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台所の化学2:レモンチーズを作る

台所の化学1:ワインから結晶を作る」はこちら。

僕は普段の料理を全くしないが(以前,料理を作ったときにあまりの不味さだったので,もう料理をしないでくれと言われている),息子との理科の話のネタになる料理はたまにしている。台所は理科のネタの宝庫である。そういうわけで,今日は,息子と一緒にレモンチーズを作った。

【材料】
・牛乳(今回は無脂肪乳)
・レモン(今回はポッカレモン)

【作り方】
(1)牛乳を鍋に入れ,焦げないように沸騰させる。
(2)沸騰したら火を止めて,レモン汁を少しずつ入れていく。
(3)レモンをある程度入れると,白い塊と透明な黄色い液体に分離する。
(4)ざるに白い塊だけとって,水を切り,形を整えたらできあがり。

 分離がいっきにおきるので,子供にウケると思う。

 これは,等電点沈殿法という方法である。レモン汁によって,牛乳内のタンパク質(カゼイン)の等電点(正の電荷の総和と負の電荷の総和が0になる点)付近にpHを調節して,牛乳内のタンパク質が析出したのである。

 レモンでなくてもカゼインの等電点のpHまで調節できる酸性のものであったら作ることは可能である。作ったことはないけれど,たぶんコーラでも作れるはず。

 ところで,牛乳はなぜ白く見えるのだろうか。これにもタンパク質が関係している。

 大気中のチリや水蒸気に散乱されて,空が青く,夕焼けが赤いという話を書いた。これは,可視光に比べてチリや水蒸気が小さいので,波長の短い(赤より青のほうの)光が多く散乱されるからである。この散乱はレイリー散乱と呼ばれている。一方で,雲は白く見える。これは,雲を構成する水や氷の粒が光の波長と同じくらいの大きさなので,どの波長でも同程度に散乱されるからである。この散乱はミー散乱と呼ばれている。いろいろな波長(いろいろな色)の光が同程度に交じって目に届くので,雲は白く見えるのである。

 牛乳内には,上でレモンチーズのもとになったタンパク質が分散している。このタンパク質の大きさは光の波長より小さい。実際にペットボトルを水で満たし,それに牛乳を数滴たらしたものに,ペットボトルの下底から懐中電灯を当てると,ペットボトルの上底に近づくにつれ,レイリー散乱により,うっすらと赤い色になる。

 牛乳が白く見える原因は2つある。①牛乳内のタンパク質によりレイリー散乱が起きるが,タンパク質の密度が大きいので何回も散乱が起こり白く見える。②牛乳内のタンパク質より大きい脂肪粒子によってミー散乱が起きて白く見える。

 ①と②の両方によって牛乳は白く見えるが,②が原因の白にくらべて①が原因の白の方がやや青っぽい白になる。それなので,無脂肪乳のほうが,濃厚牛乳に比べて,ちょっとだけ青っぽい白になる。写真の左が無脂肪乳,右が普通の牛乳。本当にちょっとだけなので,写真だとわからないかもしれない?

 

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