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東大現役合格の息子はNICU(新生児集中治療室)出身

息子は生まれたばかりの頃
NICU(新生児集中治療室)に入院した。

医師から説明を受けた直後、
今から患者となる我が子を懐抱しながら、
彼にふと呼びかけた名をそのまま命名する。

入院手続きの為、書類に署名。
親としての初仕事。
名前は決まったが出生届は提出前。
息子の名は「◯◯ベビイ」となった。
受け取った診察券もそれだった。

この世に存在しているのに
何か不確かで切なかった。
早く名前を付けたくなった。
早速夫が広辞苑を持ってきた。
ベッドの上で重厚な辞書開く。

初めての子の名は、
本人に会って姿を見てから決めるつもりだった。
だから候補も決めていなかった。

腕に抱いて名前が降りてきた。
迷う事なく相応しい漢字も閃いた。
夫は届けを出しに行き、
息子の戸籍登録が完了した。

完全予約制の面会が待ち遠しい日々。
除菌作業をして衛生衣を纏い
使い捨ての帽子と靴カバー
手をヨードで洗い全身エアシャワーを浴びて
クリーンルームの病室へと向かう。

そこは、
我が子が入院しなければ
決して立ち入ることが許されなかった場所。
この世に生を受けて間もないたくさんの命が
懸命に生きようとしている神聖な場所だった。

ドレインに繋がれている新生児。
だが、生きるエネルギーを感じた。
だから、きっと助かると信じられた。

落ち着いた頃。右手にダディの指を掴む。
退院目前

その後、医師や看護師達のケアのおかげで
息子は回復し大事に至らず退院できた。
一緒に入院していた仲間達の回復を心から祈った。


それから時を経て


まさかこの子がバイリンガルになろうとは。
まさか東京大学に入学することになろうとは。
まるで想像もしていなかった。

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