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オンライン授業:教員vs一人ひとりの学生

こんにちは。教員の中村嗣郎です。ようやく対面方式で始まった東京経済大学の授業も、3回目の緊急事態宣言が発令され、2020年度と同じように、全面的にオンライン授業となってしまいました。オンライン授業はつまらないのでしょうか。今回は、私が2020度に担当したオンライン授業のいくつかを振り返ってみます。第1学期は「現代言語学」(180分)、第2学期は「比較文化論」(90分)と「英語学概論」(180分)を受け持ちました。​​

第1学期は、いきなりのオンライン授業で、通信環境が整わない学生や小さい画面のスマホで授業を受けざるをえない学生もいました。そこで、紙媒体的なスライドのファイルと別に録音した音声ファイルを準備しました。動画に比べ、容量が小さくて済むのです。

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オンライン授業の利点は、正規の授業時間に縛られず、締切を守れば、好きな時間に学習できることです。朝9時に始まる授業でも、朝7時にファイルをアップすると、8時頃にはファイルにアクセスしている学生もいました。時間割に縛られた勉強方法に、遠隔授業は疑問を投げかけたとも言えます。

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第2学期は、学生の通信環境も整ったので、動画を多用したオンライン授業にしました。「英語学概論」は、パワーポイントと音声を合わせた動画ファイルを使用しました。関連する動画を差し込み、見ていて飽きない授業を目指しました。ちなみに、音声はAITALKというソフトウェアを用い、文章をナレーションに変えました。

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100人や200人の規模の講義になると、学生同士で議論したりする時間はほとんどありません。その意味で、講義形式の授業は、教員対一人ひとりの学生の間のやり取りだと私は従来から考えて来ました。とは言え、同じような遠隔授業ばかりでは、学生も退屈してしまうでしょうから、「比較文化論」では、ちょっとだけ遊び心を加えました。実際に学生がどう感じたかは不明ですが、動画を他の受講生と見ているような画面にしました。

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例年であれば、動画を中心に見せ、学生に何かを感じ取ってもらうことを狙いとしています。唯一の正解はなく、あれ?というような違和感を覚えたり、自分とは違うやり方があるんだと思ったりしてくれればいいと思っています。その時々の話題も取り入れることもします。2020年度で言うと、BLM(Black Lives Matter)や韓国の世界的アイドルグループBTSを取り上げました。後者については、金 成玟著『K-POP 新感覚のメディア』の内容に沿って、K-POPの流れを追いました。

オンライン授業を可能にしたのは、今までのさまざまな技術があったからです。例えば、K-POPについては、YouTubeで実際のアーティストの歌を聴くことができました。また、インターネットやコンピューターが果たした役割については、とても感謝しています。(私が大学生のときに同じような状況だったら、大量の課題が郵便で届き、手書きでレポートを書くだけに終わったでしょう。)さらに、ZoomやCeVIO Creative Studioなど、無償で教育に力を貸してくれた企業などがあります。

オンライン授業がつまらないというのは嘘で、同級生や先輩・後輩たちと会えなくて寂しいというのが本当のところだと思います。オンライン授業は、今までの教育や教育機関のあり方を考えさせるきっかけになったと思います。いい部分は積極的に取り入れ、どうすれば効果的な教育を実現できるかが私たちに求められているのではないでしょうか。

最後に、「比較文化論」の背後にある参考図書を紹介して終わることにします。
ジャレド・ダイアモンド『危機と人類』
ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』
スティーブン・ピンカー『21世期の啓蒙』
どれも読むのに時間はかかりますが、どれも読み甲斐があります。(3冊目はいま読んでいるところです。)

(中村嗣郎)


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