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形勢を考えない

いきなりですけど次の一手です。下手(私)の次の手はなんでしょう? 初見の方は、ちょっと考えてみてください。

次の一手

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正解(私の指し手)は▲4五角(符号は下手から見たもの、以下も同じ)。7八竜取りと▲6三角成の狙いです。


この問題、私がTwitterで出したものです。級位者は▲6二と、有段者なら▲4五角になるだろうと予想して出題しました。「角打ちですよ」とヒントもつけたので、ひと目▲6二とになる級位者でもがんばれば▲4五角にたどり着けるのではないかと期待していました。しかし実際には有段者でも難しかったみたいで、▲4五角とする回答はありませんでした。みなさんはどうでしたか?

といと的には全然想定と違って驚いたものです。なぜかと振り返ってみると、どうやらこの辺り、私が変わった思考をしているためのようですね。

形勢を考えるとどうしようもない

ふつうの考え方は、まず手を探します。形勢がよくなりそうだったり、悪くはなさそうな手を見つけたらその手を指す、そうでないなら別の手を探すという捜索です。
べつに悪いわけではありませんが、私は苦手です。感覚が鈍いんで、まず手を探すといわれると変な手を見つけてしまいます。また、この考え方をすると最初の問題図では手が出しづらいようです。元の形勢が悪いため、よくなる手も、悪くならない手もないんですよね。何を指しても、正確に指せば上手勝ちです。あきらめるひともいるだろうし、▲4五角と打つひとも一定数いるのだろうし、別の手を指すひともいるのだと思います。その結果、強いひとでも指し手がばらけるんですね。意外でした。

Amazonで出した本にも書きましたが、私はあまり「形勢判断」を重視しません。問題図くらい大きな差があると脳が勝手に形勢判断してしまうのですが、だから何?って話です。この局面では邪魔でしかありません。問題を出すときには考えてすらいませんでした。
「悪いなりに最善を尽くす」といわれて、「なるほど、そう考えるものなのか」と感心したくらいです。

間に合う速度感の手を探す

では、私がどのように考えているのかというと、いい攻めを探す、それだけです。
それだけじゃぶっきらぼうですかね。少し詳しく書いていきましょう。

具体的には、下手の理想となる攻めを探しましょう。4一金が相手陣の急所なので、4一金をはがす攻めをしたい、それには▲4五角~▲6三角成~▲4一馬がよさそうと逆算します。手数に還元してとらえると、先手の直線的寄せは、▲4五角・▲6三角成・▲4一馬の3手入ればかなり厳しそうです。詰みかは怪しいですが、3手の攻めとしておきましょう。
同様に相手の理想手順を考えると、△3九角成▲同玉△5九金・△4九金▲同玉△4八金の詰み。2手の攻めです。

3手かかる攻め対2手かかる攻めで、直線的な手数計算では相手が速い。ここまで状況判断です。ただ、▲4五角の7八竜取りに対応してくれれば速度差が逆転します。
そして最速の▲4五角ですらギリギリの速度感なら指し手は確定です。実戦では相手の対応など一切考えずに▲4五角としました。相手に△6九竜とされて、そこで「あれ、▲6三角成には△3九角成から馬を抜かれる手があるな」と気づいて、▲4八香と受けました。いい加減なものですが、▲4五角以外に有効な攻めがない以上、指してから次を考えます。

どうでしょうか。形勢については言及しませんでしたよね。

互角にすると簡単になる?

元の問題図から、下手陣を堅くしてみました。私が普段使っている将棋ソフト「技巧2」では、なんとか互角との数値を出す局面です。さて再び問題です。みなさんはこの局面で何を指すでしょうか。

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どうですか? こっちのほうが考えやすかったでしょうか。

攻めに必要な要素は何も変わらないので、私なら指し手も変わらず▲4五角としそうです。ただ、▲6二とでも勝てそうになっていて、着手決定は難しくなっている印象を受けます。形勢が近づいたせいで、選択肢が増えたように私には見えるわけです。

感覚派のあなたは下図のほうが手を出しやすいかもしれません。筋のいい方なら▲4五角が先に浮かぶでしょうし、▲6二ともありでしょう。
以上、考え方の違いを感じた問題でした。


私の発信は、当然ながら私の考え方が中心です。他に似たこといっているひとがいないなと思ったから発信しているわけですが、考え方の違いも踏まえて、何を取り入れるかは読んだみなさん次第です。うまい具合にいいところだけ取り入れてくださいませ。


ちなみに元図で▲6二とでは攻め合い負けと有段者的は感じるところでしょう。速度計算をすると▲6二とは4手かかる攻めなので、相手の2手の攻めにはまるで対抗できません。
下図では下手玉に対する手数計算が面倒になっているので、▲6二とで勝てるのかは私には判断できませんでした。ソフトによると△4八銀が厳しく下手つらいみたいです。どちらの図も、▲4五角がソフト的にも最善です。

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私がkindleで書いたもの。KindleUnlimitedに登録しているならタダで読めるので、ぜひ読んでみて感想ください。
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主に私が5分切れ負けの持ち時間で指した実戦からテーマとなる局面図を取ってきて、どのような考えからどのような手を指して、結果どうだったかをまとめたものです。
強いひとほど深く読んでると思われがちですけど、私レベルでは実際はたいして読めません。読めないなりにどう決断しているかを知ってほしいと書いた本です。
この本に書いた用語はもう、断りなしに使ってます。



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