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【拙訳】カラデシュリマスター リミテッド概要:シールド・ドラフトイベントの手引き by Compalsion(MTG Arena Zone)

 Magic;the Gathering Arena(以下「MTGA」)カラデシュリマスターが実装されました! ということで、毎回リミテッド概要を執筆しているMTG Arena Zoneの記事の翻訳をお届けします。

 ↓↓↓原文はこちら↓↓↓

 発売当時はスタンダード環境だけでなくリミテッドも機体旋風が吹き荒れ「列車ゲー」とも評されたカラデシュリミテッド。今回の削除カードを見ると、かなり念入りな調整の跡が伺えます。

 カードリストは別記事にまとめていますので、よければそちらもご覧ください。

 今回も設定上有料記事ですが全文無料で読めますので、ぜひ気兼ねなくご一読ください。その上で、「役に立った!」「翻訳助かった!」と思っていただけた方、ぜひ記事のご購入、またはサポートをいただけると、大変励みになります。よろしくお願いします!


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Kaladesh Remastered Limited Overview: A Primer for Sealed and Draft Events
BY COMPULSION · PUBLISHED NOVEMBER 11, 2020 · UPDATED NOVEMBER 11, 2020

■はじめに

 WotCに対して、近年のスタンダードの扱いとインフレについて一言物申す記事(※)を書いた後ではありますが、褒めるべき部分は褒めるべきだと思っています。ハッキリ言いますが、「~リマスター」のリミテッド環境は正に《天才のひらめき》、もとい、天才の所業です。構築環境(=ヒストリック)を微調整することができるだけでなく、(理論上は、)洗練されたリミテッド環境を楽しむことができるのです。

 まったく新しいメカニズムを備えたリミテッド環境を、バランスのとれたVer2.0という形で楽しめるのはとても大きな意義があります。WotCが内部テストだけでこれだけの調整をしていることは素直に驚くべきことです。確かに「相棒」など大きな欠点はありましたが、継続的なパッチや再調整を行える他のゲームと違い、近年リリースされたエキスパンションのリミテッド環境が楽しいものになっていることはとても印象的なのです。

 「カラデシュ」「霊気紛争」はいわば「荒れた」フォーマット側ではありますが、リマスターで調整すべきフォーマットとして、下地は申し分ありません。

※訳者注:原文筆者は10月30日、「A Song of Timmy and Spike or: How I Learned to Love MTG but Still Worry About It」(ティミーとスパイクの歌~MtGを学び愛した僕らが心を痛める原因~)という記事を寄稿。ここ1年強の間に進んだカードパワーインフレと、スタンダードへの軽率な対応について、WotCに対する苦言がまとめられています。原文は下記。

 「カラデシュ」の頃を思い出すと、頭に浮かぶのはやはりエネルギー、そして機体です。後で詳しく述べますが、前者はターンを跨いで使用できるリソースをプレイヤーへ提供し、後者はクリーチャーと併用することで機能するまったく新しいタイプのパーマネントです。皆さんが思っている通り、ゲームに与えた影響は大きく、こうした新しいギミックをひとつのセットで一気に導入したことは非常に野心的だったと思います。セットが失敗したとは(リミテッド的な観点では)思いませんが、調整が行き届いていないことは否めず、異常な性能を持つカードが数多くありました。

 そう、ここでカラデシュリマスターの出番です。かなりの数のカードがカットされ、セットに入る可能性のあった448枚のうち303枚を残すのみとなりました。これがカラデシュのより洗練されたバージョンとなることを願っていますし、これからこのセットでプレイするのが待ちきれません!

