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クリスマスカードを書く時に。

子どもの頃、報道記者をしていた父には、毎年、年賀状が10cmくらい来ていた。

年末は仕事が忙しかったのか、父はお正月が過ぎてから一枚一枚に返事を書いていた。私も父の年賀状を見るのが好きだったし、お年玉番号を整理しながら調べるのも楽しかった。

そう言えば、昔、年賀状を作るおもちゃみたいな道具があったよね。バチッ!!!と電球でフィルムにデザインを焼いて、チューブに入ったインクで好きなように家庭で印刷できるやつ、ああ。プリントゴッコ。思い出した。あれは大好きだった。今調べてみたら、2012年に完全販売終了したらしい。コンピュータとプリンターにその役割を取って代わられたようだ。

さて、イギリスのカード文化もいいもんだ。誕生日カードをはじめ、記念日カード、卒業、転職、引っ越し、病気や怪我をしたときの Get well soonカード、身近な人を亡くした人に送る Sympathy - thinking of you カード。ペットの犬をなくしたとき用のカードなんかもある。

カードのデザインはほんとに多くて、スーパーやカードやさんにデザインの回転も良く賑やかに並んでいる。大体の人は、適当に買ってあったカードを使うというよりは、一回一回その人に合ったカードをわざわざ選んで買っているようだ。母がなくなって、初めてお悔やみカードをもらった時には、ああ、私にもとうとうこれが来たか、と思ったものだ。でも一つ一つ、心のこもったカードだった。

アメリカ人の旦那は、カードにはただサインをすればいいと私に教えた。彼は良くて I love you とか Happy birthday にサインを添えて書く。それをしばらく信じていた私は、カードはきれいだしメッセージも既に印刷されている。簡単でいいわね、と思っていた。というより実は旦那はむしろカード選びに重きを置いているのだが。

しかししかし、今の私の周りにいる人から贈られるカードには、もっと温かい思いがあって、多くのカードには大抵一言書かれている。女の人に多いとは思われるが。やっぱり各人の書字を見るのは楽しいし。もちろん選ぶカードにもその人らしさがうかがえるが、中の一言はちゃんと読まれている。

ちょっと話がそれるが、長女が中学校を卒業したときには、先生と生徒がカードを贈り合っていて、長女はそれを書きながらちょっと泣いていたし、先生からのカードにもびっしりとメッセージが書かれていて、それを読んでまた泣いていた。あれはもう宝物だよね。

今年はクリスマスカードを近所の人も含めて30枚ほど書いた。まあ教会のメンバーが主なのだが。移住組にしては、クリスマスカードをやり取りする人が身近にこれぐらいいることをありがたく思う。

イギリス人の家には、この時期、送られてきたクリスマスカードがズラーッと飾られている。うちはそれほどでもないが、やっぱり並べたカードを見ると、ここでの暮らしの中に自分たちが存在していることを見ているような気分になる。

年賀状もそうだが、こういった季節の挨拶状というのは、自分と関係している人の数を目視する機会のようだ。

クリスマスカードを書いていて、自分が昔から手紙を書くことが好きだったことを思い出した。小中高と、誰かしらと交換日記や手紙交換をしょっちゅうやっていた。
カードに書く文は1行か2行だが、書くときには素っ気ない一言でもいい、自分とその人のつながりのようなことをかけたら良いなー、と思った。

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