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コロンビアが発展するのは無理だと思うと彼女は言った

歴史的経緯とか、なんかいろいろ条件的に発展にはネガティブな要素ってあるじゃない?だから○○があれば、〇〇なら…みたいなことも当てはまらないケースってあると思うの

中南米の情報収集をしているときコースメイトのラティーナが言った。こういうときのお決まりの文言、「あなた(よそ者)にはわからないと思うけれど、いろいろあるのよ」と付け加えて。

あー、でたでた。ぼくの嫌いな言い回しだ。よそ者であるぼくに理解できると思っていないし、知ってほしいとか理解してほしいとも思っていない感じ。そう言いたくなる気持ちはわかる。たぶん、過去何十年、いろんな人がやってきて「あれやりましょう、これやりましょう、きっとこの社会は変わりますから」って言われてきたけれど、大して変わってないのだろう(少なくとも当人は変化に気づいていない)。

けれど、国際協力を、国際開発をやっていこうとする身としては、しがらみがあるから無理だと言われて、はいそうですかとはならない。その「いろいろ」というのを解きほぐして、解決可能レベルまで分解してひとつひとつ解決していこうという地味な営みが援助なのだから。

だから難しいのはわかってる。それをなんとかするためのヒントを探しにわざわざイギリスまで高い金を払ってやってきてるんだ思うし、君はここに何しに来たんだと思う。

タイトルの回収をしていくと、ラティーナの出身はコロンビアで、コロンビアと言えば、パブロ・エスコバルに代表されるカルテルとコカイン。そしてコロンビア革命軍という反政府組織。和平合意と武装解除したと国際社会は思っているが、実際は分化した残党がまだ武力闘争をやめていないのだとか。

先日、コロンビアの大統領だかが「我が国の対麻薬戦争は失敗に終わったと言わざるを得ない」みたいな声明をだしていた。結構おどろいた。コカインと言えばコロンビアのイメージは相変わらずあるけれど、パブロ・エスコバルなんて90年代の話だし、解決はしてないまでも先細っているものだと思っていたから。まだ戦争というほど、激しい戦いが繰り広げられているのかと。

たしかに、そういうニュースに日々接していると、カルテルからの脅しや賄賂にやられ汚職にまみれた現実は変わることはないのだろうと思うのだろう。ぼくも気が重くなった。

ぼくとしては、反社組織なんて社会が発展していけば徐々に存在感は薄くなっていくものだと思っていた。これは日本社会を見ていて思う。ヤクザをやるのと真っ当に働くのとので前者が割に合わない社会になればヤクザ稼業は廃れていく。で、実際そうなってる。(参考:暴力団2万4100人 17年連続減少―警察庁


コロンビアの村かどこかで、「銃ダサい」みたいなキャンペーンをやったら銃犯罪減ったみたいなのをPRの事例集かなにかで見てたのもあり、さすがに社会が発展してきたかと思っていた。

それがどうやら違うらしいというのでどういう見方をしたらいいのかを測りかねている。たとえば、コロンビアの隣の国、ベネズエラもハイパーインフレで大変なことになっているけれど、それは資源の呪いなんて言われ方をする。なまじ石油があるだけに、イノベーション起こして新たな富を築くよりもその石油利権を狙った方が確実性が高いから多くの人がレントを求め絡めとられてしまう…。多くの人にレントシーキングに向かわせてしまう抗い難い魅力を「資源」ってやつはもってる。

コロンビアも石油や天然ガスみたいな資源があるんだけれど、それよりもコカインが資源の呪いにおける「資源」となってしまっているのかもなと思った。パブロ・エスコバルを退治しても彼の製造・販売ネットワークを誰が継承する。その誰かが倒れても別の誰かが…。その繰り返し。それほどに、金と権力をもたらすものなのかもしれない。コカインってやつは。

じゃあどうするのって、コカインビジネスよりも安全で儲かる仕事を作ればいいわけなんだけれど、言うは易く行うは難し。たしかにそれは不可能ではないと思う。たとえば、ITエンジニアなんて世界中から引く手数多で収入もものすごいと思う。

けれど、そこにいたるまでに長い時間勉強なりの努力がいる。たくさん覚えることがある。対して、カルテルはどうかというと、銃を片手に威張ればいいだけ。たぶんコツコツ働いてるやつより良い車乗れる。女を侍らせることができる。そこに学なんていらないわけで、参入障壁めちゃくちゃ低い。丁稚奉公は長そうだけれど。この差をどう埋めるのか、どうインセンティブつけるのかってのを求められているわけなんだけれど、この世の中って資本主義社会で学歴社会だったりするわけで、勉強あんまりできない人にどう救いの手をさしのべるよって。

こう考えると、たしかに詰んでる。この国は変われない、って思ってしまいそう。冒頭の彼女の言葉は重い。

しかし諦めたくはない。

何度も言っていることだけれど、国際協力って日々いろんなことに絶望しながらそれでも遠くのか細い光に希望を見てそこに向かってく営みなのだから。

心きれいな人から心折れて業界から去っていくのだけれど…。

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