ジャニーズ事務所の変化――Jr.祭りとコメントに寄せて

8月26日。Jr.祭り~Wash Your Hands~の配信。
それとほぼ時を同じくして発表されたコメント。

この2つの出来事は、私の中で重なって見えて。
ジャニーズ事務所の変化の象徴として。

Jr.祭り~東京ドームから始まる~から、もう1年以上経つなんて…と驚きながら、ずっとぼんやりと考えてきたことを、この機会に少し整理できたらなと。


「すべてのファンの皆さまへ」と題するコメント。
公演開催の可能性を模索しながらも、やむを得ず断念したことへの謝罪、公演中止にショックを受けているファンに寄り添う姿勢、そして今後もジャニーズらしいエンターテイメントを届け続ける決意が示されていて。
その丁寧さ、真摯さを嬉しく思うのと同時に、ジャニーズ事務所の変化を感じました。

ジャニーズ事務所のコメントといえば、かつては、不祥事等の必要に迫られて発表するもので、情報量も最小限に抑えられていた印象。FC会員メールでの「大切なお知らせ」の文字に、嫌な緊張感を覚えた経験がある方も少なくないのでは。

それに対して、ここ1年程は、何らかの発表に際しては積極的にコメントが付されるように。
分量は目に見えて増え、内容も事務所の判断を言葉を尽くして説明するもの、ファンの理解を得るための文章が中心に。
必ずしも全てが真実ではない週刊誌等の報道に対しても、慎重な事実確認の上で然るべく対応し、その対応に至った経緯が説明されるようになったことからも、変化の大きさが窺えるかなと。

ジャニーズ事務所に限らず、芸能事務所はその性格上、清濁併せ呑むのが文化といった側面があるように思います。
そのなかで、遍く全てをオープンにすることはできずとも、芸能界以外の一般常識との乖離をなるべく避けようとする姿勢こそが今般の変化の原動力となっているように感じました。
もっとクリーンなイメージのある事務所へ、より風通しのよい事務所へ――ジャニーズがたくさんの人に応援される存在となるために。そして、事務所及び所属タレントの強い影響力に相応する社会的責任を果たすという意味もあるのかな、なんて。


事務所コメントの変化に留まらず、この1年余りで、デジタルコンテンツへの進出が加速したり、Jr.のメディア露出の機会が増加したり……
こうした変化を語るとき、避けて通れないのがジャニーさんの死とタッキーの裏方転身。
 
変化の全てがタッキーのみの意向によってもたらされたものではないと思うけれど、
少なからずタッキーの役員就任が影響しているだろうなと。

平成から令和へ。単に元号が変わっただけでなく、価値観や"時代"の変化がクローズアップされた2019年。
ジャニーズ事務所にとっても、大きな転換点であり、ある意味、試練の時期になったのではないかなと思います。

少し遠くを振り返れば、SMAPの解散。年齢・デビュー順からみて中堅にあたるグループで相次ぐメンバーの独立。そして、近年、国民的アイドルの座を担ってきた嵐の活動休止発表。
ジャニーズ事務所全体として、主にデビュー組の基盤に動揺がある中での、ジャニーさんの旅立ち。

ジャニーズ事務所は今後どうなっていくのか――。そんなことを考えたのは、一部のファンだけではなかったと思います。

ジャニーさん亡き後も、日本中、ひいては世界中にジャニーズのエンターテイメントを提供し続けるためには、ジャニーズ事務所としてのパワー(発信力)を維持又は向上させないといけない。そして、デビュー組中堅グループに動揺があるならば、パワーの底上げには若手の勢いが必要になる。
さらに、"ジャニーズイズム"を継承していくためにも、やはり未来を担う若手、すなわちJr.の育成が不可欠の急務になる。
タッキーが2018年末をもってプレイヤーを引退したこと、2019年1月、事務所副社長就任に先立ってアイランド社社長に就任したのは、この課題を見据えてのものだったのかなと。

2019年1月以降、アイランドTVの開始に始まり、Jr.公演のライブ配信(CHANGE THE ERA等)、ジャニーズISLANDストアOPENほか、Jr.を育成し、その魅力を発信する機会は格段に増えたように思います。TV等の既存メディアへの露出を含めて。
そして、チャンスを得たJr.が全力でパフォーマンスをして、それまで以上に多くの人を魅了することになったのは言うまでもないこと。
最近のJr.人気上昇の背景には、間違いなく本人たちのひたむきな努力があると思います。

