【詩】理解力と苦悩の間で



彼女はみずからの子どもを愛おしく抱きかかえながら言った。

「こんなにもたくさんの人間が生まれているのだから、神様は人間を愛してるのだ」と。


けれども僕は人間はあまりにも増えすぎたと思っている。

その結果として僕らは互いに苦しめ合っている。

そこに神の愛ではなく憎しみを感じないこともない。


一方で他国の戦線から戻ってきた彼は、

人間の理解力は雀の涙ほどでしかないと言った。

戦地では、少しの誤解が命取りになると。


僕は彼女の考えよりも彼の考えにより親しみを感じる。

人間は理解力が足りないからこそ、互いに苦しめ合うのではないか?


そこに愛の不足をも読み取るのは困難なことではなかった。

人間の人間に対する愛の不足を物語っていた。


愛が不足したまま増え続ける人類は、今後もさらに苦しめ合うに違いない。

僕がそこに愛を灯すことは、ほとんど絶望的に違いなかった。


けれども僕らは生き続けなければならない。

愛は世界のどこからも消えたわけではない。


おそらく愛が全世界に広がる日まで、僕は生き続けることになるだろう。

そのときは彼女の考えもまた理解できるかもしれないと期待しながら。


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