麦とトロとホップ

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White Fairy Tale

白い物語 ***** 森には、音の妖精がいるといいます。 鳥のさえずり、木々のざわめき、動物が大地を踏みしめる音、 森の中にある音は全部、実はこの妖精が奏でている音なのです。 森の中で妖精は、そんなふうにして生き物達と一緒に楽しく暮らしていました。 ある時、この森にひとりの青年が迷い込んできました。 さえずりを聞いてはキョロキョロと鳥を探したり、 木々がさらさらと揺れるのを気持ちよさそうに眺めていたり、 動物の足音を感じて少しびっくりしたり、 そんな様子をおもしろおか

    • FARM

      はじめてその場所を訪れたのは、2013年の春頃。 牛さんを見に行きたいなー と、そんな軽い気持ちで旅行の行程に組み込んだのだ。 大きくてとっても有名な牧場だ! 牛さんたちたくさんいるんだろうな〜 旅行中の一番の楽しみだった。 牧場は広場や遊具、レストランがある「まきば園」と 実際に牛たちがいる「牛舎」に分かれている。 まず、まきば園でゆったりとした雰囲気と 牧場らしい長閑なアトラクションを楽しんだあと、 満を持して牛舎に足を踏み入れた。 すると、空気が一変した。 そ

      • かお

        先日、新潟から父が遊びに来た。 越して来てから初めての我が家のお客様だ。 まだお客様用のお布団がないので、 近々揃えなければなるまい。 父はずっと仕事で忙しくしていた人だけれど、 なのにかだからか、多様な人付き合いがあるようで 結構頻繁に世界中を飛び回ったりしていた。 仕事を引退してからも やれ同窓会だの、先輩のお見舞いだの、食事会だの、 コトあるごとに遠出をしているようだ。 大人になってからSNSなどを通じて親しくなった友人知人の中には 普段「サラリーマン」そして 「

        • 花束を、君に。

          ちょうど1年前、大切な友人を亡くした。 小学校から高校まで一緒に過ごし、 大人になってから再会して6年が過ぎていた。 人生の伴侶を得て1年程。 数年前に立ち上げた事業がようやく実を結び出した矢先のことだった。 彼が亡くなる2ヶ月ほど前、 その少し前に肉親を亡くした彼と どちらからともなく人生について語り合ったことがあった。 親としての最後の役割が「死」を身を以て教えること、 最大の親孝行とは順番を守ること、 ひとつひとつ確認する様に会話を交わしたのが つい先日のことの

          ルーツ

          (7年前の記事より) 生まれ育った新潟の実家は、母方の実家。 つまり私の父は、言わばマスオさん。 以前、私が実家を離れてしばらくした頃 父に尋ねてみた事があった。 マスオさん状態は、やっぱ辛いものなの? 父は、笑いながらこう言ったのだ。 同居するなら、自分の両親とよりも 妻の両親とのほうが断然おすすめだよ。 どうせ自分は普段、寝に帰ってくる程度にしか家にいない。 日中大半の時間を、妻がリラックスして過ごせているかどうかが 夫婦の仲、家庭円満にも繋がるんだよ。 妻の実家

          星空を探してる

          視力が落ちて、もう随分と経った。 高校生半ばくらいまではとても良く見えていて、 眼鏡の同級生が少し羨ましかったものだ。 遠くのモノが見えなくて眼を細める仕草が とても艶っぽく見えて、ひっそりと憧れていた。 それから年月が少しだけ過ぎたら いつの間にか世界は変わっていて、 そしたらちっとも艶っぽくはないし あんなに憧れた眼鏡は邪魔で、 いまだに持ち歩くことはない。 あっという間に水彩画のように滲んだ世界に ひとり放り出されてしまった。 でも。 少しくらいぼやけているほう

          星空を探してる