「子供月5千円給付」をめぐる小池知事の詭弁を暴く

 新年早々、「毎月5千円を所得制限なしで18歳までの子供に給付」との小池知事のサプライズ表明が波紋を呼んでいます。なぜ、このタイミングでこの内容? すべては岸田政権の「異次元の少子化対策」の向こうを張って国に先制攻撃を仕掛けたという側面を十分に押さえた上で、週末6日に開催された定例記者会見での小池知事自身による説明を深掘りしてみたいと思います。

罰ゲーム?
 所得制限なしでの給付に関して小池知事はこう言っています。「共働きで一生懸命働いて税金を納める人が給付の対象にならないのは罰を受けているよう」、だから所得制限は設けないと。テレビ朝日の新春インタビューでは「罰ゲーム」という言葉も使っていました。
 さらっと聞き流すと「ああそうか、そうだよな」と納得してしまいそうになりますが、ちょっと考えれば理屈にならない奇妙なレトリックだということが分かります。
 例えば、ある大企業が自ら率先して業務のDX化を進めているとしましょう。この企業は所得税もきちんと払っています。都内企業のDXをどんどん促進したい小池知事はDX化のために企業に対して毎年5千万円を給付することにしました。企業の規模や納税実績に関係なく一律にです。だって、頑張ってDX化を進め、しかも税金を払っている大企業が給付の対象にならないのは罰ゲームに等しいからです。、、、ということになってしまいませんか。
 小池さんの発言は常にその場を切り抜けるための詭弁に満ちあふれています。今回の場合は、「共働き」+「一生懸命」なのに給付がもらえないなんてまるで「罰ゲーム」、ああなんてかわいそうなんだ、と情に訴えて世間を丸め込もうとしたのです。都民は情緒的な物言いに弱い。でも、ぜんぜん論理的でない。
 こんな詭弁がまかり通るなら、行政サービス全般に所得制限や規模の上限など設定できなくなってしまいますよ。小池さんの説明は論理的に破綻しています。

国は増税・都は事業見直し?
 月5千円給付に関しては、もうひとつ見えづらい詭弁が隠れています。5千円給付には年間で1200億円+事務経費が必要とされていますが、その財源をどうするかです。
 1月6日の記者会見で小池知事は具体的な数字をあげて説明しました。令和4年度では事業評価によって1117億円を捻り出し、これをスタートアップ事業などに投資している。この6年間で約5800億円を生み出した。これが東京大改革だ。改革で生まれた財源を給付に当てていく。
 これまた「そうか、小池都政は頑張っているな」と感心してしまいそうです。それに比べて国は情けない。何か新しいことをしようとすると、国防にしても少子化にしてもすぐに増税・増税と言い出す、まったくけしからん。こう思ったとしたら、小池さんの思うつぼです。国は増税するしか能がないが、都は改革を進めて財源を生み出している。みなさん、どっちが好ましいと思いますか。小池知事はそう言っているのです。

膨張を続ける予算
 さて小池さんの言う事業評価とは、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドのスクラップの部分のことです。有り体に言えば既存事業の見直し・縮小・廃止。従来、この事業見直しは総務局が所管していましたが、小池都政下で財務局に一元化されました。財務局は予算編成権を握るとともに、既存事業に大なたを振う権限も併せ持ったわけです。
 でも、これでめでたしめでたしとはいかない。財務局は数字を操作することにおいては天才的です。過去6年間で事業見直しにより5800億円の無駄を省き財源を確保したという小池知事の発言をそのまま鵜呑みにするのは危険です。色々な手を使って数字を大きく見せている可能性があります。
 しかも、小池知事が毎年新しい事業を次々と打ち出せるのは、1000億円程度の削減効果というより、コロナ禍にあっても都税収入が高水準で推移したため潤沢な財源があったからに他なりません。事実、都の予算規模は増え続け、一般会計が8兆円に迫る勢いで膨張しているのです。

都民をミスリード
 さらに言えば、毎年1000億円規模で事業見直しを延々と続けることは可能なのでしょうか。もし来年度予算に5千円給付を盛り込むなら、それだけで年間の事業見直しによる削減額を全部使い果たしてしまいます。小池知事の言葉通りだとすると、来年度予算に5千円給付以外の新規事業は盛り込めません。でもそんなことにはならない。税収に見合った形で様々な事業が用意されるでしょう。
 つまり、5千円給付の財源問題に関しても、小池さんは国との対比においてあざといイメージ操作をしているのです。あたかも改革=事業見直しだけで全てが丸く収まるかのような言い振りは、都民をミスリードし、必ずや将来に禍根を残すことになるでしょう。


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