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【パイオニア環境分析】相棒ルール変更によるアーキタイプ別影響予想

■はじめに

 この記事を読んでいる方は須らく、6/1の禁止改定告知についてはご存知かと思います。スタンダードとヒストリックで禁止カード2枚が生まれた他、「相棒」に関するルールが変更となりました。

【新しい相棒ルール】
 各ゲーム中に1度だけ、あなたはソーサリーを唱えられるとき(あなたのメイン・フェイズの間でスタックが空であるとき) に(3)を支払うことでサイドボードからあなたの相棒をあなたの手札に加えることができる。これは特別な処理であり、起動型能力ではない。

 スタンダードからヴィンテージまでを支配し尽くし、この禁止改定に先立ち5/18にヴィンテージ、レガシーで禁止となったカードもありますが、メカニズムの変更に伴い全てのフォーマットが影響を受けることになりました。

 本稿では、パイオニアの各デッキにおいて影響が出るかどうか、また、環境全体で影響があるかどうかを見ていきたいと思います。

■影響度一覧

 各アーキタイプ(MTGOで5/14~5/25開催のプレミアイベントで入賞したもの)についてそれぞれ記載しています。

*レベル0(ほぼ影響なし)
 ディミーアインバーター(コンボ型)、ロータスブリーチ、スゥルタイ昂揚、ジェスカイファイアーズ、アゾリウスコントロール、緑単PW、バントスピリット
 
*レベル1(影響は軽微で、アーキタイプは存続)
 ヘリオッドコンボ、ボロス英雄的、5色ニヴミゼット
 
*レベル2(影響が大きいが、アーキタイプは存続し得る)
 魂込め、ゴルガリ鱗、アブザンラリー、オルゾフオーラ
 
*レベル3(影響は大きく、アーキタイプがとしての存続が危うい)
 ボロスアグロ、オルゾフ星座、シミックジャイルーダ、ジャンド昂揚、オボシュレッド、オボシュブラック

■個別解説

*レベル0、影響なし

・ディミーアインバーター(コンボ型)
 前回の記事で書いていますが、60枚型(ヨーリオン非採用)が再び主流になっていて、60枚型への影響はありません。

・ロータスブリーチ
・スゥルタイ昂揚
・緑単PW
・バントスピリット
・青単テンポ

 もともと採用できる相棒がなかったため、影響がありません。

・ジェスカイファイアーズ
 パイオニアは《創案の火》が使えるままで、ヒストリックでさえ禁止になった《ルーカ》+《裏切りの工作員》パッケージも健在です。ヨーリオンの使用も、《創案の火》さえあればまったく影響ありません。ほぼそのままの形で継続使用可能です。

・アゾリウスコントロール
 ヨーリオン型が主流ですが、以前の形に戻すこともできますし、そもそもアゾリウスコントロールは5Tヨーリオンが正着となるパターンは少ない方なので、そのままヨーリオンを採用し続ける形が現実的です。

*レベル1(影響は軽微で、アーキタイプは存続)

・ボロス英雄的
 2マナ域のリアニメイトができなくなり弱体化はしますが、そもそも以前は《フェザー》の枠であり、《フェザー》採用型に戻るでしょう。キルターン自体はルールスの有無で変わりません。《一心同体》という新たな強化パーツの加入も見逃せません。

・5色ニヴミゼット
 ヨーリオンによるアドバンテージ確保はできなくなりましたが、そもそも《ニヴ=ミゼット再誕》さえ着地すればアドバンテージ稼ぎ放題のため、影響は比較的軽微と見ています。

・ヘリオッドコンボ
 ヨーリオンによるコンボパーツ収集やアドバンテージ獲得はできなくなりましたが、もともとのビートダウン性能が高く、そこまでの影響はありません。前のめりな構成にシフトすることで、メタ次第では生存すると思います。


*レベル2(影響が大きいが、アーキタイプは存続し得る)

・オルゾフオーラ
 ルールスによる《命の恵みのアルセイド》無限リアニによる除去無効化戦略が使えなくなりました。しかし《ルールス》自体をメイン投入してしまえば解消しますし、入れない場合も以前の形に戻るだけです。デッキは弱体化しますが、GP名古屋を準優勝するだけのポテンシャルはもともとあり、アーキタイプとしては存続します。

・魂込め
 さすがにルールスで《魂込め》を墓地から釣る動きはやりすぎでした。しかし、《技量ある活性師》を採用できないせいで安定性を損ねていた部分もあります。元々のイゼット魂込め型、オールイン型など、いくつかの選択肢の中から選ぶ形に戻るでしょう。《モックス・アンバー》型は安定しないため消滅しそうです。

・ゴルガリ鱗
 実はアーキタイプ的には影響がありません。ルールス以上に《オゾリス》の加入が大きく、継戦能力が高まりました。一線級の活躍が見込めるレベルを保ち続けています。元々使用者が少ないので、通好みのデッキという立ち位置は変わりませんが……。このアーキタイプはX呪文の利用メリットが大きいため、《ルールス》メイン投入も十分検討できます。自分が組むなら《進化の飛躍》を使用する前提で、メイン2枚採用から調整を始めます。

