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インタビュー

~某日某所~

(ヴヴヴ…ヴヴ…)

「あーあーテストテスト。
全生命体共通-脳神経伝達回路を通じ、お送りしております。さて、このたび地球上の全生物と意思疎通をおこない、管理下におくことに成功いたしました。
代表にこの偉業の報告と今後の展望についてインタビュー形式でお伝えしたいと思います。
会場には生物の垣根を超えてインタビュアーが集まっておりますので、全世界の生物の皆様、しばし手や足や触手、その他もろもろを止めてお聞きください。」

その瞬間、全世界の動物たちが一斉に動きを止めた。全生物を管理下においた以上、基本的な行動は各個体に委ねられるが命令に対しては絶対である。

全生物への配信は消費するエネルギーも大きく、配信時間も限られているためインタビュー形式は非効率だった。それでも代表がこの形式に拘ったのは、全生物の意見を広く受け止める姿勢を示したかったためだ。

・・・
・・

「代表、こちらよろしいでしょうか!おめでとうございます。ついに地球上の全生物を管理下に収めたわけですが、まずはご感想伺ってもよろしいでしょうか」

「ふむ、君はイヌ科の方のようだね。再三伝えてきたことではあるが、来たる環境破壊・食糧難に対応していくためにはこういう形での結束が必要だった。苦労もあったがひとまず達成感の方が大きいね。あ、次そこのトカゲ科の方」

「それでは一番ご苦労された点はなんでしょうか」

「そうだね。一言では難しいが、全生物を探し出す時点から気の遠くなる仕事だった。あちらが見つかったかと思ったらこちらが見つかる。まさにモグラ叩きだ。あ、モグラの皆様失礼。」

まずいことを言った、というかのようにツルリとした頭をぽりぽりと掻く様子に会場がどっと笑う中、モグラだけはバツの悪い顔をしている。

「あ、あの!私、スズメ科のものです。こ、こここ今後の展望を教えていただいてもよいでしょうか!?」

「まぁまぁ緊張しないで。まずは管理下に収めた生物の中でも絶滅危惧種については繁殖を優先だ。環境変動等により過剰に増加している生物に対しては、繁殖の自粛と絶滅危惧種に対するフォローを要請…いや、命令する。」

スズメ科は質問への回答よりも、何とか伝えられたことに対して満足そうに飛び跳ねている。

「今最も危惧している絶滅危惧種について伺っても良いでしょうか」

「見たところ君はアカガエル科かな?君の心配はもっともだ。特定の種を挙げることは混乱を招くため避けるが、キミの仲間である両生類に関しては大変危惧している。個体数の減少は環境変化によるものが多く甚大だ。各種、前提条件となるものを広範に対応を強化していくことを約束しよう」

会場の両生類たちはその湿った手足を使い、パチャパチャと少し水音の混じった拍手を送る。

「逆に現時点で安心感のある種はありますか?」

「そうだね。キミはアリ科だろう?分かって聞いているな?我々と同じくキミたちは地球上でもっとも繁栄している種のひとつだ。昆虫についてはごく少数の種を除いては安心感を持っている」

アリはまだ脳神経伝達回路が未発達の幼生の個体に、その内容を触覚で伝え合っている。

「それぞれの種で利害を調整することは到底不可能だという意見もありますがいかがでしょうか」

「サケ科の方、分かります。あなた方がヒグマ科と利害を一致させるのは難しいでしょう。しかし利害の話に関してはどうしても、イタチごっ…いや完全な回答は不可能だ。冒頭申し上げた通り、現在の危機的状況を脱するために協力いただきたい」

会場内のイタチが失言はもう見逃さないと、ギロリと代表を睨む。

その時、舞台袖のリス科から配信可能時間が残りわずかと個別通信で代表に伝えられる。切り上げるには良いタイミングだ。

「おっと皆、すまない。最後に残り1つだけ質問に答えよう。はい、そこの方」

「インタビューお疲れ様でした。最後に一言なにか全世界の生物にメッセージをお願いします。」

「ああ、君か。全生物の中でも特に君たちに伝えたいことがある。この状況を招いたのは全会一致で君たち"ヒト科"だ。優先的に70億の個体を食糧難に充てる。安心したまえ。最小存続個体数は保証する。特定種の絶滅を意図する活動ではない。」

冷静な口調とは裏腹に、代表が怒りとも喜びともとれる様子で顎をガチガチと鳴らしながら言い放つと、会場からワアアアアと歓声があがった。

「以上、ゴキブリ代表からのインタビュー配信をお送りしました。続報をお待ちください!」

(プツン)

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謎の人、トーアさんの私小説。信じても信じなくても、全てフィクションということにしてもらえると助かります。当然、noteの内容についての質問は一切受け付けません。

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