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『男と女』と『とけいのえほん』 シネマと戸田デザイン研究室 Vol.1

今回からスタートする新連載。映画大好き!な、戸田デザイン研究室 広報・大澤がテーマを設け、素敵な映画作品と戸田デザイン研究室の作品をご紹介する【シネマと戸田デザイン研究室】。

自分の世界を豊かに広げていくのに、映画と本はどちらも最強のツールではないでしょうか。そして自分の世界を豊かにする楽しみに、大人・子どもという境界線はありません。ぜひボーダレスに心を動かしていただけたら嬉しいです。映画のイラストは、弊社 戸田やすしのオリジナルです。

第1回目のテーマは【時間が紡ぐドラマ】。時間というものが持つロマン、温かみ、そして残酷さをも感じさせる2作品です。

『男と女』 クロード・ルルーシュ監督

ダバダバダ〜♪の音楽でもおなじみ、フランスを代表する映画監督 クロード・ルルーシュの出世作とも言われる1966年の作品です。

妻に先立たれたカーレーサーのジャン・ルイ。夫に先立たれ、映画の世界で記録係として働くアンヌ。2人はそれぞれの子どもを預ける寄宿学校で出会います。アンヌの美しさに心を奪われたジャン・ルイは彼女を車で送り、そこから男と女の物語が始まるのです。

カラーとモノクロが入り交じる美しい映像。アンヌを演じるアヌーク・エメのゴージャスな美しさとパリの町並みも、もうムード満点。(ムートンコートを始めとするアンヌの粋な着こなし、クラシックなボブヘアは永遠の憧れ〜。)

それぞれの伴侶との思い出の時間も鮮やかに描き出され、なかなか新しい愛に踏み出せない大人の男女の葛藤が胸に響きます。時間というものが持つ残酷さと優しさ、そこに生まれる愛のドラマを詩情豊かに描いた「これぞフランス映画!」な空気に満ちた作品です。


『とけいのえほん』 作・絵:とだこうしろう

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さて、こちらの絵本は前述の『男と女』に負けず劣らず、なんとも叙情的な構成で時の流れを感じさせる ユニークな絵本です。

一般的に子どものための時計の絵本と言うと、時計の針を回す仕掛けがついていたり ”時計を正確に読めること”に重点が置かれたものが多いかと思います。しかし戸田デザイン研究室の絵本には仕掛けはおろか、説明も物語もありません。描かれているのは時を刻む大きな振り子時計と、その時間の持つ美しいイメージだけです。

写真の【午後5時】をご覧ください。海辺を散歩する男性と犬の影が、こんなにも長く伸びています…。男性をそっと見上げる犬の様子に、切ないストーリーが浮かんできます。時間によって舞台は羊の眠る夜更けの大地にもなりますし、夜の海を照らす灯台も描かれます。

とにかく、それぞれの表現がとても詩的で映画的。子どもたちは時間の流れを感じることができますし、大人の方がご覧になると幸福な思い出が浮かぶこともあれば、二度と戻らない時間を思い出して切なくなることもあるかも知れません。

“じかんを かってに とめたり のばしたり ちぢめたりは、 どんなひとでも できません。”この絵本の最後にある作者のメッセージです。

時間の非情さと美しさを知った作家が、豊かなイメージを投影して描いた1冊。ぜひ、大人の方にも読んでいただきたいです。


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