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魔術師は呪詛を殺す

 6世代前は626人いた魔術師のうち、現在まで生き延びた者は6人だった。これは驚くべきことではないが、悲しむべきことだ。こんなことを繰り返していれば魔術師の絶滅は近いだろう。
 それもこれも大光殺蠧法とかいう呪詛返しを繰り返している間に呪詛が自然と弱まるんじゃないかいうクソくだらない対症療法を思いついた6世代前の魔術師が悪い。大光殺蠧法はめんどくさくて間違いやすく、その上呪詛が飛んでくるまでに素早く完成させて呪詛を打ち返さないといけないのだから失敗して呪いが爆裂し、全身緑解だの骨髄灰化だのという死に方をしたあげく死亡時の念を吸って呪詛が強化されるはめになり、次の返しがさらに難しくなる。
 あほくさい呪詛のピンポン勝負をしたあげく大半が死んだ6世代後の魔術師、つまり俺たちは呪詛が彼方に飛んでいってからこちらに帰ってくるまでの1週間の猶予で対症療法をやめることにした。
 つまり呪詛を飛ばした人間を殺して根本を断つのだ。
 もちろん、誰がこの呪詛を飛ばしたのか俺たちはよく知っている。大毛羽権現大師だ。1400年前のこの人物は摩訶変解仏降臨法なる儀式を行った。呪文の詳細は禁術とか抜かして歴史から抹消されている。そんなことを決めた連中は薄らバカとしか言えない。俺たちがせっぱ詰まっているのに解呪のヒントすら奴らは伝えなかったのだ。
 ともかく摩訶変解仏降臨法の際に彼はミスったのか6世代前の魔術師にマジで切れたのか不明だがとにかく呪詛をぶっ放した。最大レベルにやべえ呪詛は爆裂すると共に次々魔術師を殺しながら魔術師間を渡り歩き、バカ先祖が大光殺蠧法でぐずぐずしてる間にどんどんパワーアップしてきたのだ。
 問題は、大毛羽権現大師なる人物は死んでいるため、そいつを一度蘇らせてから殺さなければならないという点だ。しかも、俺たち魔術師は今まで誰も死者蘇生に成功したことがないのだ。
【続く】

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