笑いの「フリ」に度肝抜かれた話

言わずと知れた『人志松本のすべらない話』の「重い”そやねん"」という話を見ていた時、ふと衝撃が走った。

この話は数々の「すべらない話」の中では特徴がない話だ。
だが、その裏には緻密に計算されたトラップが仕掛けられていた!

そのトラップとは「フリ」だ!

このnoteでは、この詳細について共有したい。

「重い”そやねん"」

まずは、2009年6月27日(土)放送『人志松本のすべらない話 ザ・ゴールデン』の松本人志が話した「重い”そやねん"」の話を見ていただきたい。
Amazonプライムだと「13. #16 人志松本のすべらない話 ザ・ゴールデン」の回だ。
YouTubeで調べて頂いてもヒットする。

以降は、この話を見た前提のnoteになっている。

フリとは

「フリ」とは、「ボケ」と「ツッコミ」に並ぶ、お笑いの基本テクニックの1つだ。
広義の意味としては「何かに先立つ何か」という、随分抽象的な単語だ。

実は松本人志は、このフリと回収(かぶせ、天丼と言われることもある)技術が他の芸人と比べて圧倒的に長けている。
天才的なタイミング・ワード・話し方で、前に話した内容とオーバーラップさせ、笑いをかっさらうのだ!

「重い”そやねん"」の冒頭では、

「そやねん」なんて軽〜く言うじゃないですか〜?...

などと、「そやねん」というワードについてフっている。
全体が3分という短めの話の中で、30秒もかけて丁寧に。

もし「重い”そやねん"」の話に、フリがなかったとしたら。。。
正直言って「すべらない話」にはならなかったと思う。

なぜ、フリがここまで話を面白くしているかについて考えたい。

1つ目:リアクションの一体感

フリの効果の1つとして、リアクションの一体感を生むことできると言う効果がある。

フリがない場合は、「そやねん」というワードに対しての反応は揃わない。
「浮気がバレなくてよかったですね〜」
「他の彼女じゃなかったんだ〜」
等など、みんなてんでバラバラのリアクションになるはずだ。

だが、実際はフリの効果で皆々「重たいな〜」とリアクションをとっている。

フリがあることで、話を聞く人の一体感を生んだのだ!

2つ目:話のオチの強調

面白い話の特徴として「オチ」がついているというのがある。

フリはオチを強調する効果がある。

「あっ!今話しが終わったんだな」と感じることで、
ホッと安心感を誘発し、緊張が緩んで笑いが生まれる。

丁寧なフリは、誰もがわかりやすい笑いのタイミングを提供するのだ!

3つ目:期待感

期待するときの「ワクワク」という感情の起伏は満足感を生む。

フリは「〇〇の話をしますよ!」と言っているようなものだ。

フリを使うことで「どこで”そやねん"と言うんだ?」と注意を引き、ワクワク感が生まれる。

そして、最後に「そやねん」というワードを言うことで、期待に対しての報酬が与えられる。

「期待 => 報酬」は人間の本能に根付いた根源的な感情だ。
我々はこの構造から抗うことはできないのだ!

最強の芸人とは

かつて、私の友人の1人が漫画家を目指していた。
彼が「最強の漫画家とはなにか」について話してくれたことがあった。

彼が考える最強の漫画家とは、「日常を面白く描ける人」だと言っていた。

日常のちょっとした出来事を面白く表現できたなら、それは確かに最強かもしれない。
ネタは尽きないし、特別な世界観を描かなくても良い。
よつばと』という作品が良い例かもしれない。

では、最強の芸人とはなんなのか?

最強の芸人とは「日常を面白く伝えられる人」ではないだろうか!

自分しか経験したことがないような特殊な体験を話すことでウケるのも良いが、
誰もが経験したことを話し手の力量一つで「すべらない話」に昇華させることができるのが最強の芸人じゃないだろうか!?

「重い”そやねん"」は、「週刊誌にすっぽ抜かれた」という特殊な体験の話だが、その体験はこの話の肝ではない。
この部分は似たような話にいくらでも置き換えることができる!

そう!

あなたの何気ない日常エピソードも、フリを入れることですべらない話に昇華できる可能性を秘めているのだ!

さいごに

私の「フリ」に対しての発見を十分伝えられていたら幸いだ。

今後も「笑い」の言語化という、最も面白くない行為を続けていきたいと思う!

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