教員研修の高度化について
1 なぜ、今、教員研修の高度化?
令和4年に教育公務員特例法が改正され、令和5年4月から研修の記録とその記録に基づく対話と奨励を行う「新たな研修制度」が開始されました。教員研修の高度化では、各自治体において、地域の実情や教員育成の指標等に合わせた研修を合理的、効果的に取り組むことが求められています。
2 戸田市はどう取り組むの?
戸田市では、文部科学省の補助事業として採択され、取組を進めました。教育委員会と大学等の多様な主体の協働による研修モデルを開発し、その成果を広く普及することで、全国的な研修観の転換・定着を図ることを目的としています。
教員研修のアップデートをねらい、全体として「各教科等」、「教科等横断、PBL」など校内研修の充実・高度化を設計しました。
キーワードは「子供の学びと教師の学びは相似形」です。
上の図は、職階や職責によっても研修内容が変わってくることを示します。本市では、事業を行う以前より他自治体と比べて、多様なメニューがあることや、産官学の連携により外部の力を活用したものになっている状況があります。
反面、学校が「やりたい」と感じる研修を実施するに当たっては金銭的・物的サポートが十分な状況とは言えないことなど課題もあります。
そこで、柱を「主に個別最適な研修」と「主に協働的な研修」とし、市教委が主催する研修を見直したり、モデル校での研修を支援したりすることとしました。
3 「主に個別最適な研修」「主に協働的な研修」
「主に個別最適な研修」では、国士舘大学の細越教授に体育・保健体育を、埼玉大学の二宮教授に算数・数学をご指導いただくなど、授業前のプランニングから当日の授業、授業後のフィードバックまでを伴走形で支援いただきました。また、センター研究員が先進地を視察したり、希望のセミナーに参加できるようにしたりするなど、教師がそれぞれのニーズに合わせて各教科等に特化した研修を受けられるようにしました。
また、「主に協働的な研修」としてモデル校4校の校内研修において、教育関連企業やコンサル会社、大学と連携するなど、教師がより一層協働的に学べる環境整備も行いました。
4 モデル校における校内研修とは
1つめが美谷本小です。コンセプトは「多様な産官学との連携による協働的な研修」です。大学や民間企業から講師を招き、教職員にとって協働的な研修を実施しました。その中でも児童の様子を把握する「QUアンケート」の分析の仕方や児童への関わり方について、開発者である大学教授から直接指導を受けています。この効果あってか、年度内に満足と感じる児童が増え、不満足や要支援にあたる児童が減っています。
2つめは喜沢小です。コンセプトは、「『産官学による伴走支援』と『対話型研修』スタイルの導入」です。ポジティブな行動支援と個別最適な学び、個別最適な支援を掛け合わせ、データをもとにしたミーティングや評価、訪問支援による授業観察とフィードバックを専門家にしていただきました。民間企業に教師のコーチングやファシリテーター力の向上に関わっていただいたり、広島県や大阪、長野に先進地視察に行ったりしています。さらに、全教職員で「対話の森」へ参加したり、対話型研修へのデータ活用方法の助言を受けたりしています。なお、喜沢小では、長時間の集合型研修から、自由度が高く、短時間・少人数での機動的な非集合型の新しい研修システムの構築及び職員室の環境整備にも取り組みました。タッチパネル式ディスプレイや可動式の机・椅子、大型ホワイトボード等を導入し、流動的な対話を可能にする「コラボレーションルーム」の整備、対話的・協働的に効果検証を行い、改善サイクルを回していく研修会の実施にも挑戦しています。
3つめは戸田中です。コンセプトは「3つのアプローチによる同一歩調の研修の見直し」まさに、一斉型ではない、非同期の学びです。ポジティブな行動分析と働きかけのPBS研修、専門企業の支援によるPBL研修、「主体的・対話的で深い学びを促すための授業改善」をテーマに教科横断チームを編成し、福井大学の支援を受け研修を行いました。
最後は、笹目中です。コンセプトは「教師のマインドセットづくりに向けた研修推進コンサルの導入」です。笹目中は、コンサル会社である「フランクリン・コヴィー・エデュケーション・ジャパン」の伴走により、例えば、会議運営についての客観的なフィードバックを通して、目的設定から参加者の事前準備等の見直しを行い、会議の効率化と効果の最大化に向けた改善に取り組みました。
5 夏季教職員研修も変わったの?
これまでも教科教育の研修は実施しておりましたが、夏季研修では、個々のニーズに沿えるよう、特に教科の「見方・考え方」に浸る研修を通して、視点を磨く研修としました。
6 参加した先生方の感想は?
事後アンケートからは、教科等の見方・考え方を踏まえた主体的・対話的で深い学びについて具体的なイメージをもつことができたという感想が多くあり、研修に対しての満足感やニーズへの合致、実践意欲のほか教科の「見方・考え方」の理解を深められたかということについて90%以上の教師が「とてもそう思う」「そう思う」と回答しています。
課題としては、参加者同士の情報交換や、具体的な事例をもっと知りたかったという感想がありました。
上の図は、大学教授による、伴走形の教科教育に係る支援です。事後アンケートでは、受講者全員が、研修に対して満足感や実践意欲をもつことができ、教科の「見方・考え方」については全員が「とてもそう思う」と回答しています。
これはセンター研究員を支援する取組です。有識者に入っていただき研究を深める取組や、先進地視察を行いました。関東だけでなく、大阪や上越教育大学などにも足を運んで「よい授業」を見て、見識を深めました。
7 まとめ
多様な教育課題への対応が求められる現在において、教科等の見方・考え方を深める研修は、ニーズがあり、本事業で実施したような教師の選択による研修や外部指導者による伴走指導、先進地の視察等は今後も実施していくべきであると考えています。
本事業における研修の内容は、焦点化された予定調和の内容ではなく、広く多様な内容を扱う研修内容である必要があります。
戸田市教育委員会では、学校や教師に伴走して支援を通して、教職員研修の高度化を推進しています!