 この概要では、知っておくべきメカニズムの話から始めて、セットの全体的な印象を見ながら、各2色のアーキタイプと、それを支えるカードについてまとめていきます。多く使用することになるコモン、アンコモンを中心にまとめています。当然レアカードも、アーキタイプやメカニズムの傾向を踏襲していますが、概して高いカードパワーを誇ります。

■メカニズム

 さあ、「カラデシュリマスター」特有の5つのメカニズムを掘り下げていきましょう。


1.エネルギー

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 エネルギーはまったく新しいリソースで、マナと違いターンを跨ぎ「溜めて」おけます。エネルギーを生み出すカードもあれば、消費して何かをする、あるいはその両方を一気に行うカードもあります。緑と青がエネルギー活用に一日の長がありますが、無色を含むすべての色がエネルギーを使用可能です。デッキ内にエネルギー関連のカードを1枚追加するごとに、その価値が指数関数的に増えていく、という性質のメカニズムです。特に、エネルギーの見返りが大きいレアや神話レアが使えるなら、デッキにエネルギーを生成するカードを多く用意する価値が生まれます。エネルギーを使用するカードが少ないと、エネルギーを生成するカードの真価が発揮できず、パワー不足は否めません。

 分かりやすいのが《牙長獣の仔》です。最初に繰り出すカードだとしても2/2の熊として及第点です。対戦相手は返しのターンで相打ち要員を準備することは簡単ですが、他のエネルギー生成源があれば3/3で殴りに行くことができ、一方的なゲーム展開すら可能です。ただし一部のデッキでは、すべて同じプールから費やされるエネルギーの総量が過剰になることがあり、供給過多に陥ることもあります。エネルギーはデッキのメイン戦略として優れているものの、他のメカニズムと同様に、使用する側、供給する側のバランスを調整することが重要です。プールの全容が見えない状態ではバランス調整に翻弄されることになるでしょう。そのため、多くの場合はデッキの副次的要素として活用していくことになります。

2.機体

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 機体は、「搭乗X」と書かれたXの値以上のパワーを持つクリーチャー1体か、合計Xとなるクリーチャー群(2体以上)の組み合わせをタップすることで、アーティファクトクリーチャーに変化します。「カラデシュ」リリースは車両整備に興味はありませんでしたが、今では私も大人になりました。

 非常に興味深いのは、機体がデッキ構築を難しくすることです。多くのプレイヤーはクリーチャーとしてカウントしたがりますが、実際は1体または数体、他のクリーチャーをタップすることではじめて機能します。そのため、実際は装備品のような感覚で運用します。とはいえ、クリーチャーを増強する代わりに(アンタップしている)頭数を減らすことになるので、搭乗時に他に何もできないクリーチャーを活用できる、というのが機体の一番の価値なのです。

 機体にはソーサリースピードの除去が当たりませんし、他のクリーチャーも除去に対応して搭乗が可能なので、インスタントスピードの除去を強制しますが、実際は機体をアクティブにするためのクリーチャーが十分いるかどうかに依存します。デッキの構成を考えた際、クリーチャーカウントとしては0.5体分と数えるのがよさそうです。《ボーマットのバザール船》のようなカードはまだかなりマシな方で、実際は「搭乗3」のハードルはかなり高いということが、ゲームを通じて理解できるでしょう。幸いなことに「カラデシュリマスター」には、戦場を小粒なトークンで埋め尽くす手軽な方法もあるのです。

3.製造

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 製造Xを持つクリーチャーは、戦場に出たときに「このクリーチャーの上に+1/+1カウンターをX個置く」か「1/1の霊気装置・アーティファクト・クリーチャー・トークンをX体生成する」を選ぶことができます。製造持ちは白に多く、またトークンを生み出す方法もいくつか持ち合わせていますが、緑と黒にも若干枚ずつ存在します。青と赤にまったくそうした要素がないわけではなく、1/1の飛行機械トークンを生み出すサブテーマがあります。製造はどちらのモードにも有用性がありますが、トークン生成のほうが多くのシナジーが期待できます。トークンは機体の搭乗コストに充てることができるほか、ミラディンの「親和」をなぞらえた新メカニズムをパワーアップさせてくれます。


4.即席

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 即席は「召集」のアーティファクト版で、即席を持つスペルは、アーティファクトを1枚タップするごとに無色(1)だけ軽くなります。赤、黒、青は即席持ちが多く割り当てられています。エネルギーと同じく、即席カードの価値は、実際に即席でどれだけコストを軽減できるかに依存します。このセットにはアーティファクトトークンの生成が非常に多く、即席カードは非常に優れています。元のコストは割高ですが、1つでも軽減できれば割安に、2つ以上軽減できればかなり優れたカードになります。このセットのアーティファクトトークンは八面六臂の活躍ですが、まだまだ活躍できます!


