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減量生活カイゼンー人生初のダイエット、その1

 午前9時半ごろにやっとベッドから這い出るとリビングに日差しが指していた。いい天気だ。12月は冬至に向けて日に日に暗い夜が長くなるだけでなくロンドンは曇りが多く、午後4時にはすっかり暗い。昼から活動を始めると日が暮れてしまうまではあっという間で、在英20年ともなると太陽の日差しを見ると出かけなきゃという妙なプレッシャーを感じてしまう。とはいえ昨日最後まで観る前に寝落ちしちゃったドラマを見直したりだらだらYouTube観たりで結局出なかったなんてのもしょっちゅうだけど。
 スマホを持って10年以上経った最近になってメールとインターネット以外の機能を使い始めた。特にこの夏以降ハマっているのがフィットネスアプリ。クリスマス以降はそれにスマートウォッチが加わってもはやそれらを中心に世界が回っている感じ。
 ここしばらくを思い返してみると2020年は誰にとってもそうだろうけどなかなか経験できないことばかりだった。
 1月頭に日本で過ごしたクリスマス休暇から戻ると世間はすでにコロナでざわつき始めていた。3月半ばから5月までのロンドンでのロックダウンでオフィスがクローズとなり強制的にリモートワーク(イギリスではWork From Home)となった。パートナーと2人住まいで書斎兼ゲストルームがあるとはいえ2人同時に家で仕事をするには環境は整っていない。先の見えない中で私はゲストルームのベッドソファに段ボール箱を土台にした臨時デスクを作ってそこで仕事。パートナーはリビングのテーブルで仕事をすることになった。
 部下やプロジェクトチーム、マーケティングから人事まですべてがTeamやSkypeでの会議や打ち合わせで進められていく。相手の顔が見えてもその真意をくみ取るのは直接会うのと比べると断然難しい。元々自分から話さない人間はどんどん静かになっていき1対1のコミュニケーションを別で取ることになり更にオンラインの時間は増え、気が付けば一日のほとんどをコンフェレンスコールに費やしたなんてのが日常になっていった。
 そうなると本来しようとしていたプレゼンの資料作りや追加見積作成、プロジェクトのデザインの試案などはそれ以降になる。通勤時間や移動時間はコミュニケーションのための時間に取って代わられているから結局時間外労働が増えた。よかったのは食事。パブに出かけることもないので毎日自炊。決まった時間、特に夕食は午後7時と決めて夕食を取った後に仕事に戻るというパターンに落ち着いた。
 食事の面ではすこぶる健康となったが問題なのは運動。コロナ前も年齢と飲酒から毎年体重が少しずつ増え、服のサイズを上げ続けて早10年。根本的解決策からは仕事を理由に目をそらし続けていたのだがここにきて移動時間が全くなくなりその間に全く体を動かさなかったせいで体が重いと実感し始めて危機感を覚え始めた。足の爪を切ろうにもお腹が邪魔し始めて、こりゃヤバイと観念した。
 パートナーに勧められてしぶしぶ近所の公園にウォーキングに出かけてみたら自分の体力のなさにびっくり。20メートルも走ってみたらもう息がゼイゼイしちゃってもう。
 YouTubeで見つけた10分ほどの有酸素運動ダンスですら息が上がる。もはや体重計に乗って現状を確認する勇気なんてものはなく、なんとなくよさそうなことをして、酒量を気持ち減らして、それとなく炭水化物を控えてみた。天気が良ければ歩きに出かけ、ちょっと走ってみたりするけどそれでも100メートルもいかないうちに息があがる。うひゃーと思いながら思いつく範囲でゆるーく続けていると7月からオフィスを開けるというので迷わず希望。

