお話しする中で自分とお客様の中にあるスノードームに対する認識にズレがあるなと感じました。

今日は7年かけて鉱物スノードームを販売に漕ぎ着けた私の、個人的なスノードームへの愛のお話を書きたいと思います。

私がスノードームが好きで、学生時代から旅先で買い集めていたお話は以前、記事にしましたが、その後ブログを始めてスノードームを自身で作り始めると、やはりスノードームのことをもっとよく知りたいという欲が出てきました。

その当時はまだ私にそれほどスノードームの知識はなく、ネットで検索してたどり着いた記事を読んだり、関連書籍を買い集めたりなどして楽しむ程度で、ディープなスノードームコレクターの世界はまだその存在すら知りませんでした。

転機となったのは日本有数のスノードームコレクターであり、オリジナルスノードームブランドを展開しているクールラッシュのヒデさんとの出会いです。

クールラッシュはヒデさんのスノードームコレクターとしての経験と知恵と愛に裏打ちされたスノードームブランドなのですが、私は制作活動を始めたばかりの頃、このクールラッシュオリジナルのスノードームキットを使っており、だんだんと購入する数が増えていき、ヒデさんとメールでのやりとりでスノードーム制作の相談に乗ってもらったり、私のイベント出展時などには見に来てくださったりなどするようになっていきました。

今思えば、それはお互いの仕事を超えたヒデさんの純粋な「スノードーム愛」からくる交流だったのだと思います。それほど、いろいろなことを教えていただいたのでした。

そんな交流が何年か続いた頃、たまたま鉱物スノードームの制作に関する相談をヒデさんの地元でする機会があり、雑談の流れでヒデさんの素晴らしいコレクションを見せていただくことになりました。

ヒデさんのご自宅のスノードームコレクション。

それはそれは私が今まで見たこともない世界でした。

キャラクター、お土産物、珍しいモチーフ、ブランドのノベルティ、アート作品…ありとあらゆる種類のスノードームが数えきれないほど陳列された棚はまさに圧巻で、目眩すらするほど。

そんな中で私が一際魅了されたのが、古い古い、スノードーム初期のコレクションです。

それらは古びて、くすんだプラスチックやガラスでできていて、見た目はお世辞にも綺麗とは言えません。

中の水はすっかり抜けていたり、濁ってウィスキーのような色になっていたり、苔のようなものが生えているものすらあります。

それでも、なんとも言えない愛らしさ、ノスタルジーを感じる佇まいで、いったこともない古き良き時代のアメリカやヨーロッパ、昭和の観光地の、賑わいと人々の興奮が残り香のようにそこにまだ漂っている気すらしました。

ああそうか、スノードームは経年変化してしまうけれど、それは劣化ではないんだ。

花が咲き誇り、やがて萎れ、干からびてもまだなお退廃的な美を讃えるドライフラワーになるように、スノードームは往時の思い出や、興奮や、愛着をたたえたままこうして変化してゆくものなのだ。

私はそう感じて何か、胸の奥が熱くなるのを感じました。

帰宅すると私は、3.11東日本大震災時にかろうじて割れずに残った、大学卒業旅行の折にセントポール寺院とロンドン塔で買い求めたスノードームを久しぶりに取り出してみました。

それはやはり劣化の一途を辿っていたもので、しばらく仕舞い込んでいたのですが、久しぶりに見るとその飴色に変化した水や、水が抜けてできた空間さえ、「劣化」ではなく「時間が作り上げる別の姿」に見えたのでした。

スノードームはその性質上水を注水しゴム栓で栓をしているので、どんなに清潔に気を遣ったところでいつかは劣化して朽ちて壊れる運命です。

でもその儚さ、永遠ではないが故の時の経過の美しさ、それこそが私はスノードームの良さだと感じます。

花が枯れるまでを愛でるように、ガラス球の中に舞い散る架空の雪景色を眺め体験、その記憶こそがスノードームの楽しみなのかもしれません。

それまでは劣化するのは悲しいから嫌だ、どうにかこの美しい閉じられた世界を永遠のものにしたいと躍起になってた私でしたが、それはまるで、ボーイソプラノをめでたいがあまり時を止めるためにカストラートにする、というようなものなのではないかと思い至りました。

時の流れは残酷だけれど、時が流れるからこそ美しさが際立つのだと思い直してからは、最善は尽くして経年劣化を抑える努力はしようと研究を重ねつつも、自身の主催イベントや個展でスノードームを「永遠のものではありませんが、だからこその美しさをお楽しみください」と胸を張って言えるようにもなりました。

今回の個展でもそんな趣旨をキャプションでご説明しつつ、現在の私にできる最上の技術を持って鉱物スノードームを販売しています。

もちろん、朽ちていってしまうものなどにお金を払えないという考えの方もいらっしゃるのは当然ですから、そういった方には鉱物ジオラマをお勧めします。こちらのシリーズでは経年劣化がほぼない形でお作りしています。

いずれにせよ、石のある景色を楽しむ上で、時という概念は重要なファクターになりますから、そんなことを頭の隅に置いてご鑑賞くださったら、よりお楽しみいただけるのではないかな、と、思っています。

………………………

9月は2箇所で展示をやってます!
ぜひお立ち寄りください。

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鉱物アート作家「時計荘」こと島津さゆりです。国内六ケ所の店舗やギャラリーにて作品を常設展示販売しており、季節ごとに個展や催事を開催しています。
コメント (4)
鉱物ジオラマ!

時間ができたら詳しく紹介してください。
楽しみにしています。
興味深く読ませていただきました。私たち人間も、スノードームと同じようにだんだん老いて死へ向かっていく存在です。お互い隣り合ってゆっくり時間を重ね、そのときそのときの美しさを賛美していくのが良い付き合い方なのかな、と感じました。
此瀬 朔真さんの感じ方に確かにそうだと思いました。
美しさの基準がファションショーを見ていても旧来の細めのスタイルが良いと言われる女性から、体型や年齢もまちまちの普通の女性が登場するようになってきました。
他人からの評価ではなく、そのときそのときの美しさが大切にされる時代へと変わってきているのだと思います。
ミニチュア陶器 工房てるとさま
はい、次はジオラマについて書こうと思っています。よろしかったらご覧くださいね。
世は多様性を認める流れになり、美しさの基準もいろいろになり自由は素敵だと思います。


此瀬朔真さま
おっしゃる通りですね。
時というもとは不思議ですね、目には見えないのに確実に私達に干渉してくるし、時にそれが美となる。まだまだ私も探求が必要です。
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