それと同時に、バトンを繋いでいく側である先輩の意識の変化も大きいような気がします。
これまで、TV番組の企画等でデビュー組の先輩と後輩がコラボすることはあっても、デビュー組の先輩が表立ってJr.のために何かする機会は少なかったと思っていて。親しい先輩がいるJr.が相談にのってもらうようなことはあっても、あくまで個々の交際として完結していた印象。
それが、松潤が美少年のLA遠征に同行したり、かざぽん(風間くん)がバラエティでJr.紹介役として共演していたり、山Pが美少年の曲をプロデュースしていたり……


実体験としてそれを感じたのが、嵐のツアー(5×20)でのJr.紹介のとき。
バックにつくJr.には、いわゆる無所属の人もいるけれど、これまでは、その人たちは歴が長くても「ジャニーズJr.」とだけしか紹介されないことが多かった。
それが5×20では、巨大スクリーンに全員の名前が表示されるように。そして、松潤が「1人でも多く覚えて帰ってください!」と呼び掛け。
これはほんの小さな一歩で、特に休止前の嵐の姿を目に刻みつけようと必死になっている嵐ファンに対しては、どこまで響いたかは分からないけれど。
それでも、その一言で、何気なく見たスクリーンの文字を後から思い出す人がいるかもしれなくて。
先輩の中でも、ときに直接、ときに背中で伝統を伝えていくだけではなくて、後輩の活躍の場を整えることでバトンを繋ぐ意識が強くなったのかなと。


この変化をタッキーがどこまで意図していたかは分からない。
でも、松潤や風間くん、山Pをはじめ、その世代の先輩は、ちょうどタッキーとかつてのJr.黄金期を共に過ごしている世代。
少なくとも、タレントとしての仕事からは完全に身を引いて、Jr.育成に徹することを決断したタッキーの姿に影響を受けた部分はあるのではないかなって。

私はこんな風に考えているので、事務所の対応を疑問に思うことがあっても、タッキーが裏方に回らなかった方が良かったとは思わない。
でも、事務所への不満が出ると、特にJr.関連の出来事で何かあると、「全部タッキーのせい、ジャニーさんならこうはならなかった」といった意見を目にすることがあって、そのたびに密かに胸を痛めています。

応援の仕方は人それぞれで、意見が異なるのも当然のこと。
今年のJr.祭りでいえば、おそらく一番意見が割れたところは、デビュー組を出演させるべきだったかについて。
Jr.にとって、自分たちがマイクを握れる時間は絶好のチャンス。それが1分1秒でも減ってしまうのは悲しい、と思う人。
デビュー組が出演することで、そのファンの中でJr.の認知度が上がり、ファンが増える可能性があるから、長期的に見ればJr.のためになっている、と思う人etc...
どんな意見もありうるけれど、自分の意見と現実が一致しなかった人だけではなく、それ以外の人からも、タッキーが批判の矛先になってしまうのが本当に切ないなと。

今回のような事態が生じたときに、「デビューしたのにJr.の配信に出てくるデビュー組本人が悪い」、「Jr.のためを思っての出演なのに受け入れないJr.担当が悪い」というような、ファン同士の争いを避ける意味では、「全部タッキーのせい」という結論は都合が良いのかもしれない。
ある意味、結果的にタレントを守ることにもなるので。

それでも、本当に「ジャニーさんならこうはならなかった」のかなって。
思い出はいつも美しいし、どんどん美化されていくものだから、そう思ってしまうのも自然かもしれない。
ただ、私を含めて、ファンはジャニーさんと実際に話したことはないはずで。
ジャニーさんが愛情をもって育てた、ジャニーズファミリーのタレントが教えてくれるエピソード――"ジャニーさん伝説"から、その人となり、考え方を想像することはできても、あくまで推測の域を出ないはず。

そして、逆に、タッキーのことなら知っているのかというと、Jr.ファンの年齢層からして、プレイヤー時代のこともあんまり知らない人が多いんじゃないかな、って。
それに、プレイヤーとしての顔は知っていたとしても、それもまた一面にすぎないわけで。

自分の物差しは自分が経験したことから形づくられるし、自分の立場を離れて、完全に客観的に物事を見ることなんて、とっても困難で。
私は、滝担の母の影響で、初演時から滝沢歌舞伎(演舞場)等々を観て育っているから、こんな風に考えるだけかもしれない。
かもしれない、どころじゃなくて、たぶん確実に。

ただ、そうであったとしても、ある意味想像上の、言ってしまえば虚構のジャニーさん像を作り上げて、それによって、実在するタッキーが糾弾されるような風潮は収まってほしいなと思います。


最後に。
これからも、たくさんの人がジャニーズのエンターテイメントを心から楽しめる平和な時代でありますように。
そのエンターテイメントを支える人たちもまた、幸せでありますように。


(9月1日)

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