ヨーロッパで観光ってホテル以外儲からないのかね?

2か月くらい前、ヴェネツィアの観光客が多過ぎてそのわりに4分の3がほぼお金落とさない日帰り客だから、その日帰り客に10ユーロ請求しますというニュースを読んだ。

これは結構、ぼくはいろんなことを思った。いまもいろいろ考えている。あれ、コロナ前は新しい雇用の4分の1は観光関連から生まれてます!みたいなニュース読んだ気がするけれど、お金落とさないなら雇用生まれることなくね?とか。ヴェネチアだけだけの事象なのだろうか、とか。

世界遺産になってる観光地は入場料とってる場合が大半だから、そう考えると別に世界初の試みというほどのことでもない気がするが、それでも、他にマネタイズの方法が見つからなかったからって街に入るのに入場料設定するかね?とも思う。しかしながら、これで観光客が減るとも思えない。

卵が先か、鶏が先か

ぼくの友達にケビンというオランダ人がいる。オランダ人というのは伝統的に英語で Go Dutch(割り勘する)という言葉があるくらいには欧州ではケチ、 節約思考というのか、質素倹約なイメージを国民性として持たれている。今は知らない。

昔、ほんとのところはどうなんだととことん聞いたことがあるのだけれど、要するにブランド品を買うみたいな見せびらかす消費はしないとか、自販機でジュース買わないみたいな無駄な出費は抑えるみたいな合理的な考えを地で行っている印象を持った。

その話をするときに彼がよく言っていたのは、

そんなにお金使わなくても楽しい事いっぱいあるでしょ?みんなと集まるのに絶対レストランとか居酒屋じゃないといけないわけじゃない

Kevin

当時は、まあそうなんだけれど、じゃあどこで何するのよって思っていた。けれど、イギリスに住んだり、温かい季節にヨーロッパをゆっくり旅行していて思ったのは、休日に公園でのんびり過ごす人がとても多い。

ドナウ河のほとりで
公園で
公園の池のほとりで

ちょうど過ごしやすい気候というのもある。というかそれが大きいと思う。25度越えてくると、公園でのんびり過ごす人はどっと減ってた。

もちろん、カフェで友達とおしゃべりする人もいるのだけれど、それよりもとりあえず公園に集合!みたいな人たちが (実際の数はわからないが…) 明らかに多いようにみえた。

おそらく、ぼくがとりあえずカフェでおしゃべりしよう、休憩しよう、居酒屋行こうみたいなノリで公園でテイクアウトのコーヒーやスナックや瓶ビール片手に過ごしている。たぶん、ぼくら日本人より圧倒的に居酒屋やレストラン、カフェにお金を落としていない。

なにもすることがない=豊かな人生 だと捉えている彼らは公園でのんびりはぜいたくな時間の使い方なのだと思う。

で、昔ディズニーかなんかの記事でも読んだのだけれど、欧州の人っていわゆるお土産を日本人と比べて買わないらしい。10年くらい前のデータだったと思うから今もそれが当てはまるかどうかはわからないけれど、そういわれると確かになと思うことがある。

友人のオランダ人の言葉を借りると、

観光地に行くってことは目当てが景色だったり遺跡だったりするわけだから、その目的を達成するための出費って交通費 (+ 入場料) だけだよね?お金がないから行けないっていうのは、ほとんどの場合、高いホテルに泊まらないいけないとか、本質的じゃない出費も含まれてるんだ。だから実はそんなにお金かからなかったりする、目的を達成するだけだったらね

kevin

記憶の新しい、プラハ、ウィーン、ブダペストの例だと観光地周辺にお土産エリアであったりカフェなりの軽食屋、屋台みたいなのが充実していない。お土産やはあることはある。けれど、場末の温泉町くらいに寂れてたり魅力的とは言い難いお土産のラインナップだったりする。

観光名所の出入り口なんかに、ちょっと休憩スペースにカフェなり軽食のキッチンカーがない、いない。商機を逃しているような気がする。

もちろん、お土産通りみたいなところはある。各地にある。けれど、日本のそれほどではない気がする。

で、それらが、ないから買えないだけなのか、買わないからない ( or なくなった) のかがわからない。鶏が先か、卵が先か。

Kevinの例は極端なのかもしれないけれど、彼らは実はそんなにお金使っていないからいろんなところ行けるのだろうし、お金そんなに使っていないし使わないから、そんなに一生懸命がんばって朝から晩まで働く必要もない、みたいな世界で人生楽しんでいるイメージはある。実際は知らないが。