 会社からの条件は公共交通機関を使わずに通える人間のみ申請可能というもの。うちからオフィスまでは自転車で片道約30分。もともと行きは自転車で通っていたので特に問題はない。オフィスに行くだけで往復で毎日1時間のエクササイズがもれなくついてくる。エレベーター使用も極力避けるようにということだから3階にある事務所までの昇降運動も足されるなんてなんだかもう減量計画が終了したみたい。コロナ前は常にエレベーター使用、行きは自転車通勤だが帰りは週2-3の割合で飲みに行っていたので最寄り駅まで自転車であとは電車。ジムは1年に2回ペース。これに比べたら素晴らしい! なんてすっかり嬉しくなっていた。それに何より同僚に会える。
 オフィスが開くと、190人いる社員の大体1割、20人弱がピーク時にいる感じ。その中でも顔なじみは定着してくる。その面子の中からやっぱり復活してしまう週1飲みのグループも決まってくる。出来合いのサンドイッチやケバブもランチに食べちゃって結局消費より取得の方が多いのは明らかなのにコロナの煽りを受けたリストラが始まるともうストレスが勝ってしまって健康管理はすっかり懸案事項からはじき出されてしまった。

 予定したわけではないけれどロックダウン中に週5日勤務から試験的に3日勤務を試してそれなりに考えることもあり、希望退職に応募して9月末まで怒涛のように手持ちの仕事を片付けて引継ぎを済ませ、これからの不安と期待の入り混じった妙な興奮の中10月はさくっと過ぎ、11月に入るとようやくキャリア的将来は大事だけど自己管理的将来はどうしたっけと思い出した。
 酒量及びジャンクな昼食とそれに伴う無駄遣いは確実に減ったが、収入が中途半端によかったせいか、お金を使うことにやや無頓着になっている。半年はこのままの生活を続けれるくらいは退職金をもらったけど、金は使わないに越したことはない。それなりに締めてかかれば1年無職でも大丈夫だ。そしてなにより毎日最低自転車を1時間漕いでそれなりの緊張とストレスの中で中間管理職をやっていたこれまでの人生と比べてストレスフリーの、1日1回出ればいいほうな自堕落な生活に慣れた体は一体どういう状況なんだろう。そう思って本当に久しぶりに体重計に乗ってみた。
 びっくり。
 こんな数字、みたことない。
 いや、嘘でしょ。
 この数字はさすがに誰にも言えない。
 しかしこれが現実なんだよな…
 で、どうしよっか。
 そこでパートナーが毎日つけている取得及び消費カロリーダイアリーを思い出した。これいいよいいよと言われるたびにそんなもんいらーんと言っていた自分。この際使えそうなツールはまず試してみたほうがいいんじゃないか。まずは現状把握を冷静にしてみないことにはアクションプランも練れまい。
 やってみるか…
 で、やってみたところこれがびっくり。40半ばを超えてこれではなるほどこれでは毎年最重体重を更新するわけだ。とにかく食べ過ぎ。食べる量が20代から変わってない… それに炭水化物と酒好き、パブ好きが加わるともう減量の要素はほぼ皆無。
 現実を認識したところでさて改善と思い立つが実際はなかなか厳しい。丁寧にフードダイアリーと自転車走行量を記録しているパートナーをぬるい目で見守っていたこの数年の自分を小突いてやりたい… やつはスマートウォッチまでつけているがそこまではいらんだろう。ちなみにヤツは50半ばならがまぁまぁのボディをキープしている。ロックダウン中に趣味の自転車にさらに飲みめり込んだのとヨガを続けて以前よりいい感じだ。
 分析と計画を練るのは大好きなのでまずは現状の把握とリサーチから。減量の原理っていたってシンプル。適度な運動と食事管理を毎日続ける、これだけ。YouTubeやらネット検索やらでそれらをより効果的にする方法や自分に合ったスタイルを見つけるのは大事だけど結局のところこれ。どうやって三日坊主で終わらせないか、いかに続けるかが真のチャレンジだなぁというのはわかっているけど答えはまだない。短期決戦はやりがいがありそうだけど、確実にその反動がくるのも簡単に予想できるし。結果が出ないとやる気は出ないだろうしなぁ。結果にコミットするってどうやったらいいんだろう、教えてくれよ、ライザップ。でも今はライザップにつぎ込む資金がないよ。じゃあとりあえずはコツコツやってみるかぁ。ロンドンはロックダウンでジムすら開いてない。
 ともかくは行動を起こさないと何も始まらない、というわけで始めたのが日々のフードダイアリーとまずはウォーキング。いよいよ人生初のダイエット開始となった。
つづく

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