5.紛争

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 紛争(当然ですが「霊気紛争」から導入されたメカニズムです)は、戦場を離れるパーマネントがあった場合に見返りを得られる能力です。「カラデシュリマスター」ではかなりの紛争持ちが非収録となりましたが、白と黒にメカニズムが息付いています。リミテッドではリソースを失うことはかなり不利な行為ですが、「紛争」持ちカードはそれを埋め合わせてくれます。しかしそれを確実に行うことができない限り、非常にプレイが厄介なカードになります。紛争のあるカードが存在するフォーマットで、一見不利な攻撃を行ってくる場合は、間違いなく危険信号です。おそらく「紛争」持ちで大きなアドバンテージを想定しているでしょう。白黒のカラーリングには、対戦相手の行動に関係なく紛争条件を満たせるカードがあり(《秘密の備蓄品》など)、一方で《造命物騎兵》などは紛争せずに4/4でも十分プレイに値します。
 白黒紛争のようなコアなアーキタイプを紹介する前に、このフォーマットの概略をお伝えしておきましょう。

■環境理解

1.アーティファクトが多い

 カラデシュリマスターにおけるアーティファクトの比率は20%で、ゲームにおいて最もよく見るカードタイプになるでしょう。ゲームにおいて様々なシナジーや見返りがあり、そしてヘイトカードからの攻撃を受けることでしょう。

2.除去の重要性は薄い

 除去はリミテッドでは有用だというのが定説ですから、この主張はどうかと思われるかもしれません。しかし、トークン生成や活用が活発に行われる環境下では、特に単体除去は有効ではありません。ただし、複数のクリーチャーに効果が及ぶものや、ボードをクリアする効果は、この環境では重宝するでしょう(全体-1/-1修正でさえ!)。

3.飛行持ちがとても多い

 1/1の飛行機械トークンがゲームを終わらせるようなリミテッド環境もありますが、「カラデシュ」には普段より多くの飛行持ちが存在します。つまり、飛行クリーチャーを止めるプランを持たないプレイヤーは、赤子の手をひねるように負けてしまう可能性があります。

4.クリーチャーは「価値」重視

 基本的なスタッツは良くないものの、即席、エネルギー、紛争、等々の様々なメカニズムでアドバンテージを得られるクリーチャーが重視されます。というのも……

5.低速環境

 リマスターされたバージョンは、マナカーブ穴埋め用のクリーチャーが多くカットされたように見えます。そのためいわゆるアグロ戦略が取りづらくなりますが、そうでなくても低速環境だと予想するのに十分な理由があります。ほぼすべてのメカニズムが「下準備」を必要とするのです。
 その中でも最たるものは機体です。機体はプレイタイミングにおいて「テンポ損」であり、そのターンの投資を後々穴埋めできることを期待してプレイするのです。
 エネルギー、即席、製造、紛争については、加速度的なマッチアップを生み出す可能性のあるシナジーがなくはないですが、これらのメカニズムはすべて、(機体のように明らかなテンポ損はなくとも、)テンポを一手遅らせる必要があります。
 後ほど挙げるアーキタイプからも分かるように、いくつかは横展開も得意だったり、回避能力に秀でている面もあるため、アグロデッキが存在しないというわけではありません。しかし、相手の初動を耐え、より遅い勝利に向けて進むことができれば、各種メカニズムで大量のアドバンテージを得ることができます。

