見出し画像

「白地図の訪灯~最端地の灯台~」

灯台訪問の魅力をお伝えする「訪灯シリーズ」。今回は灯台ならではの“陸地の端っこ“の魅力をお伝えします。

 「訪灯シリーズ」はこちらでまとめて読めます
   有料マガジン(500円):灯台訪問を楽しむための六ヶ条


灯台訪問の楽しみ方としては「陸地の端っこに行ける」というのが挙げられます。

「何故、端っこに行くことが魅力なの?何が楽しいの?」「端っこに行きたいだけなら灯台でなくても良いのでは?」と思われる方も多くいることでしょう。今回はそのような疑問にお答えしていこうと思います。

画像1

◆「白地図の訪れ 最端灯台」

航路標識である灯台は「海から見える場所」に設置され、そのロケーションは「陸地の端っこ」にある岬や崖の突端が多い。時々、山中に設置されたりするケースはありますが、多くは陸地の端っこです。

陸地の端っこというのは、裏返せば海際の端っこでもあります。
ヒト目線言えば、陸地という有限世界の終わりであり、海という無限に広がる世界への入口。

画像2

この境域に立つ灯台は、何ともいえない哀愁を漂わせます。
その哀愁が恋人と訪れるロマンティックさを演出したり、点灯シーンの儚さを醸し出したりしているのです。

つまり、灯台は端っこのロケーションを確保することで、他の建築物が持ちえない「魅力」を纏っているのです。
それは「陸(有限)の終わり」という儚さであり、「海(無限)の始まり」という壮大さでもあり、そのコントラスト(対比)による自分という存在の矮小さを噛み締めることです。

そんな端っこにある灯台に到達した時に湧き上がる謎の達成感は、味わった人にしか分かりませんが、一度味わうとやみつきになります。

この体感するだけでも端っこにある灯台たちを訪問する魅力としては十分かと思います。これが端っこにある灯台の情緒面の魅力です。


次に端っこにある灯台を訪問する、という行動で得られる具体的なメリットの話です。

画像3

先に結論を言うと、最端灯台の訪問で得られるのは「現場力」です。もう少し噛み砕いて言うと、「『発見力』を磨く習慣」です。

人間が求めるものには「未知」のものを究明する欲求というものがあります。これは非常に強い欲求で、だからこそ人間は現代まで生き残り、あらゆる知識と知恵を身につけてきました。

むしろ「知っている」「分かっている」と思った瞬間に人間の衰えは始まります。それは、新しいことを学ぶことを止めているからです。

では実際に自分に置き換えた時に、あなた自身は「未知」に対して貪欲でしょうか。

もし少しでも"YES"と答えるのに躊躇された方は、灯台へ行くことをオススメします。
しかも端っこにある灯台、いわゆる「最端灯台」へ行ってみてください。

調べ方は簡単です。「〇〇県(お住まいの県など) 最●端(東、北など)」で検索してみてください。そうすればあなたのお近くの端っこが分かります。

画像4

聞いたことのある地名ですか?意外な場所ではなかったですか?行ったことはありますか?

「知っている」「聞いたことがある」という場所でも、実際に足を運んだりしたことがない、というのは案外多いものです。
でも、それはたぶん、過去に話題になったりした時に「知ったつもり」「分かったつもり」で終わらせてしまっているということ。

ものづくりなどでは「現場が大事!」と頻繁に言われますが、実際のところ端っこの実態は現場に行ってみないと分からないのです。
特に有名な「日本の端っこ」ならば尚更です。特集などが組まれ、その画像を見てそそられるけど、実際に足を運ぶ人はごく少数なのです。
そもそも「その魅力的な画像は一体どこのアングルから撮っているの?」という情報はなかなか出回りませんので、それこそ現場に行かなきゃ分かりません。

 参考「これって誰得!? なぜかそそられる日本の端っこランキング」

お近くの端っこを調べたら、実際に足を運んでみましょう。ただ漫然と端っこを辿っても何ですから、何か目安があると良いですよね。
そこで、その付近の「灯台」を目印に訪問してみてはいかがでしょうか。

灯台ならば大抵の端っこは押さえているはずです。
何故なら「最●端」という場所は、航海する場合でも要所となるケースが多いからです。そんな海上交通の要所には目印としての灯台が設置されます。

画像5

灯台を目指して端っこに行く。

それは、自分の白地図を色鮮やかに描きこんでいく作業に似ています。とにかく『発見』の連続です。

「あー、ここの道はこんなに細いんだ」「岬の地層はこんな色になっているのね」「波の音や匂いってこんな感じだったのか」

そんな発見とともに、描き込めなかった場所がある(白地図のままにする)のが無性に悔しく感じます。ですので、是非とも最端灯台の「足下」まで訪問してみてください。灯台を遠くから撮影できるポイントまで来て満足せず、キチンと灯台の「足下」まで訪れることで、ようやく「端っこ認定」されます。(「端っこ認定」って何?)。

でも真面目な話、端っこへ行く時には「灯台に触ったらゴール」とか「初点灯プレートを必ず見る」とか自分なりの"ゴール"と"ルール"を設定することをオススメします。そうすれば、本当にRPGのような冒険気分で『発見』を楽しむことができます。


話をまとめると、端っこに行くという行為は「『発見』を体験すること」に等しいです。

お近くにも必ず「九州本土の最●端」「福岡県の最●端」といったように、その地域なりの端っこは必ずあります。見つからなければ「市内最西端」「町内最北端」とか範囲を狭めれば絶対見つかります。

そんなお手軽な体験ですが、多くの人が「分かったつもり」で情報が途絶えていますので、「あと一歩の行動」を踏み出すだけで大きく情報収集力に差がつきます。
その行動を繰り返すことで「知らないことを知る努力」「分かったつもりにならず現場を確認する」といったクセや習慣が身に着くのです。

そのような「端っこ体験」を味わえば、やみつきになること請け合いです。

そして端っこにいる待ち人は……そう、灯台です。

灯台は陸地(有限)と海辺(無限)の間に立つ水先案内人です。

そんな灯台訪問を楽しんでみませんか。

ここから先は

4字
ちょっとした心構えの違いで灯台訪問が楽しい旅の思い出の一つに変わりますので、灯台を訪れる機会に思い出して頂ければ嬉しいです。

これまで200基以上の灯台訪問経験のある記者が、実践できる灯台訪問の「楽しみ方」をご紹介します

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。