・アブザンラリー
 こちらもゴルガリ鱗同様、ルールス以前に《職工の悪鬼》の加入が大きく、コンボパーツを揃える役割を担いながら素殴りの打点を稼ぐことができるようになり、「イコリア」で強化されました。弱体化はしましたが、まだまだ使用に堪えると思います。《集合した中隊》などでコンボパーツを集める形にシフトするのも面白そうです。

*レベル3(影響は大きく、アーキタイプが消滅)

・ボロスアグロ
 継戦能力が大きく落ちました。ルールスを失いボロスにする理由がなくなったため、《変わり谷》《ラムナプの遺跡》有する赤単に回帰するでしょう。《エンバレスの宝剣》も堂々と使えます。ボロスにするなら英雄的の《フェザー》のような強い動機が必要です。

・オルゾフ星座
 ヨーリオンへの影響は限定的と思いきや、特定のマッチにおいて「5Tヨーリオン」に強く依存するアーキタイプなので、おそらく今後使っていくのは厳しいと思います。特にビートダウン相手に5T《野望の試練》ブリンクが封じられたのはかなりの弱体化です。

・シミックジャイルーダ
 こちらもオルゾフ星座同様、「4Tジャイルーダ」が確定しなくなったため厳しくなるでしょう。2→4→6のジャンプアップの合間に(3)を支払う暇はありません。1Tの猶予はパイオニアでは致命傷です。《貪欲なチュパカブラ》あたりをガン積みしたミッドレンジとしてなら生存可能性はあるのでは、と思いますが……。

・ジャンド昂揚
 《クロクサ》パッケージを失ったのは痛手です。その意味では、ルールスを一番うまく使用していたアーキタイプなので、自然と消滅する形になりそうです。《血編み髪のエルフ》レベルのアドバンテージ獲得源があれば話は別ですが、スゥルタイ昂揚の派生としてたまに見る程度まで減少すると思われます。《ウーロ》には勝てなかったよ。

・オボシュレッド/オボシュブラック
 任意のタイミングで繰り出せるオボシュの強みがなくなったため、単純な赤単/黒単に帰結します。本来、赤単や黒単の2マナ域には必須パーツ(《稲妻の一撃》《屑鉄場のたかり屋》)があり、これを捨ててまでオボシュに拘る必要はなくなりました。

■相関図を作ってみました

 図で表すとこんな感じです。

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 一番使われていたヨーリオン各種については、アゾリウスコントロールやジェスカイファイアーズにおいて、今回のルール変更における影響はほぼありません。5ターン目に《ヨーリオン》を唱えることを目的としていないからです。引き続きトップメタの一角として生存し続けるでしょう。

 一方、ルールス各種は目に見えて弱体化します。ボロスアグロはほぼ解体、赤単へ回帰するでしょう。また、オルゾフオーラや魂込めなど、恩恵に与っていたデッキほど落差は大きそうです。しかし、「イコリア」で追加カードを得たボロス英雄的やゴルガリ鱗は、構成を変えながら生き残ると思われます(そこまで使用率は高くありませんが……)。

 ボロスアグロの弱体化を受けて、コンボの勢いがさらに増しそうです。具体的にはディミーアインバーター、ロータスブリーチの二強が予想されます。《大歓楽の幻霊》が抑止力となっていただけに、環境直後はコンボの使用率が極端に増加すると思われます。

■新たなデッキの予感

・赤単アグロ
 環境変更直後の大本命。ボロスアグロ無き後の《大歓楽の幻霊》デッキは赤単色になりそうです。《灰の盲信者》や《大歓楽の幻霊》、「8ラブル」からの《エンバレスの宝剣》などキルターンが早く安定します。以前の形になったことで《至高の評決》などのスイーパーへの耐性も高くなりました。

・バントランプ
 トップメタがコンボになりそうなので《時を解す者、テフェリー》を使うデッキが強くなりますが、《創案の火》以外のマナランプ戦略として台頭しそうなのがバントランプです。《ルーカ》+《工作員》コンボへの対抗策が見つけられるかどうかがカギになります。

・ウィノータ
 スタンダード、ヒストリックで大暴れのウィノータはパイオニアでも存在します。マナクリからの8ラブルという基本筋が確立されている上、《アングラスの匪賊》に加え《毅然たる刃の達人》《爪の群れのウルリッチ》などのニッチな専用カードも。《異界の進化》を使って《ウィノータ》を出すことができるのでナヤカラーで組め、ヒストリックに比べマナベースも安定しています。ひょっとしたら流行る……かも?

■TL;DR

■終わりに

 相棒の強さが是正され、「使ったもん勝ち」とは言えなくなってきました。環境初期は2週前と同様、コンボデッキが猛威を振るう予感がします。とはいえ、今まで不利だったバントスピリットやスゥルタイ昂揚といったデッキにも活躍の兆しが見えており、環境は一気に面白くなりそうです。

 各地でもカードゲームショップが少しずつ営業再開に向け動き出しています。その際は、ぜひ新環境のパイオニアで遊んでみてください!

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