 さてここからは、「カラデシュリマスター」で各色の組み合わせがどのような異なる戦略を立てやすいのか見ていきましょう。

■アーキタイプ

 この項では、セット内での2色の組み合わせと、そのテーマについて説明していきます。各アーキタイプで主要戦力となるキーカードについても挙げていきます。

 しかし、「カラデシュリマスター」はややトリッキーなセットです。各色が、様々なメカニズムのテーマでデッキを構成していくため、実際は、各アーキタイプにおいて進むべき方向性がひとつ、というわけではないのです。環境として面白いとは思いますが、アーキタイプを突き詰めて、カードの優先順位を決定していくのは非常に困難です。

 今回は、各アーキタイプでのベストコモン、ベストアンコモンカードを挙げていくに留めますが、将来的には今後の記事で、各アーキタイプについて多くの知見を述べていければと思います。現段階(プレビュー段階)では、各色の組み合わせが最も良くサポートできるデッキについて検討していければと思います。


▼アゾリウス(白青):飛行、アーティファクト

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 このアーキタイプは古典的で、飛行戦力を展開しながらアーティファクトシナジーでアドバンテージを得つつ、こつこつ殴って勝利するコントロール風のデッキになります。メカニズムに基づいたバリューを生み出す方法はたくさんありますが、青と白のどちらも飛行戦力が充実していて、基本は空から攻める戦略になります。製造、エネルギー、アーティファクトによるシナジーに事欠かない色でもあります。白青は「カラデシュリマスター」(※)で有力な色のひとつでしょう。

(※訳者注:原文は"Zendikar Remastered"となっていますが、原文の流れからジャッジし修正しています)

▼オルゾフ(白黒):紛争、生贄/再利用

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 この2色の組み合わせは最も紛争に寄せやすい色で、戦場を離れるパーマネントからアドバンテージを生み出す方法がいくつもあります。結果として、この2色の組み合わせは大体にして「ごちゃごちゃした」プレイをすることになりがちです。おそらく、黒の生贄をアーティファクト(大体は製造で生み出されたトークン)で賄う戦略が主流になるでしょう。紛争はリミテッドでも達成しやすい優れたメカニズムで、毎ターンアドバンテージを得ることも不可能ではありません。ただし、ターン終了時に誘発する効果は、ターン内に何かを仕掛ける必要があり、対戦相手に依存する傾向が強いため、取扱注意です。

▼ボロス(赤白):横展開、機体

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 機体はすべてのアーキタイプで使えますが、赤白は最もうまく活用できる色です。機体はアグロにとってどのように考えるべきでしょうか。クリーチャーを拘束して機体を動かすため、そのクリーチャーと一緒に攻撃することはできません。一方で、召喚酔いのクリーチャーも機体に載ることができるので、マナカーブ通りに展開することで、機体のテンポ損を生みださない戦い方ができるかもしれません。加えて、ほとんどの機体は優れた効果や回避能力を持っていて、他の方法では為し得ない攻撃を可能にします。機体がどの程度攻撃を続けられるかは異なりますが、アグロプランに噛み合うことは間違いありません。最初に述べたように、クリーチャーを横並べして殴って勝つプランも見越して、クリーチャーを可能な限り採用することが肝要でしょう。

▼セレズニア(緑白):一点突破、あるいは横展開

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 緑白は最も定義しづらいアーキタイプです。いつものように、クリーチャー中心のアーキタイプではあるものの、白と緑の両方が製造持ちを備えていて、小型クリーチャーの面展開で押す方法も、ダメージ体制を高めて単一のクリーチャーで一点突破する方法もとることができます。《品種改良の力》はその点をどちらに転んでもサポートしてくれるカードだと思います。また、エネルギーや紛争にもアクセスすることができ、サブテーマとして様々なカードを採用できる可能性があります。

