#日刊よくできました 6

【とある撮影の準備をする】

「撮影」という言葉を使うとだいたい毎回「AVですか?」と聞かれるけれど私自身がAV撮影のために準備するべきものなんて健全な精神と健康な肉体くらいのものだし、そもそも恥ずかしいのでわざわざAV撮影がいつにあるのかをあまり言いたくない。みんなつい、頑張っていることを見て欲しくてSNSなどに書いてしまうし、私もよくやってしまうんだけれど、本当は、そうすることで作品の制作時期がわかってしまったり舞台裏が少し見えてしまったりするもので、それはフィクション作品を作る上で必ずしも良いこととは言い切れないことなので、きっと無難に何も言わないのが正解なのだろうと思う。作品を撮る日はなるべくお顔が浮腫まないようにしたり(失敗する時もある)メイクもしっかりしたり(あえて普段より地味にする日もある)するので、写真をとってUPしたくなるのは当然のことなんだけどね。だけどまあ私は恥ずかしいのであまり言わない。ただ衣装の雰囲気とか、髪型の感じとかは自分の好みとは別の基準で選ばれているので、よく見ているとわかりやすい。わかったら心の中で頷いて、頑張れ〜と思っていて欲しい。頑張る気持ちが全くないと丸一日元気でいることなんてどんな仕事でもできないものなので。

と、今日は全然AVではない自主制作のとある撮影のために衣装探しで街を回っていた。スタイリストもどきのことをすることが、結構楽しくなっている。最初にそういうことをしたのはいつだったっけ、と思い返すと、2018年の冬に撮ったアメリカ・メンフィスでの写真集撮影だった気がする。スタイリストさんも最高のドレスやヴィンテージのブーツを持ってきてくれて、私も着たい服を山ほど持って行った。何日か泊まるメンフィスで一番かわいいホテルの大きい部屋のクロゼットに、持ってきた洋服をずらっと掛けたことを覚えている。大柄の薔薇がついたニットワンピースに赤いハートのヴェルサーチのネックレスを合わせたこと。チェック柄のジャケットを羽織ったらメイクさんが頭に小さいお団子をたくさん作ってくれたこと。短すぎるスパンコールのスカートにボルドーのDr.マーチン8ホールがよく似合っていたこと。romeo and julietと書いたTシャツを着て昼間、写真を撮られながら少し眠ったこと。私は服飾のお勉強をしたわけでもないし、モデルをやっているわけでも、ファッションにまつわる特別なスキルを持っているわけでもないけれど、服がとても好きだ。もっと身長があったらよかった服も、もっと痩せていた方が似合う服もたくさんあったけれど、私だからこんなに似合うんだろうな、という服を着た瞬間の喜びがあれば何も困ることはない。ハイブランドを特別好いているわけでもないし、むしろどこのブランドなのかわかりすぎてしまうようなロゴや有名な柄入りのアイテムなんかは避けてしまうけれど、デザインが気に入ったらあまり値段のことは考えないで買うことにしている。生活に困るほどは使っていないけれど、娯楽の中では一番お金を使っているかもしれない。イベントなどで着たい服ももちろんあるし、プライベートでしか着ない服もたくさんある。色柄ものが大好きなので、ちょっと怖い感じがするものはファンの人たちの前に出る時には着ないようにしているつもり、だけれど、そろそろそれも守れていないかもしれない。ていうか、2018年の写真集の時点で結構ハードな服を着ていた。あの日着ていたライダースは今も部屋の見えるところにかかっていて、ちゃんとかわいくそこに在ってくれている。

今日はヘアメイクさんに教えてもらったかわいいインポートもののランジェリーが買えるお店と、ずっと好きなお洋服のブランドのお店に行って心ゆくままにお買い物をした。セルフスタイリングの現場を組むたびに私はしこたまお金を使って衣装を買っている。一年前くらいはライブに出演したりもしていて、その度に出演料よりも高い衣装を買っていた。事務所が全部経費にしてくれる範囲だと思う通りのイメージの衣装が着れないので、普通に黙って自腹している。リースなどの手もあるけれど、ほとんどの場合普通に欲しくて買ってしまう。服のことを、「普段着るか/着ないか」ではなく「家にあって欲しいか/そうでもないか」という基準で判断しているので、買うだけ買ってコレクションしているだけで実際には着ていないものもある。今日も値札を見なかった。いつの間にかお財布からはお金がなくなっていて、でも可愛かったんだから仕方ないな、と思う。利益を出すということは思ったより難しい。私には、こうでないと耐えられない、というラインがくっきりと在って、その一つが「おしゃれじゃないのは耐えられない」である。正直、おしゃれでさえあれば結構どんなことでも耐えられる。ただ、例えば作品のジャケット写真の撮影が明らかに微塵もおしゃれじゃなかった時、グラビア撮影で用意された衣装があまりにもおしゃれじゃなかった時、もちろんお仕事なので素直に従うけれど、内心は結構傷ついている。AV女優さんだけでなく、グラドルさんとかでも共感する人っているんじゃないだろうか。ちょっと自分の感覚では信じられないような「おしゃれじゃない」衣装を用意したいただくことがある。この世はもちろんおしゃれだけが正義の世界ではないけれど、「おしゃれだとおじさんたちが怖がるから」という言い分を聞く時にはいささか目眩がする。おしゃれなのが好きなおじさん、というかそもそもがおしゃれなおじさん、たくさん知っているんだけど……。と頭の中で反論するも、世のおじさん全員を知り尽くしたわけではないので何も言えない。作る側が先に押し付けているんじゃないか、とさえ思う時がある。「おじさんたちはダサいくらいの女の子が好き」だと思い込んでいるだけなんじゃないかと。……とは言え、少し前に見かけたネットニュースでは「女子から最も不評な男性ファッションの第一位は"柄シャツ"」などという記事が上がっていた。私は男性が柄シャツを着ているスタイリングた大変好きなので、(そんな記事出して、世の男性たちが柄シャツ辞めちゃったらどうするんだよ!)と少しだけ憤慨した。不潔感よりも清潔感があった方がいいとか、金髪より黒髪の方がいいとか、女性側から男性に求めるステレオタイプももちろんある。ちなみに私は実際に不潔かどうかは別問題として、清潔感マシマシのようなスタイリングはちょっとあざとい気がしてしまって好まないし、ちょっと高円寺の路上とかに転がってろそうな服装がかっこいいと思ったり、髪色も正直似合っていればなんでもいいな、と思う。みんな一回ピンク色にして欲しいとも思うくらい、割となんでも好きになる方である。それでも世の中には圧倒的多数派と呼ばれる意見があって、グラビアの衣装はちょっとださい方がより多くの人が怖がらずに見ることができるし、なんというか、そうしておいた方が仕事としてはいいのだということも十分わかる。それでも、おしゃれじゃないことをするたびに傷ついている私の心は、まだ、おしゃれを諦めてくれないのだった。

ということで、近々おしゃれなものを作るので楽しみにしていてください。おしゃれな私より。

ありがとうございます!助かります!