で、ヴェネツィアに話を戻すと

観光を考える上で、その地域が恩恵を受けるためには、商売なので客数×単価の売上が生命線。そのどちらかまたは両方を増やす(客数増やす or 単価を上げるのか、滞在時間を伸ばしてキャッシュポイントを増やすのか)が求められる。

が、ヴェネツィアの場合、客数は増えているのだが、客の4分の3が売り上げに貢献してくれていないと言ってる。年間2500万人もの観光客が訪れてそのうちの1875万人がほぼお金落とさない、つまりはゼロで、1875万人にいくらゼロをかけても売上は0。しかし、1875万人のためにゴミやトイレの清掃なんかの少なくない管理費用が発生してるし、その密度が地元民の生活を圧迫してると。

LCCで移動が安価になったから客数は増えたけれど、その客は航空券で浮いた分のお金を余分に落としてくれるかというとそんなわけはない(新しい客層が増えただけな)わけで、たしかに悩ましい。

一方で、ヴェネツィアって別に何泊もするようなところではないと思うし、泊まってくれないならくれないで何かしら理由があるのでは?とも思う。たとえば、ヴェネツィアのホテルはどこも高いとか。著名な観光地によくあるようにレストランが値段の割においしくないとか。真相はわからないが。

ただ、それって先進国の観光客はって話な気もする。ぼくは最近、新興国の人たちと何度かいっしょに旅行したのだけれど、彼らはわりとバンバンお金を使う。高い、高いと言いながらもしっかりお金を落としている印象を受ける。思い出作りでポンとだす。ま、新興国から旅行に来れるだけの経済力あるアッパーミドルという属性の違いはあるけれど(そういえば、仲の良いタイの友人も東京に旅行行ったら結構買い物するし、御殿場までショッピング行くよと言っていて、ほぉーと思った記憶がある)。それでも、たしかに泊まるところは安いところを選んでいるようだった。

とにかく、このヴェネツィア入場料という施策がどれだけインパクトあることなのか結構注目している。10ユーロくらいの入場料にどれだけのインパクトがあるのか。観光客が減るのか、客層が変わるのか。

これができるのはイタリアであったり、ヴェネツィアっていうブランドありきだよなとも思ったのだけれど、タージマハルとか2,000円くらいかかるけど人気の観光地だし、同じように外国人特別価格を設定してるところはいくつかあるけれど、人気ではある。

んー、モヤモヤ?

この入場料というアイデア、キャッシュポイントを強引に作った、売上1850万人×3~10ユーロをつくったという点で、頭良いなと思ったのだけれど、個人的になぜかモヤモヤする。

そのモヤモヤの正体は、これまで名目上は環境保護費みたいなので自然公園や離島に入るときに払ったことはあって、それはそれなりに納得感はあったのだけれど(実態はどうあれ)、この入場料は納得感がない(なぞの新しい負担に感じる)。これまで払う必要のなかったものになぜ払う必要があるんだ、それも大半の観光客はヴェネツィアにお金落とさないからなんて理由で。

いち観光客としては、いやお前らの商売が下手なだけだろと言いたい気持ちはある。欲しいと思うサービスを、ポンと出せる価格で提供してみろよ、と。

でも、これは慣れの問題な気もする。来年には、そういうものだと思っていたりしそう。

ぼくはこういうもともと無料だったところの入場料や使用料の負担って「共有地の悲劇を避けるため」みたいな意味合いを感じていて、つまりはフリーライダーを排除するというか、マナーが悪い人とかそのコミュニティにとって好ましくない人を減らしたいときにやるものだと思っていて、つまりは最大10ユーロ程度の入場料で期待できる効果ってなによ?とも思う。おそらく大半の人は文句を言いながらも払えてしまう。つまりは訪問者数はそれほど減らないと思う。訪問者数を減らして快適さのようなものを求めるのであれば、もっと値段をつりあげても良いと思う。それこそディズニーランドの入場料ほどに上げても結構な収入を期待できるし、秩序や美しい景観は保たれ、高価格が故に皮肉にもブランド価値は上がるのではないかと思う。結局10ユーロ程度なら、それを徴収する事務コストや管理コストが増えるだけではないかと思ったりする。

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