▼ディミーア(青黒):アーティファクト

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 すべての色の組み合わせを見た際、青黒はアーティファクトによる恩恵を最も享受できるカラーリングです。全体的なコストパフォーマンスはそこまでよくないものの、セットには非常に多くのアーティファクトが含まれていて、アーティファクト参照カードをアクティブにするのは容易です。たくさんのアーティファクトを並べることで、青と黒が使える即席呪文も強化されます。このアーキタイプの出来栄えは、ピックできる(もしくはパックから出る)アーティファクトの質に大きく依存します。中途半端なアーティファクトをデッキに組み込むことを正当化できるほど、アーティファクトによるボーナスの恩恵は大きくありません。しかし、十分なアーティファクトと即席持ちのスペルを見つけられれば、青黒は本当に強力な色の組み合わせになるでしょう。いつものように、非常に強力な除去を主軸にしたコントロール戦略をサポートする色でもあります。

▼イゼット(青赤):飛行機械、即席

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 この組み合わせは製造持ちが使えませんが、それでもイゼットはアーティファクトクリーチャーを生み出すことができます。大型フライヤーは飛行機械の攻撃を止められますが、青赤はそうした小型飛行持ちをサポートするための効率的な除去とユーティリティカードに恵まれています。展開したアーティファクトは、即席呪文を唱えるのにも役立ちます。十分なバリューがあれば、青のエネルギーをセッティングすることもできますし、機体もクリーチャーの質が弱い部分をサポートしてくれます。この2色では、大型クリーチャーへの対処が非常に難しい色ではありますが、いわゆるヒストリックリーガルのセットはクリーチャーが直近のセットよりは強くありません。対戦相手がいつも4マナ4/4を出してくるわけではないのです。

▼シミック(青緑):エネルギー

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 シミックは純粋にエネルギーギミックに特化していて、青と緑はそれぞれメカニズムの主要な色となっています。エネルギー関連のカードを見つけることは当然として、それ以上にエネルギー供給と消費先のバランスをうまく整えることが重要になります。大量のエネルギーを蓄積したのはいいものの、使い道がないとフラストレーションがたまってしまうでしょう(逆も然り)。供給が多過ぎると、どこを中心に攻めればいいのか分からなくなってしまい、かえって面倒になってしまうこともあります。それでもエネルギーは随一の強力なメカニズムであり、特にドラフトにおいては、卓1の青緑エネルギーはとてつもない強さになるでしょう。ただしうまくテーマに沿えない青緑は、ただの重めなクリーチャーの山になってしまう可能性があるため、決め打ちは厳禁です。

▼ラクドス(黒赤):アーティファクト

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 ラクドスはこのセットでは異端です。製造、即席、紛争といったツールで、小型のアーティファクトクリーチャーを使って攻めていく形になるでしょう。他の環境よりは赤黒は遅めのセットになりますが、それでもクリーチャーで毎ターン攻撃し続けるための除去には恵まれています。オルゾフ(白黒)同様に「ごちゃごちゃした」アーキタイプであり、時間経過とともにアドバンテージを得ていくタイプのデッキになるでしょう。
 遅めのデッキはカードアドバンテージに長けており、このデッキが上手く機能するようになる可能性は低いと思いますが、そのうち(ラクドスの立ち位置がどうなっているか)分かるでしょう。このカラーリングは除去から入ることが多く、そして先にも述べた通り「カラデシュリマスター」は除去が重要なセットではない、ということを合わせて考えると、このセットのラクドスは少し立ち位置が悪いと思います。

▼ゴルガリ(黒緑):製造

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 ゴルガリは「製造」を軸にしたアーキタイプが成立しますが、1/1を製造していくのではなく、+1/+1カウンターを追加することでバリューが得られるようになっています。ほとんどの黒緑デッキは(最近)そうしたテーマを持っていますが、その結果、どの色より巨大なクリーチャーを生み出すことができます。トランプルと警戒によって、戦場に蔓延る1/1に対して強く出ることができるのが利点ですし、この色はそうした小型クリーチャーを一掃する全体除去もいくつか含まれています。この色に進む場合は、そうした気持ちよい展開をするため、黒の除去を高めに見積もることが大切だと思います。

▼グルール(赤緑):ミッドレンジアグロ

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 やぁ、ほとんどいないと言ったはずの4マナ4/4のみなさん! 赤緑はいつもと変わらず、レシオに優れた生物を除去とパンプスペルでサポートします。ここでもエネルギーは重要な要素になります。赤緑はこのセットにおいて堅実なアーキタイプだと思いますが、多くの厄介事があります。
 このフォーマットの黒緑や赤緑といった大型クリーチャーを含むデッキのアキレス腱は「カードアドバンテージを取る方法がない」という点です。十分なクリーチャーを送り出し、良いマナカーブで展開していく必要性を見出すことは難しいのですが、メカニズムに特化したデッキやパワー不足の飛行戦力を擁するデッキに対して、マナカーブ通りの展開をしていくこと自体は非常に有効な戦略ではあるのです。

 アーキタイプについては以上になりますが、以下にシールドにおける解説と、リミテッドのデッキ戦略に応じたマナカーブの構築方法について解説していきたいと思います。


■シールドにおける戦略

 大切なことを言い忘れました。シールドのプールをどう活用すればいいか、戦略を立てていきましょう。アーキタイプを決め、強力なシナジーを形成することは重要ですが、それよりもなお重要なのは、しっかりとしたデッキ構成と、マナカーブを整えることです。
 以下、適切なマナカーブと構成を決めるのに役立つガイドラインを挙げますが、いくつかの点にご留意ください。

・まず、シールドでプレイを決定する要素は「ボム」です。色ごとにカードを仕分けて、プレイしたいカードを選んでいきましょう。こうすることで、どの色が協力か分かります。

・次に、シールドでは3色でも問題ありません、色が固定できなくてもOKです。その理由は、ドラフトよりもゲーム展開がはるかに遅いためです。そのため、特定の色マナ不足に陥っても、ゲームがそのまま終わることはありません。

・最後に、環境が遅いので、よりマナコストの重いものをプレイして、土地を18枚採用すると、一部のプールにおいては動きが良くなるでしょう。裏を返せば、アグロプランに優れたプールに恵まれ、それをうまく組み上げられれば、そのデッキは非常に強力になるということです。


一般的な構成:
 クリーチャー17枚
 非クリーチャー6枚
 土地17枚
 
マナカーブ:
 1マナ域:0~2枚
 2マナ域:5~8枚
 3マナ域:5~7枚
 4マナ域:2~6枚
 5マナ以上:0~4枚
 マナカーブによらないカード:2~6枚


 さて、この大筋通りに組んだ場合、23枚の呪文がデッキに入ることになるので、理にかなった構築になります。マナカーブの概念を示していて、この大筋に従えば、マナコストは曲線を形成します。カードの多くは2~3マナで、そこから徐々に枚数が減っていきます。
 ここで重要なのは、マナカーブは「そのターンに実際にプレイする」という点に基づいて計算する必要があります。したがって、コンバットトリックや打ち消しは、最後の「マナカーブによらないカード」に分類しましょう。

▼アグロ

 このデッキはゲームを早く終わらせたいと思っていて、マナカーブが低く、土地が通常より少ないハッピーなデッキです。2マナ、3マナとテンポよく展開することに非常に重きを置いた「カーブアウト」の展開可能性を最大化するために、2マナ域と3マナ域を多く持つことを意味します。次のような構成になります:

構成:
 クリーチャー17枚
 非クリーチャー7枚
 土地16枚
 
マナカーブ:
 1マナ域:1枚
 2マナ域:8枚
 3マナ域:7枚
 4マナ域:2枚
 5マナ以上:0枚
 マナカーブ外:6枚


 マナカーブ外のスペルは除去、またはコンバットトリックを優先すべきです。この手のスペルは、対戦相手がクリーチャーを展開して、そのクリーチャーがこちらより強くても継続して攻撃できる原動力になります。アグロデッキは手札を早期にダンプして、対戦相手が手札を使い切る前にゲームに勝つのが理想です。これは、アグロデッキが疑似的に生み出せるカードアドバンテージなのです。
 アグロのもう一つの形は「回避系」です。飛行、あるいはブロックされないクリーチャーで、ゲーム後半においても継続的に攻撃をし続けます。さらには、スペルや能力によって直接ダメージを与えることで勝利を目指すパターンもあります。アグロデッキはこうした手段を組み合わせ、序盤はウィニーでダメージを与え、後半は回避能力や直接ダメージでフィニッシュする、というのが理想的です。「あと一歩」を与えてくれるツールは、対戦相手の動きが安定している場合にもアグロデッキが勝つ方法として、リミテッドで重宝する内容です。


▼コントロール

 アグロの対局に位置するコントロールは、カードアドバンテージを生み出す、加えて(または)マナコストが重いものの強力な呪文を利用するために、ゲームを長引かせたいと考えています。アグロデッキが序盤で最も強く、その後次第に弱体化するのに対し、コントロールデッキは時間の経過とともに強度を増していきます。コントロールデッキは通例、クリーチャーのプレイは少な目で、マナカーブが高めにシフトします。サンプルでは次のような構成になります。

構成:
 クリーチャー13枚
 非クリーチャー10枚
 土地17枚

マナカーブ:
 1マナ域:0枚
 2マナ域:5枚
 3マナ域:6枚
 4マナ域:4枚
 5マナ以上:3枚
 マナカーブ外:5枚


 クリーチャーが少ないアーキタイプではコンバットトリックの重要性が低いため、マナカーブ外の呪文は主に除去と打ち消しである必要があります。(コントロールとはいえ)かなりの数のクリーチャーが必要で、一貫性を持たせるために十分な2マナ域、3マナ域が必要であることにご注意を。この構成にすることで、コントロールはアグロと歩調を合わせ、ゲーム終盤で強力な呪文を唱えることで最終的に戦場を支配します。
 コントロールデッキは通常、強力なクリーチャーでゲームに勝つことが多いのですが、ライブラリーアウトや、対戦相手の手札を枯らすことで勝つこともあります。この手のコントロールデッキは、さらに少ないクリーチャー枚数で勝ち切ることができます。
 しかし、コントロール初心者のプレイヤーがしばしば犯す間違いとして、勝ち手段が少なすぎる、というものがあります。対戦相手を妨害したり、カードを引いたりするために多くの呪文をプレイし、いくつかのボム生物で対戦相手を倒す、というシナリオは合理的に思えます。しかし、対戦相手がこちらのボムを除去してきたら、勝てない状況に陥ってしまいます。デッキの種類に関係なく、デッキが「いつ、どのように」ゲームに勝つのかをイメージし、そのためにお膳立てをする必要があるのです。

▼ミッドレンジ

 ミッドレンジはアグロとコントロールの中間に位置するデッキです。通常、中程度のマナカーブを有します。ミッドレンジはコントロールデッキを上回る脅威を十分に有していますが、アグロデッキをわずかに上回るクリーチャーと呪文をプレイしていきます。すべての戦略において、専用のアグロまたはコントロールを構築するのに十分な要素を用意するのはほとんどのカード群では不可能に近いため、ほとんどのリミテッドデッキがミッドレンジに属することになるでしょう。ミッドレンジのサンプルを作成しても、非常に多くのバリエーションが考え得るため、多く差異が出ることから、ここで紹介する意味はありません。


■結論

 本稿が今後のリリースイベントの良い手引きとなることを願ってやみません。参加される皆さんのシールドプールが良い内容でありますように、そして引く土地の数が適切でありますように!

 このセットから私のTwitchストリームを復活させようかと思っています。最近は配信や動画投稿を少しお休みしていましたが、この新しいセット(に類するもの)で配信に戻るのが楽しみです。多くのイベントをプレイして、メタゲーム、そして有力なアーキタイプ、それをサポートするコモン・アンコモンを記したドラフトガイドを探してください。

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